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こぼレビュー

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#映画

[こぼレビュー] NOPE

撮った人:ジョーダン・ピール
見た:IMAX

 内面化、という便利な言葉がある。
理解したも内面化でいいし、体得したも内面化でいい。見たも内面化だしぶっちゃけようわからんでも内面化するっていう動詞でも使えるのでほぼ最強の言葉だ。

 本作は怪獣映画をアメリカ人の身で内面化したものである。
 思うにジョーダンピールは、あんまりアメリカが好きではないと思っている。一作目ゲットアウト以降なら結構好きに

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【こぼレビュー】浅草キッド

撮った:劇団ひとり
見た:Netflix

 1970年代の浅草。芸人を志す武は演芸場で青春時代を過ごす。

 まず驚いたのは、これがきちんと今の水準で映画として見れる脚本になっていることだった。優秀なスクリプトドクター的な人か、整形した人がいると思う。さすがにこれを本当に劇団ひとりが独りで構成しているなら芸人を今すぐ辞めて脚本家になったほうがいい。この2~3年で日本で撮られた長編動画の中では5位

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【こぼレビュー】ブラッククランズマン

撮った人:スパイクリー
見た:ネットフリックス

 「怒り」が制作動機になっている人間というのがいる。
スパイクリーは間違いなく「怒り」駆動の人間だ。

 警察官になったデンゼルワシントンの息子は黒人なのに白人至上主義組織KKKへの潜入を所長に提案する。

 舞台となる昭和くらいのもう活動が小規模になったKKKはダメな白人とヤバい白人のごみ溜めみたいになってて、マンガみたいなキャラ立ちのいい屑ばっ

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【こぼレビュー】ベケット

撮った: フェルディナンド・シト・フィロマリノ
見た:ネットフリックス

逃亡モノ、というジャンルがある。

何かを知った、もしくは知っているために、(しばしば突然)主役が逃げる作品だ。要するにミステリーの一形態であり、大体人情を感じるわき役が出てきて余計なおせっかいをかいてくれる。

 本作はテネットで主役になったデンゼルワシントンの息子が主人公で、かなりの部分で(タイトルの韻まで)テネットと対

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[こぼレビュー]ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

撮った人:クエンティン・タランティーノ
見た:Netflix

 作家性、というものがある。

 なんだったか、村上春樹を語っている本で「彼はコントロールして真面目なものと気の抜けたものを交互に書いている」というようなものがあった(20年くらい前の記憶なので媒体すら思い出せないが)。

 作家業というのは結構むずかしい。やってみればわかるが、行き過ぎても人はついてこず、かといって色々手を出すのは時

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[こぼレビュー]グリーンブック

撮った人:ピーター・ファレリー
見た:Netflix

バディもの、というのがある。
男と女、警官と泥棒、エリートとヤクザ…つまりは作劇というのは主人公の足りないものを提示し、それを埋めればなんとでもなるわけで、そうなるとこのバディものというのは設定が生まれた時点で一番簡単に成功の約束されたプロットとなろう。

映画では近年だと「最強のふたり」なんかはどうだろう。
健常者と障害者、白人と黒人、富豪

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【こぼレビュー】The Sisters brothers(ゴールデンリバー)

撮った:Jacques Audiard
見た:Netflix
いつの作品:2018年

概要
 1851年アメリカ、殺し屋のイーライとチャーリー兄弟(性がシスターズなので、タイトルがシスターズブラザーズ)は、”提督”から受けた仕事でウォームという人を殺すことになる。ウォームは既に私立探偵のモリスが捉えていたが、モリスはウォームが語るダラスに作る理想郷の理論に共感し、提督を裏切り脱出を手伝うことにし

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