【こぼレビュー】ブラッククランズマン

撮った人:スパイクリー
見た:ネットフリックス

 「怒り」が制作動機になっている人間というのがいる。
スパイクリーは間違いなく「怒り」駆動の人間だ。

 警察官になったデンゼルワシントンの息子は黒人なのに白人至上主義組織KKKへの潜入を所長に提案する。

 舞台となる昭和くらいのもう活動が小規模になったKKKはダメな白人とヤバい白人のごみ溜めみたいになってて、マンガみたいなキャラ立ちのいい屑ばっかりでドキドキ出来る。デンゼルワシントンの息子は新人警官ながらガンガン上層部に対してかみついていくし、ユダヤの相棒は明日死にそうな立ち回りを強いられる。そのあたりを娯楽作品として仕上げていながらも、最終的に観客である現代人にチクりも忘れない。完全な娯楽で終わることは断固拒否する!おまえたちは殴らないとわからない!そんな、いま流行りの言葉でいえばチクチク映画だ。

 このチクチクがスパイクリーたる所以というか、社会への怒り、個人への怒り、とにかく怒りがすごいんだよな。怒りの根本はどの映画でも一緒で、それを手を変え品を変え…とにかく何を変えても怒ってる。すごいじーさんだよ。

 ただ、本作は最後にチクチクを持ってくる理性があったものの、これより後の作品となる「ザ・ファイブ・ブラッズ」ではトゲトゲになりすぎててあんまり成功とも言えなかったようだ。個人的にはファイブブラッズのほうが良いのだが、かなりバランスを崩してしまっていて本作ではコメディとシリアスが境界がはっきりしているが、そういった演出もチグハグ気味になってしまっている。見づらく、脚本の焦点もあいまいだ。
 アンガーマネジメントという言葉は嫌いだが、行き過ぎた怒りというのも難しさを感じる。
 本作が成功したのはファイブブラッズと比較すれば明らかで、ファイブブラッズでは怒りの対象は黒人にまで及んでいて、「アメリカ…それは罪の国」みたいなレベルまで行ってしまっている。本作はそのへんを白人だけに絞っているのでうまくいってるのだろう。是非本作と合わせて見比べて欲しい。

 まあでも、バランスがあり鑑賞者の受けがいいことに何の意味があろう。

 とにかくこのスパイクリー、怒りがあって、今生きてる人も平気でネタにして悪者にできる。この創作が許されるアメリカが結局恨んでるけど好きなんだろうなあ~。という感じです。

 むかつくやつは最後に死んでほしい!と思う人にこそ見てほしい映画。

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