トランクに人が入っていると疑われた
大学生で訪れた2度目のパリは買い物天国で、フランス留学経験のある友人に呆れられながら可愛いものを片っ端から買い漁っていた。この器たちも。元は黄緑色と合わせて5つあったのだが、ヒビが入ってしまって今は4つのみ。
当時はAirbnbなんて便利なものは無かったが、短期で貸してくれるアパートを友人が見つけて安く滞在できることになった。着いてみると階段下で天井が斜めになっている、1階なのにまるで屋根裏部屋のような質素な部屋。ツインベッドではあるものの部屋が狭いので2つのベッドはぴったりくっついていて、まるでダブルベッド。シャワーから出るお湯の量も限られていて後から浴びる友人は時々水浴びになってしまった。
それでも、”パリに住む”という体験が気分を高揚させていた。
そのアパートはヨーロッパによくある中庭を囲んで口の字型に建物が配置されており、私達の滞在したアパートは道路に面した建物の向かい、一番奥の建物だった。毎日中庭を突っ切って出入りする度にサイドのアパートの住人の様子が窓から見える。ヒスパニック系の大家族がピザを食べている。皆よれよれの服を着ている。それは日本人が”パリ”と聞いて思い浮かべる華やかでおしゃれなイメージとはかけ離れた生活だった。
パリは移民の街。それを実感した。安アパートのエリアなので、最寄り駅で電車を待っていると周りは黒人や中東系の移民ばかり。
それでも文化はやはりヨーロッパなのだろう。帰国の日に、お土産を詰め込みすぎて持ち上げられないトランクを引きずり地下鉄の入り口まで来て、はたと困る。どうやってこの階段を持って下ろそうか。(パリにエレベータもエスカレータも無い地下鉄入り口は多い。)もはや蹴り落とすしかないのでは、と考えていると筋肉隆々の黒人男性が持って下ろしてくれた。ありがたい。その男性でもってしても重すぎたトランクは、下ろした後「中に人が入ってるだろう!」と冗談を言われる始末。
空港で計ったら37kgだった。
マガジン「キッチンの異邦モノ」vol.2
https://note.com/yunyuan/m/m4a1587f376ab
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