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【第11輪】 番外編!なんでスウェーデン人は湯船がなくてもすっきりしているの?!


Hej hej! Hur mår du?
湯の輪らぼスウェーデン支局長のたなかいです。

実は私、2022年1月よりスウェーデンに留学に来ております!
湯の輪らぼ本局の稲荷湯からは、8500kmほど離れた北の地にいるのです…

写真①

最初は学業に家事に友人作りに精一杯だったのですが、1ヶ月が過ぎても何かすっきりしなかったんです。

とある日の終わり、シャワーから上がって窓の外をボーッと眺めていたとき、その原因が判明したのです。

ずばり、原因は「風呂」にあったと気づきました(やらせではありません)!

この国には、湯船が、ない!!

風呂上がりの感覚が、全く違うのです。

写真②

私は湯船に浸かって一日をリセットし、心機一転していたことを思い知らされました。

その一方、こんな疑問も浮かんできました。

スウェーデンの人々は、いつ、どこでこのような効果を得ているのだろうか、、

実際、地元のスウェーデン人は湯船がなくても、悶々と生活しているどころか、穏やかな太陽光と鳥のさえずりで起きれた朝くらいすっきりとした顔をしているのです!

そこで本日の記事は、「リフレッシュ」という視点から、スウェーデンに来て体感した数々の北欧文化と日本の風呂文化を比較してみようと思います。

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①Fika(フィーカ)

Fika(フィーカ)は最近日本でもブームになりつつある言葉ですが、一般的に「甘いものと一緒にコーヒーを飲んで休憩すること」を指します。

実はFikaという言葉は名詞でも動詞でもあり、スウェーデン人の日常会話にあらゆる形で登場します。

写真③

Fikaという言葉の意味に忠実にいくと「コーヒーを飲むこと」になるのですが、実は社会的つながりの色が強く、一人でFikaをすることはあまりありません。

友人や家族、同僚などとカジュアルに団欒することがスウェーデンでいうFikaになります。

私が取っている授業も、1時間に一回は必ず先生が「Fikaしよう」と授業を切り上げ、各々お菓子と水筒をリュックから取り出し雑談が始まります。

スウェーデンのFika文化は、イギリスのティータイムよりは高頻度に、カジュアルに、場所を選ばず開催されるところが特徴的だと言えます。

学校、会社など、普段「ストレス」と密接に関わる場所も、Fikaによって一旦リセットし、自分を充電する。森へハイキングに出かけた時も、休憩するときはコーヒーとパンがリュックから出てくる。

言わば、どんな場所も落ち着けるカフェになる、というイメージです。

写真④


②Friluftsliv(フリールフツリブ)


こちらは日本にはあまり馴染みがないかもしれませんが、スウェーデンをはじめとした北欧諸国では非常に浸透している文化です。

Friluftsliv(フリールフツリブ)は直訳すると「自由な空気の生活」になるのですが、意味的には「自然と自己を繋げるライフスタイル」を指します。

具体的には、天候に関係なく、少し街の外れの森へハイキングに行ったり、点在する湖へカヌーに行ったり、ベリーを摘みに行ったりします。

写真⑤

近年のFriluftslivは、都市化によってスピーディーになったライフスタイルを緩める位置付けとして国民に親しまれているそうです。

スウェーデン政府も法律として、Right of Public Access(自然享受権)と呼ばれるものを定めています。

これは、森や湖などの自然に自由に出入りし、遊泳やハイキングなどのアクティビティをすることができるという「国民の権利」なのです。

自国の自然の大切さを自覚し、教育を通して「Don’t disturb, don’t destroy(邪魔しない、破壊しない)」という倫理が国民に浸透しているから成り立つものです。

写真⑥

スウェーデンに来て感じた国民性は、ラテン文化とはまた違う「一周まわった気ままさ」と、日本文化とも通づる「飾らなさ」。

「一周まわった気ままさ」とは、つまり北欧の寒さと日照時間の短さなどの厳しい環境に過度に立ち向かわず、自分らしい楽しみを実践する姿勢です。

「飾らなさ」に関しては、Lagomという「ちょうどよい(中庸)」を意味する言葉があるのですが、スウェーデンは派手な衣服を身に着けたり、暴力的な量の食べ物を食べることがないです。

この二つの要素がかけ合わさって、FikaやFriluftslivのような、「決して派手ではないけど確実に楽しい」文化が醸成されているのだと私は感じました。

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本メディアは、銭湯をゆる〜く哲学するわけですが、#湯船のある生活 が奪われている今だからこそ、日本の風呂文化について再考したいと思います。

銭湯に行き、湯船に浸かり、ときにはその場で出会った人と会話をすることが、どのような効果があったのか?

私は、「体と心を同時にリセットする」ことに尽きると思います。

写真⑦

*銭湯の営業時間外に撮影しています。

スウェーデンにおける「リフレッシュ」は、あくまでも心に重きがおかれていると思います。

Fika(フィーカ)でお菓子とドリンクを周囲の人間たちと楽しみ、日常に戻るために精神的に充電する。Friluftsliv(フリールフツリブ)では体を目一杯使い、自然とのつながりを再認識する。

周りの環境や体を道具として、心を満たす側面が強い。

写真⑧

一方、日本の銭湯文化は、体と心を同時に「洗う」ことで、心身の一貫性を感じる効果があると思います。「体も心も綺麗」という一致した気持ちが、清々しいのです。

すなわち銭湯文化は、毎日のように来る一種の通過儀礼だと感じます。

銭湯に行く前と後では、身体的にも精神的にも確実に変わっていて、次の日常に新たな意味を与えてくれます。いい湯に浸かって銭湯を出た瞬間の空気感が、それを物語っています。

こう比べると、私がスウェーデンで感じた「すっきりしない感じ」は、Fika(フィーカ)をしてもFriluftsliv(フリールフツリブ)をしても心のすっきりさに体がついてこないところにあると気付きました。

心のケアに関してスウェーデンは文化的にすごく進んでいて日本にも取り入れやすそうだなと感じています。

しかしリアルな意見として、風呂の時間に得ていたものは風呂の時間でしか得られないともつくづく思います... シャワーは一人で、5分ほど作業的に洗って終わりなので、心のリセットにはなかなか繋がりません。

また、立ってシャワーをする文化なので、一度冷水にして滝行のようなものを試してもみたのですが、修行が足りず煩悩に負けました(笑)

写真⑨


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このように異国にいるからこそ、現地の文化と自分が慣れ親しんだ文化を経験的に比べられるのはとても貴重ですし、現地の文化を実践するからこそ見えてくる自分の文化の特徴を帰っても忘れずにいたいなと思う次第です。

日本にいる皆さん、ぜひ湯船に浸かれる幸せをこれからも噛み締めてください!

あー、早くいい湯に浸かりたい!♨️


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