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銭湯からタオルが消えている? 小さな変化から見えた銭湯の未来と新世代

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銭湯文化について知りたかったら......
「タオル」を学べっ!

失礼しました。
テルマエ・ロマエとドラゴン桜が混線した阿部寛を登場させてしまいました。

ですが『銭湯文化について知りたかったら......「タオル」を学べっ!』という言葉は、そこまで間違っていないかもしれません。

銭湯空間は、浴槽、広告、銭湯絵、そしてなぜか頭にタオルを乗せる入浴者たちなど、さまざまな要素から構成されています。

そして、カレーをうまく作りたいなら野菜について学ぶべきとも言うように、全体への理解には、構成要素を知ることが不可欠です。

つまり、「タオル」という銭湯の構成要素について学べば、銭湯文化について詳しく理解できるのです!(暴論)

それでは、ご案内しましょう。
「銭湯とタオル」の世界へ......


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まずは銭湯に持ちこむタオル(通称:銭湯内タオル)の役割について考えてみましょう。

そんなに細かい話はしません。
今治市民じゃないので。

ざっくり見ていきましょう。

銭湯内タオルの役割は「実用的側面」「文化的側面」に大別できます。

実用的側面とは、たとえば、浴室から脱衣所に行く前に体を拭くためとか、頭に乗っけておくことで立ちくらみやのぼせることを防いだりできる、とかのことです。

一方、文化的側面とは、銭湯の入浴者のステレオタイプを演じるということです。

銭湯にタオルを持ちこみ、そしてそれを頭に乗っけたりしようものなら「自分は今銭湯にいる!」という気持ちを強く持ちますね。

ディズニーランドで、ミッキーのカチューシャをつけるのと同じ理由です。

身体を通して「その場らしさ」を演出することで、環境への没入度を高め、より楽しみが深くなっていくのです。


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前章では、ざっくりと銭湯内タオルの役割を見てきました。

本章では、銭湯内タオルの持ちこみ方法を分類し、そこから見えてくる銭湯の未来について妄想してみます。

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こちらが銭湯内タオル持ちこみの分類表です。

分類(および以降の分析)が男湯目線なのはご容赦ください。

また、全然MECEじゃないとか、レイヤーそろってないとか感じることがあるかもしれません。

その点は、僕がマッキンゼーに怒られておくので許してください。

さて、各所に頭を下げたところで、この分類表を楽しみましょう。

■ 派閥の勢い

分類表からわかる通り、銭湯内タオルの持ちこみ方には、多くの派閥があります。

私たち湯の輪らぼが拠点としている稲荷湯での観察をもとにすると、「タオルを持ちこむが頭には乗せない勢」が優勢で、大穴は「タオル持ちこまない勢」のようです。

稲荷湯の3代目(仮)のまもる氏によると、「タオル持ちこまない勢」が、最近では増えてきていると言います。

驚くべきことに、「銭湯といえば!」の風景にも思えるようなタオル頭乗せは、少数派のようです。

銭湯原風景は、もはやファンタジーなのかもしれません。

まもる氏は、タオル持ちこまない勢の台頭を次のように見ています。

まもる氏:風呂付きの家が主流となった現代、家庭風呂では浴室を出たところにバスタオルを置くことで、出たらすぐに体を拭くことができるため、銭湯に行っても浴室内にタオルを持ち込まない人がいるのではないか。

銭湯に来たら、『体を拭いてからあがれ』というふうに銭湯の先輩方に言われることもあるが、銭湯の利用機会の減少により、そういう声かけをされることも無くなったのではないか。

(なお、まもる氏は普段は銭湯で入浴しているため、家庭風呂の「普通」を一切把握していません。)

インフラの整備は、公衆浴場での立ち振る舞いの変化を生じさせたのかもしれません。

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実況:外の方からスーッと上がってきた赤い帽子、モチコマナイヨー!

さあ、モチコマナイヨーがここで翼を広げるか?!

モチコマが今翼を広げた!外目をついて上がってくる!

アタマノセルをあっという間に置き去りにした!

そしてヨクソウノフチが飛んできている!

モチコマナイヨー先頭!銭湯!

最後の衝撃だー!

これが最後のモチコマナイヨー!!!

……

(ちなみに、唐突に競馬名実況のくだりを差し込むことと、濡れたまま脱衣所に行くことはマナー違反なので、タオルを持ちこみ、体を拭いてから脱衣所へ向かうようにしましょう。)

■ 派閥の特性


さて、ここからは各派閥の特性について妄察していくこととします。

まず「頭に乗せる勢」。

彼らは、いわゆる“銭湯らしさ”に忠実であるといえます。

銭湯の画像やイラストを調べると、多くの登場人物が頭に4つ折りのタオルを乗せています。

その一方で、4つ折りタオルを頭に乗せることは不安定ではあるため、バランス感と銭湯感とを悩んだ末に、2つ折りや3つ折り、あるいは頭全体をタオルでおおうラーメン屋スタイルが登場してきたのでしょう。

一方で「頭に乗せない勢」。

特に「浴槽の縁勢」の台頭は、いわゆるサウナブームによる銭湯客層の変容(参入)と関連があるかもしれません。

たしかに、浴槽の縁に置くのは、安定もしていて、合理的な選択肢ではあります。

サウナ界隈とビジネス界隈は、被るところも多いです。
資本主義社会での合理化の波が銭湯にもやってきたともとれます。

頭に乗せたタオルは、VUCAな状態なので、取り除くべきとの思考が無意識下にあるのかもしれません。

あるいは、「浴槽の縁勢」は銭湯内タオルにかんする「没目的化」から逃れたとも表現できます。

「頭に乗せる勢」の多くは、タオルを頭に乗せることの本来の目的に思いを馳せることはありません。

ここでは、目的の不明瞭性の増加、あるいはすり替えが起きているのです。

ヴェーバー的に言うならば、時の流れによってタオルの頭乗せは、目的合理な行為から伝統的行為へとシフトさせられた、となるのでしょうか。

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そして、今日の銭湯は、現代社会システムの中で新たな意味づけ(たとえばサウナブームや、そこでの"ととのう"という行為、またそれ自体への名前づけ)をされたわけです。

その潮流の中で、タオルは浴槽の縁に置けばいいという合理的な選択肢が、ピューリタンたちの尽力で、穴の空いた目的合理に居座ったという具合でしょう。

さらなる考察は、今後の研究を踏まえて行います。
それゆえ、私はここで筆をおく、いやタオルを投げることとします。


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さて、ここまで銭湯内タオルについての考察を述べ、浴槽の縁勢と頭に乗せる勢の関係性を見てきました。

この二項対立具合は、55年体制を思い起こさせます。

保守の立ち位置が逆の、ですが。

そして、55年体制を崩壊させたのは、日本新党や新党さきがけといった「新しい風」たちでした。

私たち湯の輪らぼが拠点とする神田の稲荷湯では、銭湯に「新しい風」を呼び込む企画を実施する運びとなりました!

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その名も「銭湯壁画デザインコンテスト」!

銭湯にはつきものの壁画。

その壁画のアイデアをみなさんから募集しようという企画なのです。

テーマは「私の銭湯ペンキ絵 〜もしも自分が銭湯の壁に絵を描くとしたら〜」です。

部門は
① 小学校低学年
② 小学校高学年
③ 中学生以上

となっています(上限は18歳未満)。

もし、この記事をお読みの方、あるいは知り合いに、応募可能な方がいらっしゃったら、ぜひご連絡ください。

それでは、次回のタオラー学会でお会いしましょう。

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