パリのビストロで実際に指摘された「してはいけない事」_パリ節約自炊生活番外編
パリ在住8ヶ月目。基本は節約自炊生活ですが、日本からゲストが来た時やフランス在住の方を紹介していただいた時は特別に、パリのカジュアルなレストランであるビストロで食事をしています。今回はそんな食事の時に、私が実際に指摘されたパリのビストロで「してはいけない事」を特集したいと思います。
これらはミシュラン星付きレストランに行く時のテーブルマナー的な話ではなく、それ以前の「気遣い」の話です。例えるならば日本で宴会の時に、何となく新入社員がサラダを取り分けたり、グラスが空いていたら目下の人が注いだりといった、やったほうが何となく収まりが良いという部類です。なので、やった方が(もしくはやらないほうが)より自然であるマナーだと思ってください。
しかもこの「してはいけない事」、全て私が実際に、しかも日本人から指摘されたものです。パリ在住歴が長い日本人だからこその、フランス人と食事をする中で気づいた事、失敗した事を教えてくださったのだと思います。パリの「してはいけないこと」は日本とは真逆すぎて、昨年まで年間300回ほど宴会に参加し日本の飲み会が骨の髄まで染み込んだ私にとっては、青天の霹靂の連続でした。
◆ビストロとは?
ビストロは「パリの居酒屋」という人もいるくらい、フランス人にとって気軽に行けるお店です。もちろん日本でも高級居酒屋から立ち飲み居酒屋までバリエーションがあるようにパリのビストロも幅が広く、前菜・メイン・デザートのコースが必須の高級ビストロから、数皿オーダーしてシェアしながらワインを楽しめるカジュアルなビストロまで様々です。
ミシュランに掲載されているビストロもありますが、日本とフランスではミシュランガイドの基準が異なるため、掲載=星付きではありません。ビストロのほとんどは、服装もジーンズやスニーカーを含む日常的な服装で行けるお店がほとんどで、まさに庶民の日常的な食事処という感じです。
そんなカジュアルなビストロで、今回の「してはいけない事」はご指摘いただきました。まさに「お前新入社員なんだからサラダ取り分けんかい」的な、テーブルマナー以前の気遣いのレベルの話だということです。
◆してはいけない事①:勝手にシェアしてはいけない
まず一つ目は「勝手にシェアしてはいけない」。これは、フランスの食文化に根ざしていて、どちらかというとお店の方に向けた気遣いです。フランスではランチでもディナーでも、前菜・メイン・デザートのコース形式が基本なので、4人で来店すれば4つの前菜・メイン・デザートが注文されるものだとスタッフの方は考えています。逆に、4人で来店したのに前菜2皿とメイン2皿だけを注文すると「それは誰の分のオーダーなの?」と聞かれてしまうことも多々あります。また、シェアする文化がないので、取り皿を持ってきてくれないことも多々あります。
なので、注文する際には必ず「シェアしても良いですか?」を予めスタッフの方に尋ねるのが正解です。大体の場合は「もちろん!」と気軽に応じてくれますが、先に聞かないと「これは誰の?」ときかれたり取り皿をもらえなかったりと大変なので、シェアする時には先に尋ねることをお勧めします。
◆してはいけない事②:注いでもらう時にグラスを持ってはいけない
二つ目は「注いでもらう時にグラスを持ってはいけない」。注いでいただく時、日本人の私はつい恐縮してグラスを傾けたり、柄の部分を持ってしまっていましたが、在仏歴の長いお姉さまに「調子狂うから持たないで」と指摘されてしまいました。フランスでは例え目上の人がワインを注いでくれたとしても「何もしない」「グラスに触れない」が正解です。注ぎやすいように相手の方に少し近づけるのはOKですが、そのまま柄を持っていたりすると不思議な感じになるようです。日本の宴会根性がしみ込んでいる私は「いやいやいやいや…」とか言いながらグラスを持ちたくなりますが、ここはぐっとこらえて、相手が偉かろうが目上だろうがグラスに触れずに注いでいただき、笑顔で「merci!」というのが正解です。
◆してはいけない事③:女はワインを注いではいけない
三つ目は「女はワインを注いではいけない」。これは、在仏歴の長い日本人ムッシュのグラスが空いていたのでワインを注ごうとした時に「女性がワインを注ぐなどとんでもないことです」と指摘していただきました。フランスでは当たり前にレディーファーストで、赤の他人でも扉は必ず開けてくれるし、当然ワインも女性が注ぐものではないようです。宴会根性がしみ込んだ私はついつい相手のグラスが空になっていると注ぎたくなってハラハラしてしまいますが、女性が注ぐのはとんでもないことだそうで、いつもこっそり隠れるように注いでいます。逆に、女性と食事をする時に男性がワインを注がないと相当鈍いヤツと思われてしまうので、男性は積極的にワインを注いであげた方が正解です。
◆してはいけない事④:女は取り分けてはいけない
四つ目は「女は取り分けてはいけない」、これも③と同様、レディーファーストの国なので男性がやるべき事で女性がやるべきではないと指摘されまいた。繰り返しになりますが、宴会根性が据わった私は取り分けないとハラハラしてしまっていましたが、そもそも一人が全員分を取り分けるという文化がフランスには無いので、最近では銘々好きなタイミングで取りたいだけ取るというのにやっと慣れてきました。取り分けについては、誰かが全員の分を取り分けるというよりも、銘々好き勝手に好きな分取るのが正解のようです。
◆してはいけない事⑤:「皆さんは何飲まれますか?」
五つ目は「皆さんは何飲まれますか?」。これは、ランチ会食の時の出来事で、前菜・メイン・デザートを各自オーダーした後にスタッフの方に「飲み物はどうしますか?」と聞かれたので、「皆さんは何飲まれますか?」とご一緒した皆さんに伺った後に、空気を読みながら悩んで悩んで飲み物をオーダーしたところ、会食後に在仏歴の長い日本人ムッシュに指摘されたものです。ムッシュが言いたかったのは、とっととオーダーしないとスタッフの方も困ってしまうし、レディーファーストの国だから女性が最初に決めないと他の人が決めかねる、という事でした。
繰り返しになりますが、宴会根性が染み付いた私にとって、「皆さんは何飲まれますか?」は年間300回くらい発しているセリフで、これがフランスではNGだなんて青天の霹靂でした。ですが、要するに、自分の意見や要望が無いフランス人はほぼいないので、他社の意見に基づいて決めようなどという人がいるとペースが乱れるという事なのだと後から解釈しました。飲み物はオーダーの前に「私はワインを頼むけどいいか?」と聞いておいてからスタッフの方を呼ぶか、もはや相手は気にせずに女一人であってもグラスワインを注文するのが正解のようです。
◆まとめ
シェアする時にいちいちスタッフの方にお伺いをたてたり、注ぐ時にグラスを持ってはいけなかったり、女はお酒を注いでもいけないしサラダを取り分けてもいけなかったり、「皆さんは何飲まれますか?」なんて言ってはいけなかったり…日本とは真逆の事が多く、パリでの外食は青天の霹靂ばかりです。指摘してくださった日本人の方々も、色々と経験されて私に教えてくださったのだと思います。前述の通りマナーよりも手前の「気遣い」レベルなのでやってもやらなくても大差無いことですが、フランス人の方と食事をする際には、これらの事を気にされた方がより素敵な会食になるのでは無いかと思います。
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