マガジンのカバー画像

Web編集者の読書癖

47
本がないと生きていけない。
運営しているクリエイター

#おすすめ本

2021年マイベスト本【エッセイ・対談・小説・歌集】

エッセイが好きだ。対談が好きだ。小説と歌集は、文章の仕事でありながら、文章の仕事から離れさせてくれる文章として好きだ。 2021年は特に多くのエッセイを読んだ年だった。コロナ禍で自粛ばかりで、自分の心に向き合いたかったから。他者の雑談に触れないと、自分について気付く機会がとても減るのだと知ったから。 ということで、2021年読んだ中でも特に面白かった本をまとめて書き記そうと思う。今回はエッセイ、対談・往復書簡、小説、歌集。 ↓ビジネス・自己啓発はこちら。 2022年も

妊娠ハウツーから胎児の不思議まで。出産に向けて読んだ本まとめ

ついに臨月が迫ってきました。10ヶ月って本当にあっという間! 地獄の妊娠初期を終え、体も心も安定した妊娠中期。食べすぎて太りすぎて主治医に注意されたり、引っ越しをしたり、夫婦喧嘩をしたり、夫とのデートを満喫したり、胎動に感動したり。思い返すと10か月でたくさんの変化があって、このままもう少し妊婦続けてもいいかな?なんて思う余裕も生まれはじめた今日このごろ。(平和だぁ) とはいえ、妊娠初期はほんとに地獄だった。「これ食べてもいいかな?」と思ってググると、やれ「流産の危険」だ

旅はいつまで不要不急か。オードリー若林「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」を読んで

オミクロン株が大爆発している沖縄から「旅」について書くのは少し不謹慎な気がするけれど、それでも今、旅が与えてくれるものをもう一度再確認したい気持ちになった。 オードリー若林さん紀行書「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」を読んだからだ。 この本を購入するのは少しばかり勇気がいった。なぜならきっと旅をしたくなるから。そして今はコロナ禍で、沖縄はまん延防止重点措置の対象県なのである。旅なんてとてもできない。 だけど購入に至ったのは、キューバという国を若林さんがどう見た

自分の船の舵を人に握らせるな

昔、兄のように慕っていた人と手紙のやりとりをしていた時期があった。 遠いところに行ってしまった兄(のような人)に向けて、当時10代だった私が書く内容ときたら、恋愛や友達、仕事のこと。ぜーんぶ自分のことだ。彼のほうがよっぽど過酷な状況にいたのだけれど、当時の私は自分のことで頭がいっぱいで、まいど自分のことを何枚も書いては返事を心待ちにしていた。 そんな小娘の悩みに答えるのも悪くなかったのか、返事はわりといつも早くに届いた。そして何十通とやりとりをした中で、一通だけ、未だに捨

理想の50歳と光浦靖子さん

私は光浦靖子さんが好きだ。 理由は、母に似ているから。顔も髪型も、眼鏡の形も輪郭も、結構いろいろ似ているのだ。強いていえば、ガテン系の仕事に従事してきた母は、光浦さんよりも少しだけおじさんっぽい。 そんな他人とは思えない光浦靖子さんの書いた本を知ったのは、雑誌ダ・ヴィンチ先月号でのこと。 この号の「女と家族」特集(この特集、ダ・ヴィンチ史上いちばん好き!)に、光浦靖子さんインタビュー記事があり、その中で著書「50歳になりまして」の一部冒頭文が紹介されていた。 それが、

雑誌POPEYEに学ぶ、企画・文章のつくりかた

私は沖縄住まいのローカルガールでありながら、シティボーイ御用達の雑誌POPEYEを定期購読している。 シティボーイに憧れているわけではない。むしろ興味がない。なのに圧倒的に企画と文章が面白くて、あまりにも毎回”つい”買ってしまうので、もう観念して定期購読することにしたのだ。 ターゲット層から著しく外れるはずの自分がこんなに惹かれるなんて...と思いつつ、ひとつ疑問に思うことがあった。そもそもPOPEYEでは戦略的な企画をあまり見ないことだ。「確実に当てに行くネタ」よりも「

行き先に迷うすべての人に。現在進行系の人生を描く「ぼくにはこれしかなかった。」を読んで

誰かの人生の「転機」に興味がある。 転機の何がおもしろいって、転機って人生において結構重要なシーンなのに、そのほとんどが「今」その時に転機だと思えてはなくて、むしろ本人にとってはどん底あたりだったりすることが、往々にしてあるということ。 「全裸監督」で黒木香も言ってた。『サインはきっと絶望の近くにある』と。 今日はそんな「転機」についてを実直に、ときに苦しみながら綴られた本『ぼくにはこれしかなかった。』について書きたい。 実は自伝が苦手だった転機に興味があると言いつつ

一生読んでいたい「うたうおばけ」は、大きな物語に流されずに人生を楽しむための本

本を読み終わったあと、泣いた。 わたしは人一倍涙もろいので、本を読んでもドラマを見ても、ときにバラエティを見ていても泣く人間ではあるのだけど、そうじゃなくて、いつもの涙とは別の種類の涙が自分の目の中に溜まって、流れたのが今日だった。 今日まで読んでいた本は、涙を誘うような起承転結とか、ドラマみたいに努力が叶ったり熱い友情が芽生えたりとかはなくて、いじわるな悪役も出てこなければ、なにかをのり越えて成し遂げたりもしない。ただ、ただただ日常を綴った本だった。 そしてただただ日

なにかを「持つ」人になるということ

「お金持ち」という言葉に胡散臭さを感じるようになったのは、いつからだろう。 子どもの頃「お金持ち」という言葉は、まるで将来の夢に設定するにふさわしいような、憧れるべき言葉だと思っていた。 だけど大人になった今「お金持ち」という言葉に、なにか悪いことが隠されているような胡散臭さを感じるのはなぜだろう。 とにかくわたしは「お金持ち」という言葉自体に拒絶反応があった。だけど先日、自分の足で探したならば絶対に選ばなかったであろう本を買った。 告白すると、著者の富塚あすかさんは

わたしたちは「他人とわかり合うなんて不可能」をどう受け止めるべきか

なぜこの本を購入したのか、今となっては思い出せない。だけどきっと「他人を知りたい」(理解したい/悩みたくない/うまく関わりたい/誤解されたくない/誤解したくない)という気持ちで購入したのだと思う。 だけど買ったが最後、パッと見の男くさい表紙(失礼)に「話せばわかる」はやっぱり大ウソ!という絶望的な帯、本の中身がいまいち想像しづらいタイトルなどが上手く作用し合い、知的好奇心そそられぬまま長い期間本棚に眠った。つまり殿堂入りの積読本だった。 だけど一度読み始めて10ページを超

結果を出す書評ライターは「結果を出す書き方」を知っている

わたしは書評が好きだ。 わたしにとって「書評」と「あとがき」は完全に読書の一部となっている。 読書系のムック誌はだいたい見かけるたびに購入しているし、Amazonのレビューに関しては、購入前はもちろん購入後も見て他人と自分の感想を照らし合わせてニヤニヤする(本の話できる友達いないだけか)。憧れのさとゆみさんのコラム「本という贅沢」は可能な限り毎週水曜の更新に合わせてチェックしている。 もちろん読んでて楽しい文章は、自分もうまくなりたいと思うのがフリーライターの性。そんな

誰もが不平等な時代でも、時間だけは平等だ

※この記事は2020年4月に書いたものをリライトしています。 フリーランスになって1年と半年。 最近、時間の使い方について考えさせられる機会がめちゃくちゃ増えました。(※新型コロナウイルスによる自粛がはじめて強いられたあたりのタイミングですね) お恥ずかしい話、会社員時代いつも時間が足りないのは無駄っぽい会議や進捗確認、社内のコミュニケーションによって時間が奪われているからだと思っていました。 けれど、フリーランスになって半年ほど経過したくらいから、何やら仕事が全然終