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なにかを「持つ」人になるということ

「お金持ち」という言葉に胡散臭さを感じるようになったのは、いつからだろう。

子どもの頃「お金持ち」という言葉は、まるで将来の夢に設定するにふさわしいような、憧れるべき言葉だと思っていた。

だけど大人になった今「お金持ち」という言葉に、なにか悪いことが隠されているような胡散臭さを感じるのはなぜだろう。

とにかくわたしは「お金持ち」という言葉自体に拒絶反応があった。だけど先日、自分の足で探したならば絶対に選ばなかったであろう本を買った。

告白すると、著者の富塚あすかさんは、プロフィール上部2行を見た限り、とても苦手なタイプだった。

個人投資家。投資コミュニティ・ixi(イクシィ)、お金のオンラインサロン・ハッピーマネラボ主宰。

「投資家」「コミュニティ」「ハッピー◯◯」...見事にわたしが33年間生きてきた中で培った「拒絶反応ワード」が並んでいたのだ。ああ...無理。たぶん、無理。

だけど購入したのは、この記事を見たからだった。

Telling.で毎週水曜に更新されるさとゆみさんのコラム「本という贅沢」。(好きすぎてほぼ毎週水曜にAmazonの購入履歴が更新される)

実際にお会いしたというさとゆみさんが綴る、富塚あすかさん(そういえば名前もお金持ち感ある...)の印象が気になった。

あすかさんは、そのみんなの反応ににっこり頷いて、「みなさん、こんにちは。あすかです。職業は、お金持ちですっ。うふっ」と、語尾にハートマークをつけて自己紹介した。
(中略)なんというか、「最終兵器あすか登場」って感があった。
若い、可愛い。そして、ただものではない。

記事いわく、さとゆみさんが彼女に出会ったのは、本を出したい人が集う著者ゼミたる場所だったそうだ。そこで最終的に本を書きたい人が編集者らの前でプレゼンをするのだが、富里さんがプレゼンした直後、彼女の本を出したいという編集者が殺到し、立場が逆転したらしい。

まさに最終兵器。お金持ちという言葉への偏見はまったく拭わないまま、多くの編集者を口説き落としたプレゼン力を感じ取りたい下心と、著者への好奇心から、わたしは本を購入した。

だけど結果的にお金について、いや、あらゆるものの手に入れ方について学ぶ機会になったのでそれを書きたいと思う。

「お金」というツールを通して「幸福」を手に入れるための本

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本は、著者が証券会社のロビー(お金持ちと知り合うために、大学生時代にウロウロしていたらしい)で出会った一千億円くらい持っているであろう「お金持ち(通称:えびすさま)」との会話や出来事を綴った物語調の構成となっている。

内容としてはお金を稼ぐ具体的な実践方法ではなくて、とにかく1冊まるまるマインドセットを育てるためのものだ。投資やお金の勉強を始めたいという人は、まずこの本を読むことで挑戦や失敗、行動することやそれに伴うリスクに対する考え方が鍛えられると思うのでおすすめしたい。

ちなみにわたしは金勘定に恐ろしく疎いため、証券会社のロビーをうろつく話などに微笑み、楽しめればいいか、くらいの気持ちで本を読み始めた。...のだけれど。

読み進めるにつれて、というか冒頭15ページ目くらいで気づいた。これ、欲しい物が「お金」じゃない場合にも通用するマインドなのでは。

たとえばこの「えびすさま」の言葉。

「何かが欲しい、と思ったときはね、この『どんな感情を得たいのか』というところまで考えるようにすると良い」
「そして『幸せなお金持ち』になっていくコツはね、自分の得たい感情がわかったら、それを今のうちから先取りしていくこと」
「『お金』に焦点をあてるのではなく、その先の『感情』を手に入れたいということを、お金持ちになったらしっかりと自覚しておく必要がある」
「ここを誤解していると、お金を得るほどお金に固執してしまうし、なくなるのが怖くなる」

もしかしてわたしが、いつからか毛嫌いしていた「お金持ち」は、この「お金に固執している」段階にいる人たちだったのではとふと思った。少なくとも、ここに出てくる「えびすさま」は、わたしが嫌悪感を抱いたお金持ちとは全く違う人種だった。

そして、お金を得るための心の持ち方とは、「何かを得たいならばこのマインドセットが重要だ」とイコールなのだと気づいた。

手段が目的になってしまうことは、何事にも往々にして起こる。家族を養うために仕事を頑張っていたはずなのに、気づけば仕事が第一になり家族との間に溝ができてしまった人や、愛情に固執するあまり、愛されているかどうかの確認作業に必死になって恋人を失ってしまう人、などだ。

あとこの本は、女性にとって必要な心の在り方、というか女性に必要な裕福さというのも教えてくれている。たとえばこのえびすさまの言葉にドキッとした。

「女性は無理をしているとねぇ、表情も纏う空気も、次第にどんよりとしてきてしまうんだ。うつむきがちになり、姿勢も悪くなり、肌は荒れ、ギスギスと『渇いた人』になる」
「(特売日に自転車で隣町へ卵を買いに行く人に)そんなことをしていると時間価値はどんどん下がっていく一方だ。この行為を取ることで彼女は『自分が時給30円のオンナである』と自分自身に刷り込んでいるんだからね」

ああ、自分自身にとても心当たりがある。わかる。自分が渇いていく感覚を、わたしは知ってる。そしてその渇きは加速する。だから意識しなければいけないのだ。自分自身に安い値札を貼ってしまわないように。

あと、わたしがこれから先、なにかあったときに思い出そうと決めた言葉がある。

再出発に必要なのはまず、自分自身の非を認めること

これは、著者が詐欺にあったとき、悲しみや怒りに取り憑かれていることをえびすさまに諭された時の言葉だ。この言葉に冷静になった著者はこう書いている。

リターンばかり目がいって、リスクなどこれっぽっちも考えていなかった。世間知らずの小娘は、さぞ騙しやすかったでしょう。加えて、自分が詐欺に遭うことなどあり得ないという謎の自信。それがわたしの目をさらに曇らせた。

ああ、これが再出発というものだと思った。感動してしまった。この言葉を持っているだけで、なにかが起こったとき再スタートを切る時間が短縮できそうだ。

そしてこの章の終わりにはこう記されている。

雨が降っても自己責任。犬に噛まれても自己責任

結局、お金も、愛も、家族との平和な暮らしや一生涯の仕事なんかも。規模はさておき欲しいなにかを手に入れるには、手に入れる過程で負ったリスクをどう扱うか、どう乗り越えるか、どう考え、どうやって、どれくらいの量手に入れるか。その全ては自己責任なのだ。人のせいにばかりして欲しいものを手に入れた人なんて見たことがない。

ああ、なんだ、あるほどなぁ。そうだなぁ。そんな独り言をブツブツつぶやいているうちにこの本を読了し、まんまと投資の本を読み始めている。投資だけじゃなくて、自分が手に入れたかったすべてに対して、少しずつ行動を起こし始めている。

めちゃくちゃいい本に出会った。最後に、この本に出会うきっかけをつくってくれたさとゆみさんの記事の終盤にこう書かれていた。

あすかさんはいつも
「お金があったら、自分も周りの人も幸せにできる」
と言っていて、だから逆説的だけれど、彼女はお金で買えないことを一番大事にしている。
それでいうと、この本は、あすかさんから、人類へのプレゼントなんだろうなーって思う。もしくは人助け。

読み終わった後に、その意味がとてもよくわかった。これは人助けだと思う。ほんとに。そう心から思える、大変有り難い本だった。(読書をして「有り難いな」という感想を抱いたのははじめてかもしれない)


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