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惑う日々2024春 #4(終)

夕方だ。
そろそろお暇する時間がくる。
その前に梅酒を貰っておかねば。
私は鯖の梅酒煮をよく作るのだ。
姑が仕込んだ沢山の梅酒、どれを持って帰ればいいのか聞くと、平成3~5年に仕込んだ大きな瓶を
3つほどくれた。
他にもきんかん酒やかりん酒もあったが、
どれも熟成し過ぎて色が濃くなっている。
恐らく飲んでもいないのだろう。

「yumaさん、これ去年漬けたヤツよ。平成5年!」
「お母さん、今、令和ですよ」
アハハハと姑は笑った。

沢山のみかんジュースもお土産にいただく。
夫両親と、義妹、姪に見送られて荷物を車へ。
義妹には冷蔵庫の件、風呂の詰まりの件を申し送りしておいた。

お世話になりましたと挨拶をすると、
「こちらこそいろいろやってくれて本当に助かったよ。地震で不安だったけど、一緒にいてくれたから安心だったわ」
と姑が言う。そして
「こんな事いつもはしないんだけど、握手して」
と手を出してきた。

やめてくださいよ、お母さん。
私泣くやないですか。

私たちが結婚した頃、
私と同じくらいの体格に見えた姑は、
今はかなり小さく細くなっている。

差し出された小さな細い手を私は両手で握る。
続いて舅とも握手する。
涙は堪えた。

「また1年後ね!」
1年後じゃない、もっと度々来ますよ。
言いかけたけど、夫がどう思っているかは
わからないので言えなかった。

お礼を言って車に乗り、細い道を進みだす。
夫両親は私たちが角を曲がるまで、
ずっと大きく手をふっていた。

*********

帰りの車内ではお互い
これからどうしたらいいか話し合った。
夫としては(自分の実家なのに)
落ち着かないので、
もう少し楽に帰省したいとのこと。
今後は近くの宿に泊まることも
検討する必要があるかと思う。
私としては、なるべく早めに家の整理をして、
この後どうするのか考えるべきと思った。
お手洗いや段差のある廊下、
急な階段など、足が悪い高齢者に対応して
住みやすくする必要はあるだろう。
あと、朝ごはんに賞味期限切れのものや
傷みかけのものばかりを食べるのは悲しいので、
次回の帰省時には何か策を考えたい。

でも私ヨメなんだよね。
実子が3人いることだし、
図々しくあんまり関わってもな、という
葛藤もあるので、
まずは夫へのアドバイスくらいにしておくか。
(ってそんな悠長なこと言ってる場合じゃないのかもしれないが)


長い旅は始まったばかりだ。

伊予灘SAから見た松山。

(このシリーズ、進展がある時にまた書きます。)

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