虹のふもとの生活
午前10時、起床。
昨日はなかなか寝付けず、いつもより1時間遅く起きた。
外は大雪。「これは、雪かきしないとなあ」と、夫。
パンをひとかじりして、玄関先へ出て行った。
夫が雪かきしている間、朝ごはんのスープを作る。
朝は温かいスープが胃腸には良いのだ。
塩漬け豚肉、キャベツ、しめじと水を入れて火にかける。
冷蔵庫から常備菜のタッパーを出し、冷凍ごはんを電子レンジで温める。
夫が戻ってきて、朝ごはんを食べるころには、もう昼ごはんのような時間だった。
雪の勢いがすごい。どんどん降っている。
これから出かける夫を、最寄駅まで車で送る。
ちょっとそこまでだから、と、財布とスマホしか持っていかなかったら、家の鍵を持っていなかったことに気がついた。
同居のお義母さんがちょうど家にいたので、鍵をあけてくれて助かった。ああ焦った。
これからは一人の時間。まずは新しい仕事の準備だ。
仕事相手に連絡事項のメールを送信する。これからは、食べて寝て遊んでばかりのような日常に、新たなルーティンが加わることになりそうだ。
今後の展開が楽しみ。
そうこうしているうちに、午後2時。お腹が空いたし、遅いお昼にしよう。
朝はごはんだったから、昼は粉物でも食べようかな。
キャベツと豚肉で簡単なお好み焼き。中濃ソースとケチャップを混ぜたソースが我が家のこだわり。
あー、満腹、満腹。
あっというまに3時前。バイトに行かなきゃ。
今日はなんだか忙しくて、あっという間にバイト時間終了。
だんだん、忙しい時の自分の動き方がわかってきた。
しっかり働いた充実感。
帰宅すると、夫がもう晩御飯を作って待っていてくれた。なんとデキる夫よ!
味噌牛乳鍋。クックパットで調べて、豆乳の代わりに牛乳を入れてみたんだって。
これがなかなかまろやかで美味しい。だし汁も飲み干す。
食後には来客。毎週一緒に聖書を読んでる中学生。
雑談しつつ、一緒に聖書を開いて、思ったことをあれこれ喋る。
とってもささやかな時間だけど、こういう時間が私の原動力。
一緒に心合わせて祈れる誰かがいるのは尊い。
その後、お楽しみの夫婦でアニメタイム!
約束のネバーランドの最新回と、進撃の巨人を何話か。
その間に洗濯機もまわし、終わったら洗濯物を干す。
夫はあまり体調が良くないようで、ちょっとお休み。
なんだか、今日はまだ元気があるな・・・
食器を洗い、破れていたスリッパを修理し、明日の朝のためにパンも捏ねちゃおう。
発酵中に、このノートを書いている。
午前1時。
これは、ただの日常生活。
劇的なサプライズも、胸騒がす刺激も、ゾクゾクするような興奮もない。
ごくふつうの、ささやかな一日。
でも、これは、
私が今まで、過ごしてみたいと思っていた
生活、かも。
のんびりできて、何にも追われない、でも充実した一日。
一緒に生きる人がいて、安心できる人たちとの交流があって。
心がじわり、あたたかい。
もちろん、不安なことや気がかりなこともあるけれど、
いま、幸せだ。
「虹の足」
そんな詩があったことを思い出した。
その通りだ。
虹の足 吉野 弘
雨があがって
雲間から
乾麺みたいに真直な
陽射しがたくさん地上に刺さり
行手に榛名山が見えたころ
山路を登るバスの中で見たのだ、虹の足を。
眼下にひろがる田圃の上に
虹がそっと足を下ろしたのを!
野面にすらりと足を置いて
虹のアーチが軽やかに
すっくと空に立ったのを!
その虹の足の底に
小さな村といくつかの家が
すっぽり抱かれて染められていたのだ。
それなのに
家から飛び出して虹の足にさわろうとする人影は見えない。
―――おーい、君の家が虹の中にあるぞオ
乗客たちは頬を火照らせ
野面に立った虹の足に見とれた。
多分、あれはバスの中の僕らには見えて
村の人々には見えないのだ。
そんなこともあるのだろう
他人には見えて
自分には見えない幸福の中で
格別驚きもせず
幸福に生きていることが――。
*出典『現代詩文庫119続・吉野弘詩集』思潮社68~69ページ
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