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なぜ売れる本を書かないのか〜栄華と絶望の間に

◆2024年6月30日、加筆修正

私の所には、「新刊を出して下さい」というメールがよく来る。
「新刊」とは自己啓発や恋愛の本の事だ。
そろそろ、私が自己啓発の本を書かないことを教えないといけないと思っている。
30代から49歳までの間に、累計260万部を売った私は大袈裟に言うと『栄華を極めた』とも言える。
しかし、目立つ行動をしたせいで誹謗中傷が半端なくやってきて、ストレスにも苦しんでいた。
そのストレス。まさに筆舌に尽くし難い。というほど。
初めてストレスの薬を病院からもらって飲んだら、
「麻薬か、これ」
と、仰天したくらい体が楽になった。それほどストレスに体が蝕まれていた証拠。(その後、すぐに効かなくなってやめた)

車と美女。
基本的にこの二つが私の至上の歓び。
生まれた瞬間から「美」が大好き。
ただ、その美は自然の風景か女性だった。
小学生の頃は、初恋の子を「かわいいなあ。守ってあげたい」と思い、初めて見たヌード写真に、「大人の女性は綺麗だな」と感嘆。
ただ、思春期だったから最初に見ていたのは、風景や透明な水だった。小川でメダカを見ていた。
大人になり、美を手に入れた私は、
「こんなに楽しい事がこの世にあるのか」
そう毎日、笑っていた。
だが、そんな時間を過ごした後に、トイレに入って嘔吐しているような日々が続いた。
我慢強いのも祟った。
分かりやすく言うと、寒いのに寒いと言わずに我慢していて体調を崩すような男。
今なら、夏のカフェの冷房が効きすぎていると、友人に「寒いから出ていいかな」と訊くが、昔は我慢して足が冷えていくストレスに苦しんでいた。
心はストレスを我慢していたが、体が付いてこなかったのだろう。49歳くらいから体調を崩すようになり、50歳の時に大きな病気になってしまった。
その検査入院、手術、術後が、

地獄だった。

「地獄とか絶望とかこのことを言うんだな」

亡くなった愛猫の顔が浮かんできた。猫なのに亡くなる前に涙を流したその猫の名前を口にしながら、最後の意地を見せる。
…涼子、パパは泣かないよ。ちょっと助けてくれないか。この検査、あと何分かかるの? 息ができないくらい苦しい。傍にきてほしい。
目をつむってずっと天国の愛猫に問いかける毎日。
体中に点滴の針が入ったボロボロの肉体。
友達だと思っていた人からくるメールは、「看護婦とやったか」ばかり。下半身のあれがピクリとも動かない重症なのに小馬鹿にしたメールしか来ない。
真面目なメールや見舞いは、やはり医療関係者からだけだった。
退院の前日に、主治医から、「薬を飲まずにまた同じ病気になったら余命は三年くらい。五年、発症しなければ完治。だけど、里中さんには薬は合わないと思う。自分で判断してください」と言われる。薬のアレルギーが多く、セカンドオピニオンで東大病院にいた私は即答した。
「薬は飲みません」
その強気なセリフは、

別に死んでもいいよ。

の裏返し。こんな地獄はもううんざり。信用できる人も一人だけになっていた。
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普段は自己啓発をやっていますが、小説、写真が死ぬほど好きです。サポートしていただいたら、どんどん撮影でき、書けます。また、イラストなどの絵も好きなので、表紙に使うクリエイターの方も積極的にサポートしていきます。よろしくお願いします。