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2022年8月の記事一覧

詩 カシオペア

ねぇカシオペア 話をしよう あのね 海の底には星があって そこは水が損ねた光の果ての淵 はっ…

雪屋双喜
1年前
10

詩 扉

扉の外にはアイスがいる 先程から何かを言っているが 生憎インターホンは壊れている そういえ…

雪屋双喜
1年前
10

詩 「27」

頭に染みつく 歌声がある 死ぬなら今と顎を蹴る 彼はきっと全部を消して 全部を失くして死…

雪屋双喜
1年前
12

詩 掌

この両の手の上に 波の運んだ光の跡と 朝顔の葉の涙とを載せ 祈りを 合わせてしまえば心の底…

雪屋双喜
1年前
6

詩 近代人としての現代人

ぽわぽわとした死を描くあなた 今日起きて最初に聴いた一番小さな音を答えてご覧 スキが欲し…

雪屋双喜
1年前
5

詩 かいか

俯く向日葵に掛ける言葉が上手く思い出せない 昨日の氷菓の賞味期限が上手く思い出せない 炎天…

雪屋双喜
1年前
7

詩 青の時代

生まれはきっと遅すぎた 気がついた頃には止められないほどの憎悪 空を渡るのは海月ではなかった 青い空を黒い何かが吹き飛んでいく ピカソは終にはゲルニカを完成させただろうか 窓の外には心がない 心はここに 手の届くところに 今の時代をなんと呼ぼう この先の青の次を 青い空はやがて赤に染まる そして全ては黒へと還る ピカソは終にはゲルニカを完成させただろうか ふと気がつくようによる目を覚ます 天井を波が染めている 瞳に映る誰かの雫 遠くの蛍を飲み込んだ 2022

詩 無題

角を曲がる足音を追いかけて猫のつもりで歩いて行く 標識の影が細く伸びてやっと夜が明けたの…

雪屋双喜
1年前
4

詩 最低のまち

心模様と芒星 朝に落とした花の海春 暗い床から起き上がり 暗室へと入っていく すやすや眠…

雪屋双喜
1年前
7

詩 宵々

宵の間に暗む月 布団に染まる夜の青 魚の泳いだ跡の砂 風の通った後の部屋 右の左を抱き締め…

雪屋双喜
1年前
9

詩 あとがき

詩集の最後に解説載せる系の詩書き 自分の言葉を信じられないんだろうね 自分の言葉が共感さ…

雪屋双喜
1年前
4

詩 一樹の陰

君 から逃げ出して、こんなところにいる。 濡れて醒めただけの景色。 雨音の下、ただ思い…

雪屋双喜
1年前
4

詩 空白

寂しくなった 誰か 心を預けてと 目の奥で言う 夢見る少年の 友達だった 私だけここに 置…

雪屋双喜
1年前
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詩 あの日曾祖母は小倉にいた

あの日曾祖母は小倉にいた 小倉上空は雲がかかり 米軍機はそのまま長崎へと向かう あの日曾祖母は小倉にいた 雲の切れ間から西へと向かう 異国の戦闘機を見たような気がすると 祖母に語ったという あの日曾祖母は小倉にいた あの日小倉が晴れていたら 許すべきでない偶然 感謝すべきでない選択 私は戦後60年が経った年に 東京で産声を上げる あの日曾祖母は小倉にいた 責任も義務も権利も喜びも哀しみも後悔も満足も不安感も絶望も希望も怒りも叫びも あの日の空に何も言わなかった