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詩 近代人としての現代人

ぽわぽわとした死を描くあなた
今日起きて最初に聴いた一番小さな音を答えてご覧

スキが欲しいだけのあなた
それをこの世でやる意味と価値とを答えてご覧
個人的なもので十分だから

他人を鏡に自分を見つめ
自分の中の内面を薄め
心の価値をも色付け綴る

人とは 人とは
「へぇ、そうなんですね」

差別とは 夾心とは 偽善とは 憎悪とは
「はぁ、すごいですね」

やばい が市民権を得る訳は
言葉の乱れではないのだなと知る

乱れたのはその思想
壊れたのはこの構造

小さな小さな幸せも
原始の太陽も
斜陽も

新しい価値観が生まれました
そう報じる阿呆がいつか現れるのだろうな

漢字を平仮名にしたから読みやすい
そう笑う無知な無恥がいつか現れるのだろうな

……いや、もういるか。

笑っちまう
嘲笑っちまう

心の底から馬鹿にして
人を喰った笑みのまま

街を歩けよ
一足の葦

いざゆかん
遥かな時代

あなたに分かるか
この絶望が

隣りにいたのは空の薬莢
大きな音が鳴るだけの物

近代人としての現代人よ
現代詩なんかに囚われるなよ

自由を求めないその先に
言葉の意味は遅れて来すらしない

これを読んだあなた
スキなんかしないで生きてご覧

他人のことをそのままに
受け止めて生きてご覧

義務に飲まれて終わるのは御免だ
想像力の縁を散歩する

そこにはきっと見たこともない魚がいて
釣られるのを待つようにして

ぱくぱくと口を動かす


ぱくぱくと



2022.8.28 雪屋双喜

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