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詩 無題

角を曲がる足音を追いかけて猫のつもりで歩いて行く
標識の影が細く伸びてやっと夜が明けたのを知る

コンクリートは裸足には優しくなくて
アスファルトは落とし物にも冷たすぎる

つま先立ちで歩くことにして
とりあえずのつもりで信号を待つ

午前何時か知らないが空いてる店を覘いては鼻を鳴らして
また猫のつもりで歩いて行く

知らない場所に行きたくて
そこが広い場所と心の中で決めつけて

自由の世界で泳ぎたくて
そこが涼しい場所と心の中で決めつけて

きっときっと私は空を歩けない
きっときっと私はここを抜け出さない

あでもえでもない声を出して
つま先から指の先まで伸びをする

角を曲がる足音に待ってと言うのを忘れたと気付く
猫のつもりで標識に摺り寄る

朝が来たのをようやく知る


2022.8.25
人(の知覚)は遅れている。死に対してもまた。

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