詩　扉

扉の外にはアイスがいる
先程から何かを言っているが
生憎インターホンは壊れている

そういえば昨日は晴れていた
ソファは要らないと思い
ニトリへは行かなかった

代わりにアイスを買ってきた
扉の外にはその時のアイスがいる
何かを寄越せと言ったようだ

生憎インターホンは壊れている
そう扉を叩いても
そう大声で叫んでも

迷惑だなとか思う頃には
夜の九時を回っている
また明日と去っていく

アイスは取り戻しに来るだけなのだから
可哀想と言えば可哀想だ
ただ犯罪まがいな美味しさなだけ

買い手が悪いと大変だなと
他人事のように煙草を蒸す
輪っかを作りたくて吸うだけだが

アイスは他では氷菓子とも言うらしい
夏に柄シャツが似合いそう
味をしめたアイスは扉を叩く

扉の外にはアイスがいる

２０２２．８．３０　扉
家の中を世界の外と捉えるなら、アイスは他人の象徴でしょう。

雪屋双喜