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読書記録 早春賦
山口恵以子先生著 2015年 幻冬舎
以前何冊か山口恵以子さんの著書を読み、記録もしていました。
人生の酸いも甘いもまるごと抱えた食堂のおばちゃんのお話が記憶に残っています。「婚活食堂」
今回も図書館の本棚からレトロな雰囲気の美少女の表紙が気に入って読んでみることにしました。
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◎あらすじ
明治28年、主人公の大堂菊乃(だいどう きくの)の婚姻の話がまとまろうとしていた。
大堂家は維新前、札差をしていたが、没落した他家に同ぜず生き残り、財閥を形成しつつあった。
その一家の主である大堂勝太郎は娘を伯爵家に嫁がせることで華族との姻戚関係を結ぼうとしていた。
そして、嫁入り後、菊乃は気づく。
自分はどうやらかなりの持参金つきで嫁入りしたらしい。
父はそんなにしてまで、貴族と親戚になりたかったのか、まるで政略結婚のような経緯にいぶかしく思う菊乃だった。
しかし結婚してしばらくすると、わかってきた。
義父や夫、義姉との会話の中での違和感。
何事も筋を通して、一つずつ理路整然と考え行動していく菊乃と夫はなかなか懇意にはなれなかった。
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◎気になった箇所
①菊乃には大らかさと力強さがあった。気弱に目を伏せたり、ウジウジと口ごもったりする風情は微塵もない。一中略一のびのびと育ち、挫折や苦労を経験したことがなく、おまけに若くて美しい女なら、それも当然かもしれないが。
②通敬(菊乃の夫 みちたか)は底が知れない。明晰なのか、愚鈍なのか、優しいのか、冷酷なのか、善性なのか、性悪なのか、菊乃にはまるでわからない。ー中略ー
千年かけて混じり合った血の濃さが、得体の知れない魔性となって巣くっているかのようだ。
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◎感想
①貴族などの上流階級の家族関係の中で、人間の欲望が出世、名声、経済力、文化教養の素養などで散りばめられている物語だった。
そして人は弱い生き物で、その欲望に駆られると、常識とか規範とかを超えてしまう。
時には意図しなくても誰かの生命まで奪い去ってしまうこともあるのだ。
②そんな欲望のるつぼのような家で自分の役割をしっかりと見据え、人ではなくその内にある感情と徹底的と戦っていた、菊乃。
女性でありながら、重要な書類にもろくに目を通さない夫に代わり、家の経済を支えた。的確な指示や褒美で使用人たちの信頼を得て、娘を相続人として育てあげた。
自分がこの家を守るという信念に、少しの疑いのない生き方。
そんな人物の物語をすごい勢いで読ませてくれた。
令和を生きる私は、どんな人生を生きているのだろうか。
◎今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。
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