見出し画像

読書記録 大人は泣かないと思っていた。

読書記録 
大人は泣かないと思っていた
寺地はるな 著 2018年
集英社



寺地はるなさん。「やわらかな砂の上」「月のぶどう」など何冊か読みました。

身近にいる人々の何気ない日常を描きながら、じわじわとくる読後感もこの作家さんの持ち味のように思います。

さて、今回のお話は、



◎あらすじ
主人公は、時田翼。大学を卒業し今は農協に勤めている。山に囲まれた小さな町に、父と2人で暮らすのは、一人っ子で、数年前、頑固な父に嫌気をさした母は離婚して家をでたからだ。


ある時父が
「(隣の家のばあさんが、)うちの庭の柚子の木から実を盗んでいくんだ」というのだ。しかし父は実際に見たわけではないという、が確かに柚子の数は減ってきた。

翼は、元々仲の悪かった隣家のおばあさんと、また面倒なことになるかと、しばらく父のことばを聞き流していた。

しかし、ある日、翼も見てしまったのだ。
白い手が柚子の木に伸びるのを。その手を翼は掴んだ。と、同時に「痛た、た、た、た〜。」という甲高い声がし、若い女がうずくまっていた。


そして、、、。



◎気になった表現

✴︎38ページ 
隣の家の人の孫レモンが

孫なのに、と顔中くしゃくしゃにして、鼻水を流しながら泣くその顔を、俺は黙って見ていた。

ー中略ー
そして、思い出した。

あの日、表札の母の名前を油性マーカーで塗りつぶしながら、父は泣いていた。男のくせに泣くな、と俺に言い続けた男が。



✴︎✴︎  62ページ 小柳レモンの思い

母は姫路城に似ている。あるいはノートルダム大聖堂に似ている。そういう大きくて美しくて、荘厳な何かを思わせる佇まいをしている。近づきたいのに近づくのが難しい。  

ー中略ー

近づきたい、近づけない、と思いながら、離れたところから強く、好きだと、思う。






◎感想
大人が涙を流す時って、、、。
大人になると感情をコントロールすることが普通で、人前ではあまり喜怒哀楽、特に怒ったり、悲しんだりを表したりはしないだろう。

でも、全く感情に蓋をしてしまうと感性が鈍ってきて、自分で自分の感情がわからなくなってくる。

だから、時には本気で悔しがったり、悲しがったり、辛い時は泣いてもいいと思う。

では、どこでなら、誰の前なら泣けるのだろう。

自分ひとりで、自分の感情をそのまま出せるかもしれない。

noteのように書き留めることで、自分の感情を確認できるかもしれない。

でも、自分の素直な感情をそのまま
受け止めてくれる誰かがいたら、、、。


この本は、そんな誰かを探す旅の物語かもしれない。



✴︎✴︎
そして、今はお星様になった自分にとっての母という存在。

記憶の中の母は、小さな頃は甘えたくても甘えられない存在。

思春期からは、羅針盤みたいな存在。

でも、時々、この道、違うよなぁって思って、葛藤したこともたびたびあった。

そして40代を過ぎた頃から、母は海の家みたいな存在になった。泳ぎ疲れたら、休みに行く、一緒においしいご飯をたべる。

私と考え方や価値観が違っても、世代や環境の違いと受け流すこともできるようになっていった。



この本は自分にとって大切な存在、その人との距離感を振り返ること時間となった。


◎今日も最後まで読んでくださり、ありがとうございました😊









この記事が参加している募集

#読書感想文

189,141件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?