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【書評】「シェエラザード」、性交後のベッド、男と女


村上春樹「女のいない男たち」
短編【シェエラザード】

素性が謎に包まれた男は、「ハウス」と呼ばれる場所に、まるで何かに隠れるようにひっそりと暮らしていた

その男ー羽原の身の回りの世話をするために週に一度、女が訪れてくる

食料の補充と、ベッドで抱き合い彼の性欲を満たす、30代と思しき女

性交後の気だるい時間の中で、女が語りだす

”ーわたしの前世は、やつめうなぎだったの”

やつめうなぎ wikipediaより引用

毎回、性交後のベッドの中だけで語られる彼女の不思議な話
羽原は彼女を「千一夜物語」から”シェエラザード”と密かに名づける

やがてシェエラザードは、10代の高校生の頃に夢中になったクラスメートの
男の家に、空き巣狙いとして歪んだ恋心を抱いていたことを羽原に告白する

真昼の他人の家での、異様なまでの静けさと、やつめうなぎだった頃の遠い思い出

羽原は彼女の虚とも実ともとれる不思議な話に埋没していき・・・
彼女は語り続ける

羽原は、いつか彼女を失う日がそう遠くない未来に確実に来ることにおびえながら、彼女の話に深く絡めとられていく・・・






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