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見知らぬイタリアを探して

内田洋子さんの書いた、「見知らぬイタリアを探して」を読了。読み応えのあるエッセイでした。イタリアは日本人にとってどこか憧れがある国です。ファッション、デザイン、食事、ライフスタイル、歴史、文化、どこを切り取っても魅力が溢れます。私たちが持つイタリアのイメージは、明るさがまず最初に来ると思います。

しかし、内田さんが書いたイタリアは、まさに私たちが知らないイタリアです。移民たちと暮らすイタリア人。どこかチグハグなカップル。ヴェネチアの古書店の古い歴史。船乗りの話、ヴェネチアと南イタリアの人の温度差、イタリアの貴族家の実態、色々なエピソードがミクロ。内田さんの生活圏内で起きていることで、それらのエピソードを色とイタリアの歴史や文化を絡めて伝えてくれるので、読み応えがすごいです。コロナ禍、日本とイタリアを行き来する際のめんどくささは、深く頷きながら読んでいました。しかしそれを口で終わらせないプロの技。

友人や知り合い、ご近所、仕事仲間、たまたまテーブルが一緒になった人とのエピソードは誰にでもあるはず。しかし当たり前で、あまりにも目の前に起きることだからこそ、気にも留めない。しかし彼女のように素晴らしい感受性のアンテナ、文章力、言語力、想像力、優しさがあれば色々な人々の日常から見える、別世界が書けるんだなと思いました。彼女は確か「誰にでも語る物語があるはず」と言っていた気がします。

この本を読めば、皆さんが思っているイタリアの知らない面がわかります。でもそれはただ「暗い」とか「明るい」などと一括りにされるものではありません。

そう思ってしまうことこそ、複雑な問題、背景、文化がからんでいます。そして人の優しさ、寂しさ、ちょっとした事から人が立ち直っていく様、その強さ、そして周りの人たちの優しさがじんわりと目に、心に染みてきます。

本当に誰の話だって物語になるんだなって思いました。おすすめです!


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