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Series ”コトノハノコト” Page 1: オモシロキコト

”おもしろき こともなき世を おもしろく
   すみなすものは 心なりけり”   
        ー高杉晋作(下の句:野村望東尼)ー

FUJIFILM X-100F

はじめにお断りさせていただくと,私自身は歴史に詳しいわけではありません。幕末の動乱期における高杉晋作という人間についても,長州藩士,吉田松陰の塾生,上海見聞,奇兵隊,S&Wを坂本龍馬にあげた人。
・・・そんなものでしょうか。
したがって,高杉晋作なる人物の人となりを正確に知るわけではありません。
しかしながらこの銘句は,たしかに,私に1つの矜持を教えてくれました。


「どんな過酷な時でも,楽しむことを忘れてはいけない」


ここで言う ”楽しむ” とは,笑い合うことや娯楽に興じることではありません。
”謳歌すること” です。

この句は「~おもしろく」までの上の句に,当時,高杉晋作と知己であった歌人の野村望東尼が下の句を加えた(返した)ものです。
単純に読むなら,「こんなつまらない世の中を,面白いと思える世にしてみせよう。」「それはあなたの心しだいですね。」といったところでしょうか?
攘夷志士らしい強い信念の句・・・にも聞こえますね。

それが正しいのかもしれませんが,今日は,私の中での捉え方にお付き合いください。


この句は,実は上の句だけで完結しているのではないでしょうか?
「おもしろき こともなき世を おもしろく」

幕末の動乱期です。
異人の恐怖,辻斬りも横行し,討幕派と幕府の戦いも繰り返され,漠然とした恐怖と明日がどうなるかもわからない絶望が,そこかしこにあったのでしょう。
攘夷志士にとっては面白いものなど,論外だったかもしれません。
恨み,憎しみ,恐怖,絶望,願望,怒り。
それはまさに ”おもしろきこともなき世” です。

そんな世を ”おもしろく”
これは ”面白くしてやる” という意味ではなく,”面白く生きたい” という願いだったのではないでしょうか?
周りを見渡せば,悲しみや怒りの声ばかりがきこえて。
顔を上げる者の目には憎しみか涙しかなく。
多くの者は下を向くばかり。

しかし,よくよくみてみると,世界には変わらずに美しいものや,良いものがある。
夕陽が美しい
花が美しい
子がかわいい
雪は白く,月は輝き,春になれば桜が咲く
祭りもあれば市もある
まわる風ぐるまで赤子が笑うように,楽しむ心さえあれば,世界は楽しい。
高杉晋作は,悲しみがあふれる世界の中であっても,悲しみがあふれる世界だからこそ,そんな世界に自分は取り込まれたくないと,自由に生きたいと思ったのではないでしょうか?

おもしろき こともなき世を おもしろく

これは,悲しみに流されるでもなく,怒りに任せるでもなく,絶望に沈むわけでもなく,私は私であると,どんな世界でも ”面白く” 生きてやるという,希望の句,なのでしょう。

新型コロナ,ウクライナ戦争などなど,今の世界は動乱の只中です。
私も,職の関係で,人の死に多く関わります。
今の世界は,悲しみの中です。
そうでなくても,辛いことや悲しいこと,苦しいことはたくさんあります。

でも,美味しいお菓子を見つけたら嬉しいです。
うまく髪がセットできたら楽しいです。
猫に出会ったら幸せです。
満月をみたら感動です。
暑い日のかき氷は至福です。
ラムネの瓶は懐かしく,祭囃子に心も踊り。
綿あめ・・・食べたくなってきました。

悲しみに暮れるでもなく,怒るばかりでもなく,恨み言ばかり言うでもなく,堂々と,自分らしく,”面白く” 生きてみたいものです。

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