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daily voices: 9/5/2020

家の近くに森がある。森というかとても大きな公園で隣町まで小川で繋がっている。そして大きな池が真ん中にある。いくつもの坂道を越えると大きな木が並ぶ広場もある。何もない場所、緑だけの。いろんな鳥の声が聞こえて、虫たちがそこら中にいる。なんて夢みたいな場所に、わたしは小さい頃から夢中だった。
この場所でわたしは育った。

昔はよく、その森の奥に探検に行って泥だらけになるまで遊んでいた。だけど大人になってからはあまり奥には行かなくなった。どうしてだろう。そんなことを思いながら昨日は太陽が照りつける暑すぎる正午ごろ、吸い寄せられるように森の奥へと足を踏み入れた。近くで買ったサンドイッチとミネラルウォーターを持って。
そこはわたしが以前見ていた、知っているままの空間が広がっていた。安心した。たくさんの枝分かれした道も、自然と理解できた。覚えていたんだと思う。
大きな背の高い木たちが寄り添った森は、かすかな光だけを浴びる涼しい空間だった。決して湿っぽくはない。心地よい日陰。古びた木のベンチ。

地面には最近の強い風で落ちてしまったのだろうか、まだ緑色の若いどんぐりが無数にあった。拾ってみる。それは懐かしい感覚だった。
自然と笑みがこぼれてしまう。何か、そうだなあ、忘れていた感情。多分そんなものを思い出したんだと思う。大切にしまっていたもの。壊れないもの。
幼い頃の感情はふとした時に蘇る。肌に触れる風、におい、足元の地面の感触。
とても大切なもの。わたしにとって。夢みたいな。

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そんな体験をした一日だった。自然の力はすごいなあとやっぱり思う。
ここにしかない音、たくさんの生き物。それらで溢れている空間。大きな木の枝が落ちていて少し動かしてみたらムカデが慌てて出てきた、名前も知らない小さな白いキノコたち。

というおはなし。
木の幹に葉っぱたちの日の影が風に揺られて変化する様子はとてもずっと眺めていたくなった。

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