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easy poem

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簡単な詩を掲載。自由に。詩誌に投稿はしないだろう詩、のちのち推敲して投稿するかもしれない詩。
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2022年12月の記事一覧

easy poem「陸橋」

easy poem「陸橋」

電車は西に向かっている
日の入りの太陽を
追っているわけではない
私は私を追いかけて
あるいは
あなたがあなたを追いかけて
北へ向かっているように

音が変わる瞬間の
車輪の決意は
遠くへ響いてから
私の耳に食い込む
その瞬間がとても好き
耳の裏のGIVENCHYが
鼻腔をくすぐる
河川敷を歩く犬たちに
感ずかれているに違いない
それならば、おもしろい
紐を操る人を困らせるほどに
走ってみたらいい

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easy poem「痕」

easy poem「痕」

雨は降っていなかった

透明に浮遊していた水が
誰かの重みをまして
姿を現わし
地面に降りてきて
さらに誰かの重みをまして
氷になっている
早朝にみつけた
誰かと水の戯れの痕

誰かとは
私なのかもしれないし
私ではないのかもしれない
昨夕、
乗換案内に逆らって
路線図を遠回りをして
最寄り駅から暗い近い道を避け
大通りの街灯に沿って
遠回りをして帰宅した
夏ならば夕方の陽の名残が
まだ新しい、1

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easy poem「K子」

easy poem「K子」

学生時代から苗字が変わらないK子は
毎年、律儀に年賀状を送ってくる
今年は早々に喪中の葉書が届く
お父さんが亡くなったらしい
五年ごとの割合で住所が変わっている
最後に会ったのは私の結婚式だろうか
いつ頃からかSNSで繋がっているが
特に言葉は交わさない

砂漠でラクダに乗るK子
断崖絶壁の岩場に立つK子
透明な青い海に潜るK子
きまぐれにエアメールが届く

最近は登山をするK子
住所は長野県に

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easy poem「イルミネーション」

easy poem「イルミネーション」

街のイルミネーションが
一層と派手になり
ある人の歩幅はゆるやかに
ある人の歩幅は忙しくなる
私は足を止める

子供の頃サンタクロースに手紙を書いた
(おちないくんが欲しいです)
紫色の猿の身体から伸びる手が長く
万歳して両の掌をくってけて
どこかにぶらさげると落ちないから
おちないくん
クリスマスの朝、枕元の袋を開けると
私が欲しかったおちないくんよりも
二まわりも三まわりも小さかった
私は悲し

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easy poem「初冬」

easy poem「初冬」

寂しさを寂しいと言える人の首は
きりんのように長いことを
悟られないようにしていて
水紋の輪を正しく数える

ベビーカーを押す掌の温もりは
共通の言語であって欲しい
抱っことおんぶの差は
顔が見えるか見えないか
というだけで
その重さに差などない

寂しさと優しさは似ている
スタバのキャラメルラテと
母が入れるコーヒーは
同じくらいにおいしいから

気温10度の朝、
20分も歩けば上着を脱いで

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