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easy poem

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簡単な詩を掲載。自由に。詩誌に投稿はしないだろう詩、のちのち推敲して投稿するかもしれない詩。
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2022年8月の記事一覧

easy poem「海」

easy poem「海」

波が高ければ高いほど
私の乳房は大きくなります
砂浜の砂は
全然さらさらしてなくて
私の食道に余韻を残します

波が重なれば重なるほど
私の身体中にひろがって
喉がとても渇きます
でも海水は絶対に
飲んではいけないよ
って難破船の船長が
言っていました

水平線はいつも
地球はまるいでしょ
って教えてくれるけど
海水が空にこぼれない理由も
全部が地面にくっついてる理由も
よくわからないまま
大人に

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easy poem「百日紅」

easy poem「百日紅」

雨雲レーダーよりも先に
やってきた急性の雨に
これまで見たことのない程の
大きな百日紅が
お入りなさい
と、誘ってくれる
傘の模様のように
白い花が散りばめられ
大人が4、5人は
雨宿りできそうである

百日紅の中に入ったのは
初めてのことであり
艶やかな美しい枝ぶり
雨粒を掬うようにひらいた葉ぶり
しゃがみこんで
頭をゆっくり見上げて回す

ひと雨ごとに季節は進む
雨にとけてくひと夏
私の四十と

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easy poem「渋谷、炎天下」

easy poem「渋谷、炎天下」

坂の多い街を
Googleマップに従い歩く、が
もう迷っている
複雑な路線、が絡み合う
人と人と、が絡み合う
携帯扇風機の熱風、が絡み合う
言葉を繋ぐ術、はなく
Googleマップは知らない涼、を求めて
寂しさの目線、だけが絡み合う

山手線の高架下を何度もくぐる
たぶん同じ景色を徘徊している
たぶん同じShibuyaほにゃらら
を、何度も見上げている

犬の銅像を外国人がスマホに収める
世界のあ

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easy poem「タイ不~機嫌」

easy poem「タイ不~機嫌」

ご機嫌ななめなメアリーは
不機嫌を吸い上げながら
偏西風に消えてしまいたい
と願っている

海の不機嫌も
山の不機嫌も
動物園の猿の不機嫌も
雑草のヤブ蚊の不機嫌も
ついでに私の不機嫌も

不機嫌が降ってくる
不機嫌が吹いてくる
不機嫌が屋根にあたってうるさい
不機嫌が窓をつたってうるさい

近所の川が不機嫌で溢れそうだって
不機嫌な住人が消防署へ電話する
不機嫌な消防士は
不機嫌なサイレンを鳴ら

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easy poem「香水」

easy poem「香水」

街にでれば
年に一度は
Fの香りとすれ違う
記憶の端っこにできた
小さなほくろ
悪くはない
正確にはFの香り
というのではなく
商品の香りであるから
私はFの
本当の匂いを
知らない

悪くはないが
良くもない
例えば
Qから
あの香りがしたとしたら
それはFになってしまう
そもそもQは
無味無臭で
私と別れるのであるが

本物の薔薇の香りを
知らないくせに
薔薇の香りが好き
商品の香りを
身体に

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