神崎ゆきの「本当の目的」
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神崎ゆきの「本当の目的」

神崎ゆき

 ある日のこと。

 私はいつものように、可愛いイラストを眺めたり、面白いWEB漫画を読んだりするために、Twitterを開きました。

 すると……。

 好きなイラストレーターさんがTwitterで公開された作品に、多くの批判が殺到していました。

 戸惑いました。可愛らしい女性キャラクターのイラストを描かれる方で、好みの絵柄だったのでこまめにチェックしていたのですが、こんなことは初めてだったから。

 さらに、何やら様子がおかしいのです。

 クリエイターが作品を公開する以上、「つまらない」「面白くない」「下手くそ」という厳しい評価も甘んじて受け入れなければなりません。

 これらの洗礼を乗り越えて、それでも作品を作り続けるからこそ、作品のクオリティは向上し、クリエイターとして成長できる。

 しかし、その作品への批判内容は「つまらない」「面白くない」「下手くそ」という作品への評価ではありませんでした。

 なんだか、よく意味が分からない支離滅裂な内容だったのです。

 例えば……。

 「ミソじゃん」「これだから名誉は」「ちんよしかよ」といった、いまいち何を言っているのか分からない言葉。

 そのような言葉と共に、そのイラストレーターさんの人格攻撃にまで発展する引用RTやリプライが、これでもかと浴びせられていました。

 それも1人ではなくて、複数のアカウントから。

 まるで、嵐のように。

 いったい何が起こっているのかと疑問に思い、暴言を吐くアカウントの1つのプロフィールページを覗いてみると……。

 そこには。

 「あらゆる女性差別を許さない」「フェミニズム」という文言が、プロフィールに記載されていたのです。

 このときの衝撃は、忘れられません。

 他のアカウントも確認してみたところ「フェミニスト」「ジェンダー平等」「女性差別反対」「マイノリティ差別反対」という文言がありました。

 不思議でした。

 それまでの私の中の「フェミニスト」のイメージは2つ。

 1つは、漫画『ワンピース』のキャラクター「サンジ」のような、レディーファーストの精神を持つ、女性に優しい男性。

 もう1つは、男女平等を目指して社会運動をしている人たち。

 これについては、正直あまり詳しくなくて「なんとなく、社会の為になる行動をしているんだろうなぁ……」という程度の認識でした。

 それでも、他者に罵詈雑言を吐くようなイメージは全く無かった。

 だからこそ、支離滅裂な罵詈雑言を女性イラストレーターに吐きかけるアカウントが「フェミニズム」を掲げていることに、強烈な違和感と大きな疑問を覚えたのです。

 それらのアカウントのツイートを遡ってみると……。

 見るに耐えない愚痴、というよりも「怨嗟」「妄執」という言葉の方が適しているかもしれないと思うような、それはそれは酷い言葉が書き連ねられていました。この記事には書くことすら躊躇してしまうような、本当に酷い言葉。

 最初は、それらのアカウントは「フェミニスト」を名乗りながら横暴に振る舞う、ごくごく一部の「過激派」なのではないかと思いました。

 ですが、しばらく観察を続けると……。

 この「過激派」こそが、Twitterにおける主流なフェミニストであること。

 さらに、社会学者や有名なフェミニストでさえも、それらの「過激派」を批判せず、むしろ擁護するための理由を作り上げたり、率先して男女対立を煽るような言動をしていることが分かってきました。

 表現やクリエイターを守る立場から意見を発信しているフェミニストもいないわけではありませんが、それは全体から見ると極々少数。中には「一緒にされたくないから、フェミニストと名乗るのをやめた」という方もおりました。

 そして、イラストレーター・漫画家・モデル・企画者によって発表された作品や広告。これら多くの表現が「フェミニスト」の暴言による人格攻撃に晒され「炎上」させられていることが分かりました。

 「差別反対」を掲げながら、一体どの口で誹謗中傷をしているのか。

 多くのアカウントが「それはおかしい」という声を上げておりましたが、ことごとく「差別主義者」「ミソジニスト」「レイシスト」「犯罪者予備軍」と呼ばれていました。

 フェミニズムに反対意見を述べる女性も多く見かけましたが、彼女たちもフェミニストから「名誉男性」「ちんよし」と侮辱されていました。

 調べたら、次のような意味だと分かりました。

「ミソオタ」は「女性蔑視(ミソジニー)」の略語
「名誉」は「名誉男性」の略語
「ちんよし」は、女性が男性器を愛撫する「ちんぽよしよし」の略語

 「ミソジニー」や「名誉男性」という言葉は、後々に用語の歴史的な経緯等を詳しく調べたのですが……本来の意味は既に失われており、もはや中身が形骸化した、他者を侮辱する「レッテル」となっていました。

 都合の良い、便利な道具として、相手を非難して貶めるためだけに使われている。そんな現状。

 「ちんよし」に至っては。

 インターネット・スラングの中でも下品で悪辣な、相手を貶める言葉以外の何物でもありません。

 そんな状況でも、フェミニストとの対話を試みる方々もおりましたが、ことごとく相手側から「ブロック」をされてしまっているようでした。いったい、なぜなのか。複数のフェミニストの言動を観察すると……。

 「差別主義者と対話する必要なんて無い」

 どうやら、このようなロジックで対話を拒否しているようです。

 最近はあまり見かけなくなりましたが、以前は「トーンポリシングだ!」という言葉で、対話を拒否する方々もおりました。

 トーンポリシングは、本来は「対話の続行」を目的として「① 権力関係で優位な者が」「② 相手の態度・感情を理由に」「③ 対話を拒否すること」を批判する概念だったのですが、それが逆に「対話の拒否」に利用されてしまうパラドックスが起きてしまった。

 筋の通っていない理屈で暴言と共に表現やクリエイターを非難し、それに対して「おかしい」と声を上げたら「差別主義者」とレッテルを貼られ、そして「差別主義者と対話する必要は無い」というロジックで、対話と相互理解の道すら閉ざされてしまう……。

 だからと言って放置しておいたら、私が好きなイラストレーターさんが遭ったような被害が、また起こるとも限らない。表現とクリエイターを守るために、何か行動を起こしたい。

 いったい、どうしたら良いのか……。

 そんな問題意識を持ったのが、2019年のこと。

 その後、約1年間程度の期間を準備に当てました。私にはマーケティングの知識と技術があったので、それを駆使して何か問題を解決できないか、Twitterで可能な限り関連する状況を調べました。

 そして、2020年11月15日。

 私は、Twitterで「神崎ゆき」というアカウントの開設して、運用を開始しました。この最初のツイートから始まり、マーケティング・スキルを駆使して、表現やクリエイターに関する問題や、現代フェミニズムのおかしな点を一般層にまで届くように発信することで、1万人を目標にフォロワーさんを集めることにしたのです。

 さらに約1年間が経過して、2021年11月10日。

 無事に約1年間でフォロワーさんを1万人集めることができました。当初の計画ではピッタリ1年間掛ける予定でしたが、5日間ほど早く達成できたのは、私を応援して下さった皆さんのおかげだと思います。

 本当にありがとうございます。

 さて、それでは。

 フォロワーさんを1万人集める過程で何をしようとしていたのか、1万人を集めた先にどんな狙いがあったのか。

 私の「本当の目的」をお話しようと思います。

1. 一般層への周知

 1つめの目的は、一般層への周知です。

 私自身は元々、フェミニズムやフェミニストに関する知識も無ければ、表現とクリエイターに関する状況がこんなことになっているとは思ってもいませんでした。

 元を辿れば、2014年の『人工知能学会誌の表紙』から、私がTwitterを運用し始める2020年11月まで、本当に多くの表現とクリエイターが炎上の憂き目に遭ってきたようです。

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男性のつらさの構造|すもも|note より引用)

 ある日いきなり、嵐のような暴言に晒されて炎上する。しかも、その炎上は全く予測できるものではありません。

 表現の炎上に関して「燃えるような場所に置かなければいい」という意見もよく見かけますが、過去の炎上事例を詳しく見てみると、マーケティングの観点から「炎上の完全な推測は不可能である」ということが分かります。

 しかも、炎上に発展する表現バッシングは、かなり無茶苦茶な理由で難癖で非難されている場合もある。そのくせ、実際に酷い暴言の数々があったにも関わらず、後から「その表現自体を批判していたわけではない」と平然と言われてしまう。

 正直、防ぎようがありません。

 そこで、私は考え方を変えることにしました。

 この現状を広く一般層向けに周知することによって、ある日いきなり難癖をつけられて炎上するという事態に陥っても、クリエイターやそのファンが冷静に対応できることを目指すことにしたのです。

 表現バッシングをしてくる人々を直接的に批判しても、お互いにヒートアップして建設的な議論はあまりできません。大抵の場合、何も解決せずに不毛なレスバトルで終わってしまう。このやり方では、ツイート自体も広がりづらい。

 また、無闇やたらとレスバトルを仕掛けていると、自分自身が意固地になって「確証バイアス」に囚われてしまい、意見をフラットに見ることができなくなってしまう危険があります。

 この記事では、私が運用初期で「確証バイアス」に囚われて意固地になってしまった「失敗談」も交えて、様々なバイアスについて解説しています。

 そのため、私は基本的には表現バッシングをしてくる人々の方向を向くのではなく、一般層の方向を向いて発信をすることにしました。

 まず、アカウント開設と共に、Twitterで表現バッシングをするアカウントの中から、影響力のあるアカウントをブロックしました。さらに、それらのアカウントが"RT"や"いいね"をしているツイートを辿り、暴言を繰り返しているアカウントをブロックしました。

 ブロックの基準としては、暴言を吐いているかどうか。具体的には、冒頭で示したような「ミソジニー」「名誉男性」「ちんよし」という言葉を他者への侮辱として使用しているかどうか。あるいは、そのようなツイートを"いいね"や"RT"をしているかどうか。

 他にも「クソオス」「キモい」を始めとして、言うのも憚られてしまうような言葉を使用している方々は、事前にブロックしました。

 だいたい、運用開始時に300アカウント、そこから運用していく中で少し増えて、現在は500アカウントほどブロックしています。

 なので、私のことを「神崎さんは正論を言うからこそ、変なやつが絡んでこない」と評価して下さる方がいらっしゃるのですが、それは……ごめんなさい。そういうアカウントを、事前にブロックしているに過ぎません。

 もちろん、片っ端から意見が異なる方をブロックしているわけではありません。私自身は「対話」は主目的ではありませんが、それでも、私が間違えているときに批判して下さる方の重要性は感じています。

 私の主張をよく読んで「この部分がこういう理由で間違っている」と根拠を持って、具体的にしっかりと指摘して下さる方ならば、こちらもしっかりと対応するようにしています。

 特に、ブログやnote等の長文が書けるプラットフォームにて、事細かに私を批判して下さった方に関しては、私に時間を費やして下さったことの感謝も込めて、こちらも可能な限り誠実な対応を心掛けています。

 前述した「確証バイアス」に関しても、私のフォロワーさんが指摘して下さったことで、私は自分自身がバイアスに囚われていることに気づくことができました。

 今でこそ、私のTwitterの通知欄は常に「20+」で埋まっている状態なので、全てに対応することはできませんが、それでもなるべく自分への意見は見るように心掛けています。

 最終的な発信の方針は「Twitterアナリティクス」を見ながら決定していますが、それでも実のある意見を下さる方々にはいつも感謝しています。

 一般層へ向けて丁寧な言葉で発信しながら、その過程で得た意見や情報は、新たなツイートやnoteの記事に役立たせて頂く。こうして表現バッシングの現状を周知して、フォロワーさんを集める。

 これが、私の1つめの目的であり、私の基本的な発信におけるスタンスでもあります。

2. 誹謗中傷の抑制

 2つめの目的は、誹謗中傷の抑制です。

 私がアカウント開設前の1年間の調査で思ったことは「フェミニストが行う誹謗中傷も酷いが、同時にフェミニストが受けている誹謗中傷も相当酷い」という、見過ごせない現実です。

 これは、2つの意味で看過できません。

 1つは、そもそも倫理的に誹謗中傷は良くないということ。誹謗中傷は他者に心の傷を負わせます。法的にも訴訟対象であり、すべきではありません。

 もう1つは、フェミニスト側に誹謗中傷をしてしまうことによって、表現やクリエイターを守りたいという立場の人であっても、一般層に「どっちもどっち」と見られて、敬遠されてしまうことの懸念です。

 だからこそ、私はフェミニストの言動を批判する傍らで、それでも誹謗中傷は良くないということを、何度も呼び掛けてきました。

 しかしながら、単純に「誹謗中傷は良くない」と言うだけなら、誰にでもできます。そこに行動が伴わなければ、説得力はありません。

 特に、誹謗中傷問題で最も厄介なのは「被害者を装う加害者の存在」です。相手に対して「誹謗中傷をやめろ!」と言いながら、実際はその人物が酷い誹謗中傷を行っているという事例。

 そうでなくとも、敵対的な相手に「誹謗中傷をやめろ!」と言ったところで、それが受け入れられるはずもなく、終わらない誹謗中傷の連鎖に繋がってしまうこともあります。

 だからこそ、私は「本気で誹謗中傷を止める」ことを考えて、自分と立場が異なる相手ではなく、自分と意見が似ており立場が近い人々に向けて、アプローチを掛けることにしたのです。

 具体的には、次の3つ。

 1つめは「自分への賛同意見に誹謗中傷が含まれていた場合、直接それを注意する」ということ。

 これはアカウント開設時から現在に渡って、何度も繰り返し行ってきました。行き過ぎた暴言や過剰な揶揄に対して、私への賛同意見であろうとも、しっかりと諌めるように取り組んでいます。

 多くの場合、注意を受けた方々は「言い過ぎた」と改めて下さります。そして、私の言葉が行き過ぎた場合は、逆に注意して下さる。そうすることで「自浄作用」を生み出そうという狙いです。

 2つめは「マーケティングの観点から、乱暴な言葉を使わない方が、SNSでは圧倒的にシェアを獲得できる」と示すこと。

 つまり、倫理観からの「良くない」という呼びかけではなく「メリット・デメリット」という損得基準から「丁寧な言葉を使った方が遥かに得だよ」と呼びかけるのです。

 下記は、普段から少々荒っぽい言動を取るフェミニストの方の事例を取り上げ、セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングという「STP分析」の概念を踏まえて「マーケティングの観点から有効ではない」と示した記事です。

 この「メリット・デメリットの観点から、乱暴な言葉は有効ではない」という主張は、何もフェミニストだけを対象にしているわけではありません。

 下記は、私と同じくフェミニストに批判的な立場である人物が、フェミニストの横暴を「フェミテロ」と称して揶揄したときに、私が「そのような揶揄はマーケティングとして有効ではない。一般層から敬遠されるため本末転倒だ」と真正面から注意した記事です。

 そして。

 3つめは「乱暴な言葉よりも丁寧な言葉の方がSNSではシェアを獲得できて支持を得られる」ということを、私自身が証明することです。

 前述した「自分への賛同意見に誹謗中傷が含まれていた場合、直接それを注意する」という行動は、直感的には「そんなことをしたら、自分のフォロワーさんが離れていってしまうのではないか」という不安を伴います。

 さらに「丁寧な言葉を使っても、誰にも聞き入れてもらえないんじゃないか」「フェミニストを面白おかしく批判した方がバズって一般層に届くんじゃないか」という疑念もあるでしょう。

 しかしながら、実を言うと私は乱暴な言葉どころか、フェミニスト批判でよく見かける「複数のツイートを並べて矛盾点を面白おかしく指摘する」という方法すら、1度も使用していません。

 ひたすら丁寧な言葉を使い続けて、自分の支持者に対しても暴言は直接注意して、それでもフォロワー数は獲得できる。むしろ、より効率的な発信ができて、影響力も得られる。

 この事実を、1年間でフォロワーさんの数を1万人集めることで、示すことができれば、フェミニストへの誹謗中傷を抑制するだけでなく「揶揄・おちょくり・煽り」も減らせるのではないかと考えたのです。

 ただし、私には誹謗中傷は法的にもダメなので批判しますが、「揶揄・おちょくり・煽り」に関しては、完全に「No!」とは言えません。

 私自身が倫理観から「揶揄・おちょくり・煽りは倫理的にすべきではない」と言ったとしても、それはあくまで私の価値観に過ぎないからです。誰かを強制できるものではありません。

 それでも……。

 もしかしたら、今までは「揶揄・おちょくり・煽り」を行う方の中には「それ以外の批判のやり方を知らない」という方もいたかもしれない。

 そういう方に向けて「他のやり方もある」と提示できれば、「揶揄・おちょくり・煽り」を少しでも減らせる可能性がある。

 そう信じて、私は丁寧な言葉を心掛けて、発信をしてきました。

 フェミニストを批判する人々の誹謗中傷を抑制する。さらに「揶揄・おちょくり・煽り」以外の効果的な方法も示す。

 これが、私の2つめの目的です。

3. ポジティブな運動への転換

 3つめの目的は、フェミニストへの不平不満・義憤を抱える人々のエネルギーを、ポジティブな運動という方向性へ転換すること。

 私自身が実際に関わった事例で言うと、小田急刺傷事件に関連して起こった「全国被害者支援ネットワークへの寄付ムーブメント」があります。

 このムーブメントは、当初の私の計画には予定していない、本当に偶発的に起こった運動なのですが、結果的に私がやろうとしていたことに近いものとなりました。

 運動の経緯および詳細に関しては、下記の記事にまとめてあります。

 この記事は、寄付ムーブメントに協力して下さった方々がとある人物に「ネット誹謗中傷粘着ストーカー行為常習犯」と侮辱されてしまうという、非常に残念な事態が起きたことで抗議を目的に書いたものですが、結果的に運動を記録として残すことができました。

 この運動に協力して下さった方には、純粋に被害者のためを思って寄付してくださった方もおりますが、ここまで大きく盛り上がるムーブメントとなった背景として「フェミニストに対する不平不満・義憤の感情」があったことも否めないでしょう。

 不平不満や義憤のような「必ずしも善とは言い切れない感情」を「ポジティブな運動」に変えることができれば……。

 その運動の盛り上がりによって「一般層への周知」もできて、さらに感情を向ける先ができることで「フェミニストへの誹謗中傷」も抑制できるのではないか、と私は考えました。

 では、私の当初の計画が何かと言えば……。

 「Change.org」というWEB署名を使用することで、バッシングに遭った「企業広告」の表現を守る方法です。

 表現バッシングの1つとして、WEB署名を利用して批判の声を集めて、それを企業に提出することによって広告を自主的に修正・削除させる……という方法があります。

 有名なものだと「お母さん食堂」の名称変更を要求する署名です。

 私は、これを「逆」に利用することを考えました。

 すなわち。

 何らかのバッシングに遭っている企業広告について「その企業を応援している」「広告には何の問題も無い」という内容の署名運動を行い、それを企業に提出することで企業の表現を守る。

 企業広告に限らず、表現・広告・商品・対応・流通、何に関してもそうなのですが、何の不満も無く賛同している人々は、得てしてそれを言葉にしません。わざわざ「これは素晴らしい!」なんて表明しないのです。

 対して、不平不満を漏らす人は声に出してクレームを行います。それにより「不平不満の声が大多数だ」と錯覚に陥りますが、実際に不平不満を抱えているのは顧客層のごく一部だった、という事例は珍しい話ではありません。

 だからこそ。

 企業の広告が炎上したとき、その企業に賛同する「サイレント・マジョリティ」をWEB署名によって可視化することで、企業に応援の声をしっかりと「数字」として届けることが重要と思ったのです。

 企業は基本的に「利潤追求」の原則で動きます。

 必ずしも全てにおいてその原則で動くというわけではありませんが、企業担当者としては、せっかくコストを掛けて制作した広告を取り下げたくはないでしょう。そこで、WEB署名の「数字」という材料があれば、それを根拠に管理職である上司をこのように説得できます。

「たしかに、SNSでは批判の声が上がっていますが、こちらのWEB署名の数字をご覧ください。この賛同者数と照らし合わせると、批判の声はごく一部のノイジー・マイノリティが騒いでいるものと判断できます。ここで広告を取り下げてしまうと、応援して下さる方々の期待を裏切ることに繋がり、潜在的な顧客が離れることが予測されます。したがって、広告を取り下げるべきではありません」

 こうして、企業担当者は管理職に、管理職は経営者に、経営者は株主に、目に見える「数字」という根拠を手に入れることで「広告を取り下げない」という判断を下すことができる。

 もちろん、ここまで上手くいくかどうか分かりません。それでも、やってみる価値があると考えました。そのためには、私に好意的かつ協力的なフォロワーさんを集める必要があった。

 フォロワー数は、俗に「自分に向いている銃口の数」「動物園に来た観光客の数」とも言いますが、実は自分のフォロワー層を分析する方法はいくつかあります。

 そのうえで、私がひたすら丁寧な言葉を使うのは「一般層への周知」「誹謗中傷の抑制」という目的の他に、ただフォロワー数を集めるだけではなく「自分に好意的かつ協力的なフォロワーさんを集める」という目的もありました。

 これは「揶揄・おちょくり・煽り」という方法では、なかなか集められない層です。

 私が行動を起こしたときに、一緒になって取り組んで下さるフォロワーさんを集めることによって、「企業広告」がバッシングに遭った際のカウンターとして「企業を応援する運動」の準備をしておく。

 この運動が盛り上がれば、「揶揄・おちょくり・煽り」をする層も巻き込んで、「フェミニストに不平不満・義憤」という必ずしも善とは言えない感情を、企業を応援する「ポジティブな運動」に転換できる。

 これが、私の3つめの目的でした。

 しかし、私が1万フォロワーを達成する前に、この戦略では対応できない事態が起きてしまったのです……。

4. 政治からは逃れられない

 ここまで、私がTwitterで発信する「3つの目的」をお伝えしてきました。

 1つめは、一般層への周知。
 2つめは、誹謗中傷の抑制。
 3つめは、ポジティブな運動への転換。

 これら3つを目的として発信をして、これにより表現とクリエイターを守る、というものです。この戦略で対象としていたのは「個人クリエイター」「企業広告」およびそれらのファンです。

 そして、地方自治体や行政機関が関係する「公共広告」に対しても、このやり方の延長線上で対応できると思っていました。

 しかしながら……。

 これがあまりにも甘過ぎる見通しであったことを、私は「全国フェミニスト議員連盟」の騒動を経て、痛感することになりました。

 上記の記事は、VTuber戸定梨香さんが協力した交通安全啓発動画に関して、全国フェミニスト議員連盟が公開質問状により「女児を性的な対象として描くキャラクター」「性犯罪誘発の懸念すら感じさせる」と断定し、千葉県警に「謝罪・使用中止・削除」を要求したことから始まる、一連の騒動を時系列順でまとめたものです。

 あまりに酷い公開質問状の内容に、全国フェミニスト議員連盟に抗議する署名運動が為されて、7万筆もの署名が集まりました。この署名は、VTuber戸定梨香さんの所属事務所の代表である、板倉節子氏の意向も組んで行われています。

 この方法は、私が計画していた「署名運動でサイレント・マジョリティの数を可視化して、企業が表現を取り下げない材料として提供することによって、企業広告をバッシングから守る」という戦略と、少しばかり似ています。

 しかしながら、7万筆の署名が集まった現在においても、全国フェミニスト議員連盟は、対話を求める板倉節子氏を未だに無視し続けている。

 署名が集まり、この問題が広く周知されても、根本的な問題は解決しない。今後はどうなるか分かりませんが、既に騒動が起こってから2ヶ月以上が経過しても、解決の兆しが見えない。

 この署名運動にも関わっている、大田区議会議員のおぎの稔氏はこのように語っています。

政治に無関心でいられても、無関係ではいられない。
誰も政治からは逃れられない。

大田区議会議員 おぎの稔|午前0:33 · 2021年10月19日|Twitter より引用)

 正直に申し上げると……お恥ずかしい話ではあるのですが、私は政治に対して、そこまで大きな関心はありませんでした。

 漠然と「投票に行かずに若者の投票率が下がると政治家は若者に有利な政策をしてくれない。だから、投票には行く必要がある」とは思っていたのですが、誰がどのような政策を実施しているのか、そこまで詳しく知ろうとは思っていなかった。そもそも、どんな基準で政策を見ればいいのか分からず、深く考えなかった。

 ましてや、衆議院選挙等の大きな選挙ならまだしも、地方自治体の議会や議員の政策には、あまり興味を持てなかった。

 しかしながら、全国フェミニスト議員連盟の共同代表は、増田かおる氏。なんと、VTuber戸定梨香さんが活動する松戸市の議員です。まさか、松戸市の議員が、松戸市の企業の活動を妨害するような行為を是認するなんて、思ってもみませんでした。

 全国フェミニスト議員連盟の騒動を経て「政治」に関心を持つと共に、地方自治体の選挙に関しても疎かにしてはいけないのだと、大きな危機感を抱くようになったのです。

 これは、私が調査期間を含め約2年間の間で学んだことの中で、最も大きな実感と共に私の胸に突き刺さりました。20代のうちに気づけて、本当に良かったと思っています。

 そして、同時に。

 公共広告の表現を守るためには、個人の表現や企業広告を守る以上に、広い範囲の人々の理解を得なければならないと、私は考えるようになりました。

 具体的に「オタク文化」の表現について考えてみましょう。

 オタク文化の表現が公共広告に進出するに当たって、オタク文化に理解があり、表現とクリエイターを守ってくれる議員の存在は不可欠です。

 また、言うまでもないことかもしれませんが、議員になるためには選挙で票を集めて当選する必要があります。

 ここで、総務省統計局が公開している『明日への統計2021』から「日本の人口」を見てみましょう。

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明日への統計2021|総務省統計局 より引用)

 『明日への統計2021』を見ると、20代から30代に比べて、40代から50代は、約2倍の人口がいることが分かります。

 重要なのは、日本の制度が「1人1票」であること。つまり、人口が多いということは、その年齢層の「票数が多い」ということです。そして、票数が少ない若年層に比べて、票数が多い中高年層はオタク文化に親和的ではない傾向がある。

 「中高年層はオタク文化に親和的ではない傾向がある」という事実は、VTuber戸定梨香さんや宇崎ちゃん献血ポスターに関して、すもも氏が実施したインターネット調査の結果でも示唆されています。

 すなわち……。

 オタク文化に理解があり、表現とクリエイターを守ってくれる議員を政治の場に送り込むためには、オタク文化に必ずしも親和的ではない中高年層の理解を得る必要がある。

 これに気づいてから、私は「オタク文化の表現は不快だ」と思う人々からも「それでも表現やクリエイターは守られるべきである」という理解を得られるように、発信を心掛けるようになりました。

 「不快な表現でも守られるべきである」と思う人々が増えない限り、表現やクリエイターを守る議員を政治の場に送り込むことはできず、公共広告の表現をバッシングから守ることはできない、と考えたのです。

 現在、私のスタンスは以下の通りです。

【個人クリエイターの趣味である場合】
自由である。

【企業広告の場合】
自由である。表現が取り下げられるかどうかは、バッシングや炎上ではなく、市場原理に委ねられるべきである。

【公共広告の場合】
ある程度、TPOに配慮する必要がある。人それぞれ価値観は異なるため「この表現は不快だ」と思う人々の意見も重要だ。ただし、TPOは一方的に決められるものではない。「この表現が好きだ」と思う人々にも配慮し、十分な対話を踏まえて考えられるべきだ。

クリエイターは「過度な性的表現」をしないように配慮すべきである。同時に「これは過度に性的な表現だ」と意見する側も、その意見が本当に適切かどうか配慮すべきである。

その際に、クリエイター本人の申告が無いにも関わらず「このクリエイターには性的表現をする意図がある」と断定することは、当該クリエイターへのセクシャル・ハラスメントに該当する可能性もある。十分に注意すること。

また、行政機関がその表現を公共広告として取り上げることのメッセージ性にも配慮すべきだ。同時に、既に公共広告に起用した表現を撤回して取り下げることのメッセージ性にも配慮すべきだ。

公共広告における「配慮」は、このような表裏一体の関係にある。

 また、いずれの場合においても……。

 表現に対して「女性差別を助長する」「性犯罪を誘発する」と批判するならば、科学的根拠を伴うべきと思います。

 科学的根拠を伴わないにも関わらず「女性差別を助長する」「性犯罪を誘発する」と意見することは、悪質な風説の流布である「デマゴギー」と、クリエイターや関係者を傷つける「誹謗中傷」に該当します。

 さて。

 ここまでを踏まえて、私が気をつけていること。

 それは、あくまで主観的に「この表現は不快である」「性的に見える」と述べている人に対して、その意見を「女性差別を助長する」「性犯罪を誘発する」と勘違いしてはいけない、ということです。

 たしかに、「この表現は不快だ」「性的に見える」という自分の主観的な感覚を、そのまま「女性差別を助長する」「性犯罪を誘発する」という客観的なものと混同してしまう人がいることは否めません。

 しかし、あくまで「この表現は不快である」「性的に見える」を主観だと認識して、TPOについて意見を述べている人であれば……。

 その人の意見の全てに同意できずとも、十分に尊重することで「自分には不快な表現、性的に見える表現でも守られるべきである」という理解を得られる可能性があります。

 あらゆる年齢層に「自分には不快な表現、性的に見える表現でも守られるべきである」という共通認識が広がれば、表現とクリエイターを守ってくれる議員を、政治の場に送り込むことに繋がる。

 今までの表現バッシングや炎上の数々を憂いて、表現に関する批判に過敏に反応してしまう気持ちは分かります。

 私もそうです。

 自分の好きな表現に「この表現は不快である、性的に見える」と言われたら、イラッとします。悲しくもなります。

 それでも、相手を非難したい気持ちをグッと堪えて、その人の気持ちにも理解を示したい。こちらが理解を示さない限り、相手が理解してくれることも無いと思うから。

 政治に無関心でいられても、無関係ではいられない。
 誰も政治からは逃れられない。

 おぎの議員の言葉を胸に。

 今までよりも広い範囲に私の声が届くように、表現とクリエイターが守られるように、不快な表現や性的に見える表現でも守られるべきだという理解が得られることを目指して……。

 私は、発信を続けていこうと思っています。

5. 人との繋がり

 最後にお話するのは……。

 この1年間を通じて出会った、ご縁に関して。

 当初の計画では予想をしていなかったことが「全国被害者支援ネットワークへの寄付ムーブメント」の他にも、たくさんありました。

 その1つが、新しいWEBサービスで「オンライン・コミュニティを作りませんか?」と、ご紹介のお声がけを頂いたこと。

 有料オンライン・コミュニティの開設は、最初は正直ハードルが高いなと断ろうと思ったのですが……。

 調べてみると、この『yoor』というWEBサービスが、リリースされたばかりの新しいサービスであると知って、ちょっと気が変わりました。私は新卒のときにプログラマとして働いていたこともあり、新興サービスをできるだけ応援したいという気持ちがあったからです。

 月額100円と言えども、お金を頂く以上はある程度の価値を提供しようと考えて開設したのが『神崎ゆきの100円ラボ』です。このコミュニティでは、毎日1,000文字程度のコラムを配信しています。

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神崎ゆきの100円ラボ|yoor より引用)

 Twitterでは、マシュマロへの回答や他人のツイートへのリプライを除き、私は基本的に「表現やクリエイター」および「フェミニズム」に関連することとしか投稿しません。それは、noteでも同様です。

 しかし、この『神崎ゆきの100円ラボ』では「マーケティング戦略の話」から「好きな作品のオタク語り」から「きのこの山への愛」まで、私の趣味を全開で、好きな話題のコラムを書いています。

 普段の発信とは違って、私の目的とは全く無関係に、純粋に「私が話したいこと」だけを楽しく話せる空間。それを価値あるものと受け止めて下さるメンバーの方々が100名以上いることにも、感謝が尽きません。

 毎日更新、頑張っていこうと思います。

 他にも、想像以上に多くの方々と関わることができました。私とは異なる考え方、異なる観点、異なる立場からの意見で、私自身の知見が広がることもあった。書き始めると際限が無いほどに、素敵な出会いがたくさんありました。

 全ての方と主義主張や価値観が合わなくても、場合によっては完全に真逆の意見だったとしても、冷静に対話を重ねることができた方々も何人もおりました。

 この記事では、どうしても他に適切な表現が難しい場合は、便宜上「フェミニスト」という言葉で批判的な記述もしているのですが……。

 対話ができた方の中には、フェミニストを名乗る方もおり、個人的に尊敬する方もおります。異なる価値観を持っていても、その方の主義主張に完全に賛同しているわけではなくとも、知識と経験に裏打ちされた意見を冷静に述べられる方には、十分な敬意を払いたいと思っています。

 何事も。

 0か100ではない。
 白か黒かではない。
 敵か味方かだけではない。

 それをしっかり心に刻み、批判すべきところはしっかりと批判する。自分が間違っていたら、しっかりと指摘を受け止める。自分の間違いを認めるのは、正直「うぅ……」と苦しいけれど、それでも。場合によっては、真摯に謝罪もする。

 発信を始めてから1年間、その姿勢であろうと努めてきました。そして、間違ってしまって発言を撤回したり、記述を訂正したこともあれば、謝罪をしたことも1度や2度ではありません。自分の未熟さや拙さを感じて、日々精進しようと思うばかりです。

 私を応援して下さる方々の声も、とても嬉しく思っています。それと同時に、私を戒めて下さる方々にも、私は心からお礼を申し上げたいのです。

 本当に、ここまでありがとうございました。

 そして、これからも。

 神崎ゆきを、何卒よろしくお願いします。


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神崎ゆき
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