見出し画像

『今の会社で成長したい人におすすめ』みんなのフィードバック大全 著者:三村真宗【読書記録】

どんな書籍か?

タイトル

みんなのフィードバック大全

著者

三村真宗

出版社

光文社

読み終えるまでの平均時間

6時間47分

なぜ、読もうと思ったのか?

要約の仕事のため

本の種類

電子書籍 購入

感想

タイトルと内容の一致度【100】
読みやすさ【70】
内容の満足度【70】

『フィードバックは「詰める」ためのものではなく、「相手の成長を願って伝える」べきものなのです』わかってはいるけど実行するのが難しいフィードバック。読めば読むほど重要なのはわかるが、実際にやろうとは思わないし思えない。自分が管理職や社長ようなポジションであればすぐにでも実施したいところだが、現実的には厳しいのではないかと感じてしまう。それはなぜか、今の会社で成長したいと感じますか?この問いに「YES」と答える人は少数だと考えるからです。

どんな人におすすめできる本か?

・今の会社で成長したい人
・管理職または社長
・意識高い人

読むとこんな変化が感じられます。

・フィードバック文化は最強
・自分が起業する際は確実に実行したい
・今の会社で成長したいと思う人っている?

いつ読み返すべきか

・管理職になるか起業したとき

気になった部分抜粋

こうした難しい状況はあれども、社会のデジタル化が進展し、あらゆる観点で変化の激しさが増す 今日、リスキリングという言葉に代表されるように、自分自身のスキルを磨き、アップデートし、常に成長し続けることが求められています。ビジネスパーソンの成長を促すうえで極めて有効な手段として、フィードバックに注目が集まっているのは必然の流れです。フィードバックに関心を持つ人は、これからさらに増え続けるでしょう。せっかく関心を持った方々が、迷ったり、つまずいたり、間違った理解をしてしまわぬよう、全社員でフィードバックを実践し、一定の成果を出しているコンカーでの取り組みを参考にしてほしいと考え、筆を執ったのが本書『みんなのフィードバック大全』

このタイトルには2つの意味を込めています。 「みんなの」は本書の対象層の広がりを意味しています。フィードバックは管理職だけのものではありません。一般社員にとっても、人材価値を高めるうえで不可欠とも言えるポータブルスキルであり、そして経営者にとっても、組織文化・組織風土を変革するうえで極めて重要な経営テーマである、という意味を込めてい

「大全」はカバーする内容の広さを意味しています。フィードバックは問題点を指摘するスキル(本書でいうギャップフィードバック) だけではありません。ほめる力(ポジティブフィードバック) も、受け止める力(コーチャビリティ) も含んだ総合的なコミュニケーションの体系である、という意味を込めています。さらには経営戦略の一環として、どうすればフィードバックの文化を組織に浸透できるのか、その具体的な方法論や心理的安全性のつくり方も解説してい

本書の執筆にあたり特に意識したのは、ともすれば精神論に寄りがちで、論点が散らばってしまいがちなフィードバックのコンセプトを、できる限り全体感でとらえて構造化する、つまりフレームワークで説明するように心がけました。フィードバックに必要な知識をすべて一度に身につけることは困難であっても、フレームワークの形で体系立てて理解しておくことにより、実践で迷ったらいつでも立ち返ることができるはず

どのパートから読み始めるかは読者の皆さんの興味次第で構いませんが、経営層向けの第5章を除き、最終的には本書を通読していただきたいと思います。ページ数は多いですが、具体的なエピソードも交え、できる限り平易な表現で書くことを心がけましたので、集中すれば3~4時間で読めると思います。そして本書を通読することにより、「自分はフィードバックの基礎知識を持っているんだ」と自信の裏打ちになるはずです。  これからの仕事の局面で、「フィードバックしたいんだけど上手にできるか心配」「フィードバックをうまく受け止められなくて苦しい」「組織の風通しが悪くて、陰口や中傷が横行している」などなど、フィードバックに悩んだときには、あなたの本棚から本書を取り出して読み返していただきたいと思い

そう思えた理由は2つあります。ひとつは、彼からのフィードバックによって成長を実感できたからです。自分の至らない部分を知ることができ、成長に繫げられたことは大きな励みになりました。そのフィードバックをもらってからというもの、勘と経験に頼りそうな自分を抑え、「ファクトとロジック、ファクトとロジック……」といつも頭の中で唱えながらクライアントと接するように心がけました。  もうひとつの理由は、私に対する彼の思いと信頼が伝わってきたからです。 10 歳以上も年下の彼が、曲がりなりにもビジネス経験を積んできた私にわざわざフィードバックをしてくれたのは、彼が「この人にもっと成長してもらいたい」と願い、そして「この人なら、耳の痛い話をしても受け入れてくれるはずだ」と信じてくれているからに違いないと思いました。このやり取りをきっかけに、彼に対しても深い敬意と信頼感を抱くようになったの

聞いていてハラハラするようなストレートな内容を遠慮なく伝え、受ける方も耳に痛い内容であってもわだかまりなく受け止めて感謝している。優秀なコンサルタント同士がまるで息をするようにフィードバックし合っていたのです。自分が成長するためには、他者からのフィードバックは不可欠であり成長の源泉である。そう考える人たちばかりだったの

思い返すと「目の前にいる相手の問題点に気づいているのに、本人にフィードバックしないのは罪」という雰囲気すら漂っていたように思い

私は「働きがいの源泉は、成長の実感にある」という信念を持っています。この信念のもとに社員一人ひとりの成長に心を砕いてきました。  成長は個人の中で完結しているだけではありません。成長は個人と個人が影響し合い、触発され促されるものです。そこでコンカーで始めたのが「高め合う文化」。社員同士が相互に影響し合い、刺激し合うことで成長を加速させるという考え方であり、その考え方を組織文化として定着させようという一連の運動です。  そして「高め合う文化」の根幹をなすのが、本書のテーマである「フィードバック」なの

本書を読み終わる頃には、フィードバックの実践が夢物語でないばかりでなく、スキルとして血肉となると確信していただけると思い

フィードバックはビジネスの必須

私の考えるフィードバックとは、相手が自分ではよく理解していない弱点や改善のしどころ、あるいは強みや長所に気づきを与え、そして成長に繫げてもらうコミュニケーションです。また、このコミュニケーションは必ずしも上司から部下への一方通行だけで交わされるものではなく、部下から上司、同僚から同僚、というように組織全体に広がっていくべきもの

ハイコンテクスト文化:  社会で共有されている価値観や考えが比較的同質な文化。同じバックグラウンドを共有しているため当事者間の行き違いや理解の齟齬が少ない。共通の文脈を前提にしてコミュニケーションが成り立つため、あまりストレートな物言いを必要としない(好まれない) 傾向に

ローコンテクスト文化:  社会で共有されている価値観や考えが比較的多様な文化。そのためバックグラウンドの異なる当事者間での行き違いや齟齬が発生しやすい。共通の文脈が弱いため、ストレートにコミュニケーションし合う(好む) 傾向に

このようなことからも日本社会では「文脈=コンテクスト」を大切にしていることがわかります。私たちは長らく「はっきりと言葉にして伝える」のではなく、その場の流れや空気、あるいは社会的慣習のような非言語的なコミュニケーションを重視してきたの

これに対し、西洋社会、特に米国はローコンテクストな文化です。人々が持つ価値観や考え方が多様であることをコミュニケーションの前提としています。そのため、コミュニケーションを交わす際には、前後の「文脈=コンテクスト」ではなく、思ったことを言語化して、はっきりと明示的に表現し合うことが重視され

詰める上司は、部下の成長を心から願ってそうしているのではなく、理不尽な言葉を用いて部下の危機感を喚起することで、部下からより多くの活動量を引き出そうとしているにすぎないからです。  部下が営業ノルマを達成できないのは、もしかしたら顧客対応の段取りややり方を間違っているからかもしれない。間違ってしまうのは、そもそも正しいやり方の教育や訓練を受けていないのかもしれない。そういう点は考慮せずに、ひたすら罵倒して営業活動へと駆り立てる。そんなことを繰り返していても、部下の本質的な成長には繫がりません。悪質なケースはパワーハラスメントに該当してしまいます。仮に一時的に結果が出たとしても、本質的な問題が解消されていないわけですから、持続的に結果を出し続けることは困難でしょう。フィードバックは「詰める」ためのものではなく、「相手の成長を願って伝える」べきものなの

戦後の高度経済成長期からバブル期ぐらいまでの右肩上がりの時代には、市場がどんどん拡大していったため、日本企業は「個人の能力」よりも「組織としての結果」に目を向けてきました。けれども、現代は個人のリーダーシップや創造力が重視される「個に光が当たる時代」です。組織内における「相互作用型の学習(=フィードバック)」によって実現する個人の成長が、組織の競争力を決定的に左右すると言っても過言ではないの

プレゼンスキルに比べるとフィードバックスキルはまだまだ 黎明期であり、 30 年前のプレゼンスキルと同じような位置づけにあるように思います。本書刊行の2023年時点では、フィードバックスキルの重要性に気づいているビジネスパーソンは少数派です。だからこそ早い段階でフィードバックスキルを身につけることによってひと味違う人材に成長できるの

最近では能力の高い人材は必ずしも終身雇用を望んでおらず、また短期的な給与条件だけで職場を選んだりもしません。そういう人たちが何より求めているのは自分自身のさらなる成長であり、自分という自己資本を育てることに貪欲です。「ここで働き続けていても成長は望めない」と気づいたら、さっさと会社を見限って出ていってしまう可能性もあり

終身雇用制が崩れつつある今、優秀な人材は、自分自身の成長に対する焦燥感と、より成長できる職場に転職したいという強い意欲を持っています。このような状況だからこそ、あなたは経営者として会社全体にフィードバック文化を根づかせることを目標とするべきなの

コンカー流フィードバックを実践する際のプロトコル(約束事) は、「フィードバックのマインド」「フィードバックの種類」「フィードバックの方向」「フィードバックの受け止め力」 という4つの個人視点の基本概念に加え、経営視点の概念として「経営的な取り組み」 があります(図

■ 基本概念1:フィードバックのマインド │ 伝わるかどうかはマインドで決まる  まず最初の基本概念は「マインド」です。「後ろ向き・責める気持ち」ではなく、「建設的に・成長を願って」がフィードバックを実施する際のマインドとして絶対に不可欠

フィードバックをする時に、「相手の成長を願う気持ち」 があるかどうか。これがすべての大前提であり出発点です。「相手の成長を願う気持ち」ではなく、「この機をとらえてやっつけてやろう」とか、「きつく叱って自分がすっきりしたい」といったネガティブなマインドでフィードバックをしていては、いくら細かいテクニックを駆使したとしても、相手の心には決して届きませ

部下や後輩の失敗が見つかると、多少はイラッとすることもあるでしょう。しかし、その気持ちを抑え、敬意を持って接することでフィードバックは初めて相手の心に沁みるの

■ 基本概念2:フィードバックの種類 │ ギャップだけではなく

ギャップフィードバックは、相手の行動の気になる点や、課題や改善すべき点を伝えるフィードバックです。一般的には「ネガティブフィードバック」と呼ばれることが多いようですが、そうすると否定的なイメージが強くなりすぎるため、「成長のための差を埋める」という意味合いで、私たちは「ギャップフィードバック」と呼んでい

フィードバックというと問題や課題の指摘、すなわちギャップフィードバックを思い浮かべる方が多いでしょう。しかしフィードバックは問題の指摘だけではなく、本人が気づいていない強みや長所を伝えてあげることも相手の成長に繫がります。これが「ポジティブフィードバック」です。  相手の長所や強みを伝えたり、努力や成果を認めたりするフィードバック、わかりやすく言えば、ほめることです。そう言うと、「そんなのは簡単じゃないか」と感じる人もいるかもしれません。しかし、そうでもないのです。ポジティブフィードバックは意識していなければ案外、忘れがち

実際によいところが思い浮かばない可能性もありますが、フィードバック文化が浸透しているコンカーの社員でさえも、フィードバック=ギャップフィードバックという理解が頭にこびりついており、「フィードバックはありませんか?」との問いに対して反射的に「ギャップフィードバックを聞かれている」と思ってしまうようなの

■ 基本概念3:フィードバックの方向 │「上司から部下」だけでなく、全

けれども、すでに見てきた通り、コンカーで推進しているのは「上司から部下」へのフィードバックだけではありません。逆方向に当たる「部下から上司」 へのフィードバックや、横方向に当たる「同僚同士」 のフィードバックも奨励しています。さらに「他部門の上司・同僚・後輩」 といった斜めの関係においても積極的にフィードバックをするように勧めてい

敬意もなく高圧的な態度で接する上司に誰がフィードバックをするでしょうか。「ここを改善すればもっとよくなるのに」と部下が思っても口をつぐむばかりです。口に出せないフラストレーションはあきらめに繫がり、飲み会など上司のいない場で「上司の悪口大会」となって吐き出されるのです。上司にとっても、部下にとっても不幸なことです。  管理職や経営層の読者は、今一度、自分が高圧的な態度で部下に接していないか振り返るべきです。部下に対しても敬意を払い、謙虚になることで部下の心理的安全性を高め、部下からもフィードバックしてもらえる関係性を目指してみてはいかがでしょう

■ 基本概念4:フィードバックの受け止め力 │ 伝える力だけでなくコーチャビリティを

つまり、フィードバックをしづらいのは、「適切なやり方がわからない」といった自分側の問題に不安を感じるからというよりは、「相手が気を悪くしたり反発したりするのではないか」といった相手側の反応に不安を感じる人の方がはるかに多いことがわかりました。こうして当初の仮説の正しさが証明されたの

■ 基本概念5:組織的な取り組み │ 経営戦略・組織文化として

ポジティブフィードバックとは相手をほめることであり、また相手の長所や強みを伝えたり、成果や努力を認めたりするコミュニケーションです。その目的を「相手のため」と「お互いのため」の2つの観点に分けて解説し

受け手にとってのポジティブフィードバックの効果を「好ましい行動の強化」「好ましい行動への転換」「承認欲求の充足」 という3つの観点から詳しく見ていきましょう。 ■ 好ましい行動の強化  初めに、「ほめて伸ばす」ことをここでは「好ましい行動の強化」として説明します。話をわかりやすくするために、ペットの飼育を例にお話しし

やや大げさなぐらいにほめました。そうすると、彼も私からの期待に応えられたことが嬉しかったようで、それ以降は以前にも増して日本の商習慣に理解を示してくれるようになりまし

自分に自信がある人は、他者からの評価が気にならず、承認欲求もそう強くありません。しかしそのような人はどちらかと言えば少数派で、多かれ少なかれさまざまな不安を抱え、他者からの承認を求めている人が多くいます。 「自己実現の欲求」を頂点とした「マズローの欲求5段階説」という理論があります。この理論の観点から考えてみても、物質面で豊かになり、さまざまな社会制度の整備が進んだ現代社会においては、下の層にあたる「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」までは満たされている人が多いものの、次の段階にあたる「承認欲求」は満たされない人が多いのではないでしょうか。SNSで「いいね」が気になってしまう人が多いのも、このような傾向を映していると思われ

■ フィードバック濃度が高まる  相手の弱点や課題に対して、いざギャップフィードバックをしなければならない時に大切なのが、普段から本音を伝え合える関係性になっておくということです。普段からポジティブフィードバックを積み重ねておくことは、感じたことを率直に伝えられる雰囲気づくりに繫がります。  仲のよい夫婦関係を構築するには、相手の問題を抱え込まず、きちんと伝え合うことが大切と言います。これは夫婦関係のみならず、ビジネスの人間関係においても同様です。しかしギャップフィードバックばかりし合っていると、さすがにお互い疲れますし、ギャップフィードバックの機会は本来さほど多くありません。むしろ圧倒的に多いのはポジティブフィードバックの機会のはず。普段からそういう機会を見過ごさずにほめ合ってフィードバックの濃度を高めておいた方が、いざというときのギャップフィードバックも伝えやすくなります。そしてそれがよいことも悪いことも率直に言い合える、お互いにとってよい関係の構築に繫がるの

そのプロデューサーがバラエティ番組に出演しているのをたまたま見かけた時のことです。司会者からの「あなたの指摘はどうしてそんなに本質を突いているのですか?」との問いに、「相手への関心に尽きます。相手への強い関心があってこそ、強みも弱みも見えてくるのです」と回答していました。  フィードバックにおいて、相手への関心がいかに大切であるかを再認識するよい機会になりまし

【グッドフィードバッカー】   ギャップもポジティブも両方多い人 【ギャップフィードバッカー】  ギャップは多いが、ポジティブが少ない人 【ポジティブフィードバッカー】 ギャップは少ないが、ポジティブが多い人 【プアフィードバッカー】    ギャップもポジティブも両方少ない

この中でもギャップフィードバッカーの管理職は本当にもったいない。普通に考えたら、ギャップフィードバックよりもポジティブフィードバックの方がはるかに簡単なはずです。なのに、なぜ部下のほめどころを見つけてほめないのか、疑問に思い、あるギャップフィードバッカーの管理職と1on1で話す機会にその理由を聞きました。そうしたところ「普段は厳しめの上司と思われているので、ほめるのが照れ臭い」と回答するの

⑦ 他人と比較しない  ポジティブフィードバックをする際には「本人以外」を引き合いに出さないこと、つまり他者と比較しないようにしましょ

⑪ 「なぜ」を使って具体的に  ポジティブフィードバックをする際には〝表層のワナ〟に陥らないことが大切です。できるだけ具体的にほめるよう心がけましょう。「すごくよかった」とか「素晴らしかった」といったうわべをなぞるような浅いほめ方では不十分

「今日のプレゼンは素晴らしかったですよ」よりも、「今日のプレゼンは素晴らしかったです。全体の構成がよく整理されていて、課題分析も的を射ていました」というように、具体的かつ理由も添えてほめるとよいでしょう。本人の努力や仕事への向き合い方を認め、よかったポイントを挙げ、そしてそれがどのような好ましい結果に繫がったのか等々、具体的な言葉にしてあげるのです。そうすれば、間違いなく、本人の胸に響くポジティブフィードバックになり

確かに彼はしょっちゅう部下をほめてはいました。しかし、「その資料、いいね!」とか「その企画、いいね!」といった表層的なほめ方にとどまっていたため、部下の心に響かず、「自分の上司からはポジティブフィードバックをあまり受けていない」と部下に感じさせてしまっていたの

に刺さらないし、残らない。これを私は、ポジティブフィードバックにおける〝表層のワナ〟と呼んでいます。ポジティブフィードバックをやろうという意識ばかり先行して、なぜほめようと思ったのか、その「理由」を「具体的」に言葉にすることをさぼらないように注意しましょう。  本質をほめるためには、「なぜ」を挟んで事象を深く掘り下げていくというテクニックが有効です。これはトヨタ生産方式における「なぜなぜ分析」と同じ考え方です。トヨタでは、発生した問題の真の原因を明らかにし、再発防止策を講じるために「〝なぜ〟を5回繰り返す」と言われています。例を見てみましょ

結果をほめるだけでは、本人はなぜ結果が成功したのか、客観的にわかっていないことがあります。プロセスをほめることによって、成功に至った理由に光が当たり、次に同じ仕事に取り組む時には成功の再現性が高まるの

⑬ できて当たり前と思わない  まずは「できて当たり前と思わない」ことです。ポジティブフィードバックをする基準は相手によって異なります。なぜなら人の能力はそれぞれ異なるから。  特に自分にも他人にも厳しい管理職や先輩社員は要注意です。「これぐらいの簡単な仕事はできて当たり前」「もう入社して〇年も経ったのだから、これぐらいできてもらわなくちゃ困る」と思いがちです。  また「この程度のことをほめたら、それで本人が満足してしまう。甘やかさないためにもほめないでおこう」と考える人もいることでしょ

⑮ 次のゴールを与える  3つめは、「次のゴールを示す」ことです。ポジティブフィードバックを受けた人は自身の成長を実感し、モチベーションが高まります。そのため、同じタイミングで小さな〝あと一歩〟を指し示すと、さらなる成長に向けた行動が誘発されます。その〝あと一歩〟は〝背伸び〟つまり〝ストレッチ〟することに繫がります。上手にストレッチゴールを与えて、さらなる成長を引き出してあげましょう。  たとえば、部下が作成した営業の提案書がよくできている場合、「よくできていますね。特にグラフの見せ方が上手です」などとほめてから、「色づかいにひと工夫を加えると、もっとわかりやすくなりそうですね」とアドバイスすると、とても効果的

ポイントは前後を「but」で繫げないこと。「グラフの見せ方がとても上手です。 だけど、色づかいが……」というふうに逆接の接続詞を挟んでしまうと、相手の頭の中では、前半に受けたポジティブフィードバックの印象が薄れ、ギャップフィードバックを受けたように感じてしまい

基本は「and」で繫げること。「グラフの見せ方がとても上手です。(ここでひと区切りつける。そしてひと呼吸おいてから) さらに、色づかいをこうすると……」というように、ほめるべきところはしっかりほめる。一度話に区切りをつけてから、「but」による逆接ではなく、「and」的に順接で繫げて次のゴールを示す。やや高度ではありますが、そういう細やかなテクニックが求められ

人は期待されていれば自ら理想に近づこうとし、期待されていなければ自ら理想から遠ざかっていきやすいものです。そのカギを握っているのが、相手の可能性を信じ、そしてしっかりと言葉にしてポジティブフィードバックをし続けてあげることなの

「軽め」と「重め」のギャップフィードバックの

けれども、私たちはそんなふうに一律にはとらえていません。ギャップフィードバックを「軽め」と「重め」の2つに分け、「軽め」のものを「気づきのギャップフィードバック」、「重め」のものを「改善要求のギャップフィードバック」と

「軽め」=気づきのギャップフィードバック  気づき(軽め) のギャップフィードバックは、相手が気づいていない問題を教えてあげることによって、自主的な改善を狙うものです。後述する私自身のボールペンのエピソードはこの気づき(軽め) のギャップフィードバックの典型例です。これは相手の要改善点に気がついたらタイムリーかつ頻繁に行い、またフィードバックする方もされる方も重く考えず、気軽に実施するべきものです。 「重め」=改善要求のギャップフィードバック  改善要求(重め) のギャップフィードバックは、見過ごすことのできない重大な問題や課題を本人に伝え、改善を求めるフィードバックです。たとえば、顧客へのいい加減な対応、同僚に対する無礼な振る舞い、組織内のルール無視、そういった重大な問題行動が見られる人にそのことを伝え、行動を改めてもらうケースがこれに当たり

「1対1」 で伝える。これは相手のプライドに配慮し、他者がいない場でフィードバックするということです。ギャップフィードバックは重くても軽くても、その場にいる他人に聞かれることで受け手のプライドは傷ついてしまいます。第三者のいる場は絶対に避けて、必ず「1対1」の場で実施して

ポジティブ9:ギャップ1ぐらいの比率で「フィードバックの濃度」を高め、適切な雰囲気をつくっておくことを忘れないで

⑤ Right Relationship(適切な関係性で)  ギャップフィードバックがよく効くかどうかは、伝え手・受け手双方の関係性に左右されます。職場内の上司・部下・同僚とは、日頃から信頼し尊敬し合える関係性を築いておくことが大切です。  たとえフィードバックの内容が正しくても、「あなたからは言われたくないよ」とか「あなたがそれ言えますか」と思われてしまうようでは、相手に伝わりません。本来は、受け手は「Who=誰が言ったのか」と「What=何を言ったのか」を切り分けて考えるべきであり、誰が言おうと内容に筋が通っていれば受け入れるべきなのですが、多くの人にとっては感情が邪魔をして切り分けることが難しいの

大切なことなので何度でも繰り返します。「相手の成長を願う気持ち」こそ、フィードバックの原点なの

よく部下に対する指導の基本は「怒る」ではなく「叱る」だと言われます。しかし、フィードバックにおいては、「叱る」でもなく、「気づかせる」ことが大切です。「薄々感じている問題」だからこそ、くどくど言わずとも、さらっと「気づく」手伝いをしてあげれば、それだけで十分なのです。  また、「気づきのフィードバック」は「軽く」やることが重要であり、「改善要求のフィードバック」のように「重く」伝えることは望ましくありません。  ボールペンの話も、顧客からの帰り道に立ち話的にさらっと伝えてくれたから、すっと入ってきました。後味もさわやかでした。このように軽い内容は、後日わざわざ時間を取って重々しく伝えるようなものではありませ

「フィードバックしてもいいですか?」と聞いてみる  ストレートに「フィードバックしてもいいですか?」と聞いてみるのも有効です。この質問をすることで、受け手は「これからフィードバックの対話が始まる」と心の準備をすることができます。また「はい、お願いします」と受け手が自ら言葉で発することによって、「自分がお願いします、と言ったからには受け入れなくちゃ」と受け入れのスイッチが入ります。  相手のコーチャビリティが低く、明示的に「フィードバックします」と言うと逆に身構えられてしまう可能性がある時はフィードバックという言葉を使うのをあえて避けるとよいでしょう。代わりに「少し気づいたことがあるんですが、聞いてみますか?」とか、「ちょっと助言できそうなことがあるんですが、聞いてみますか?」などの表現を使いながら相手に受け入れの準備をしてもらい

そこで私が「コーチャビリティとは何のことですか?」と聞き返すと、本社上司は「他者からの助言をちゃんと聞き入れる能力のことだよ」と教えてくれまし

コーチャブル(Coachable)な人  コーチャビリティが高い人、つまりコーチャブル(Coachable) な人は、平たく言えば素直な人です。他者からの助言を、スポンジのように素直に受け止めて自己の栄養分にし、早いペースで成長し、そして高い成果を上げます。そして高い成果に自信を得て、さらに成長するという好循環の波に乗ることができ

アンコーチャブル(Uncoachable)な人  これに対し、コーチャビリティが低い人、つまりアンコーチャブル(Uncoachable) な人は、平たく言えば頑固な人です。他者からの助言に耳を塞いでしまうため、成長が停滞しがちです。成長しないので、仕事の成果も頭打ちになります。そういう状況に本人は不満を感じますが、自分の力だけでは成長に限界があるため、次第に現実から逃避し始めます。その結果、停滞は解消されず、不満がますます募るという悪循環に陥ってしまい

コーチャブルな状態とは、成長意欲が忌避の気持ちを上回っている状態。つまり「成長意欲」>「忌避」 の状態

私自身、部下からちょくちょくギャップフィードバックを受けます。その中でもある本部長は年に数回ギャップフィードバックをくれます。その本部長との1on1では、毎回事前に議論すべき論点(アジェンダ) を送ってもらっているのですが、その論点の中に「フィードバック」と書かれていると、偉そうにフィードバックの本を書いている私ではありますが、多くの方と同様にストレスを感じます。でもストレスを感じるからといって逃げたりはしません。むしろ「耳の痛い話だろうけど、前向きに受け止めよう」と心のスイッチを入れるようにします。  フィードバックを受けた時のネガティブな反応として、私の場合、くよくよと自分を責めてしまう傾向があるのを知っているので、「フィードバックを受けたからといって過剰に落ち込む必要はない。これで一歩成長できるんだ」と自分に言い聞かせて落ち着くようにしています。  ちなみに、社長になってまでフィードバックされて気の毒だと思う読者の方もいらっしゃると思います。しかし、「フィードバックは私を成長させてくれる。裸の王様にならないように、部下からの 諫言 に素直であり続けよう」と心に誓っているので、気の毒どころか、恵まれているとすら思っています。 「自分は欠点のない人間だから、フィードバックは必要ない」と思っている経営者、管理職、ベテラン社員は要注意です。それは 傲慢 というものであり、せっかくの成長機会を自ら拒んでいると考えるべき

すべてを受け止める必要はあるのか  この章の 02 で、どのようにコーチャビリティを高めるかを見ていきます。ただその前に申し添えておきたいことがあります。ギャップフィードバックの受け手は、やみくもにすべての指摘や助言を受け入れる必要はなく、時には受け入れない権利もあるということ

私の体感値では、ギャップフィードバックのうち、「A:すんなり心に入ってくるもの」は2割ぐらい、「B:多少なりとも抵抗を感じるもの」が7割ぐらい、「C:事実や信条に反していて受け入れがたいもの」が1割ぐらいあるものです。  この「C:事実や信条に反していて受け入れがたいもの」まで、無理に受け入れなければならないのか? 大人として譲歩できるラインは譲歩するにしても、限界があるはずです。譲歩の限界を超えたものまで受け入れる必要はありません。  たとえば、「数字が第一」を信条とする上司から、「〇〇さんは顧客の満足感を気にしすぎです。そこは目をつぶって、とにかく数字を上げることに集中するように」というギャップフィードバックを受けたとします。  この場合、上司の信条に賛同するのであれば、助言として受け入れればいいでしょう。しかし、「数字よりも顧客満足が第一」という信条を大切にしており、自分としてはそこは譲れないと考えているのであれば、フィードバックを受け入れない選択肢もありです。反論すると話がこじれてしまうため、「ありがとうございます。努力します」など感謝の意だけ伝えて聞き流し、自分の信条を曲げずに引き続き最善を尽くせばいいのです。

信条にずれがあると、どこかで折り合えない日が来るかもしれません。その場合、上司の信条とのずれであれば部門異動を希望する、あるいは、もしも会社全体の信条とのずれが埋めようのないものなのであればキャリアを見つめ直して転職を検討するなど、自分が大切にしている信条を守り続けられる環境を探すべきでしょう。  また意外とよくあるのが事実誤認や伝え手の偏った主観によるフィードバックです。フィードバックする側が頭から決めつけてしまって、いくら説明しても誤認を受け入れてもらえない。そんな時も不毛な議論はどこかであきらめ、「ありがとうございます」と謝意を伝えて実際には聞き流すのも賢い対応と言える

自分から求める  ギャップフィードバックは、必ずしも相手が切り出したから聞くものではなく、時には自分から求めていくべきものです。フィードバックを伝えたくても伝えづらいと多くの人は思っています。そんな時、「今日のプレゼンのフィードバックをいただけませんか」など、自分から求めてみてください。  特に管理職の場合、部下からギャップフィードバックを受ける機会はどうしても少なくなりがちです。1on1ミーティングや面談などの機会をとらえて、部下に「私や部門の運営などに対して、もし気づいたことがあればフィードバックをもらえませんか?」などと尋ねる習慣をつけておくのがよいでしょ

管理職が部下に積極的にギャップフィードバックを求めることは、「うちの上司は耳の痛い話にも耳を傾けてくれる」との理解が広がり、部門における心理的安全性を高める副次的効果も得られます。これにより組織の風通しがよくなり、ギャップフィードバックだけでなく、チャレンジ精神が養われるなど、多くの前向きな効果を期待でき

漠然とではなくポイントを絞って聞く  フィードバックを求める時には、「今日は○○についてフィードバックしてほしい」という具合にポイントを絞って聞くことも有効です。たとえば顧客訪問の後で、「今回は資料に魂を込めた。資料のよい点と改善点を知りたい」と思っていたとします。それなのに、「今日のフィードバックをいただけますか?」と漠然と聞いてしまうと、「質問の受け答えで〇〇にするともっとよくなりますよ」など、自分の聞きたいポイントとは外れたフィードバックが来てしまいかねません。このようにフィードバックを受けたいポイントが明らかな時は「今日の資料についてフィードバックをいただけますか?」と具体的に聞いた方がよいでしょ

・課題や弱点を指摘されても「それは自分の〝成長余地〟だ」と言い聞かせる ・伝え手は「自分の成長を願っている」と自分に言い聞かせる ・フィードバックは「批判ではなく助言である」と

フィードバックに対してネガティブな心の反応が起こりそうになったら、相手は成長を願って助言してくれているのであり、批判しているわけではない、そう自分に言い聞かせることが大切です。自己暗示がうまくいけば、耳の痛さは大きくやわらぐはず

フィードバックというのは、「チームみんなで力を合わせて問題解決を目指していくために必要なコミュニケーションだ」という意識が大事だと私は思っています。受け手にそう思ってもらうためには、建設的な提案をすることも大切で、「それはわかりにくいです」とか「そういうのはダメです」などと一方的に決めつけるのではなく、「こうするといいと思うんだけど、どうでしょう」というふうに提案するように気をつけてい

私も以前、フィードバックし合う習慣がなく、社員が不満を抱えている会社で働いていましたが、その中でも意見を言うようにはしていました。意見を言わなくなってしまうと、会社に対する希望が失われてしまうような感じがしていたので、この職場で働く以上は、自分の考えはちゃんと伝えていこうと思っていました。  そうすると、当初は「生意気だ」とか「うるさい」などと冗談交じりに言われることもありましたが、時々は「天野さん、どう思う?」と意見を求められることもあって、やっぱり自分から発言していくのは大事だなと思いまし

ただ、仕事で成果を出していないのに自分勝手な発言ばかりしていると思われるとよくないので、前提として仕事はめちゃめちゃ頑張る。「生意気」と言われても吹っ飛ばすくらいの勢いで頑張って働いていました。だから、まず自分の業務を全うし、上司や周囲との関係性も構築しながら発言していくのがいいのかなと思っています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?