福山市・鞆の浦を巡る旅〜案内人ふじもんと共に〜
初めて訪れる、広島県福山市・鞆の浦
『岡山の後さぁ…福山、行かへん?』
「福山?(…どこやろう?)あぁ、いいよ!」
パートナーからの不意のお誘いに戸惑いつつ、とりあえずOKしたことで今回の旅が決定しました。
どうやら、福山に行くというのは、以下の投稿にパートナーがリアクションしたことがきっかけのようです。
こちらの投稿主の藤本和志さんこと"ふじもん"は、私にとっては京都時代にお世話になった先輩のような存在です。
大阪から京都に移ってきた当初、右も左もわからない状態の中で「京都移住計画」のお仕事をお手伝いさせていただくことがあり、そのとき以来のお付き合い。
そんな"ふじもん"が、彼の出身地である広島県福山市の案内人となり、「福山市の鞆の浦を巡る旅」というのが、今回の趣旨のようです。
ようやく、自分が何に参加しようとしているのかわかってきました。
ちなみに、私は企画の前日まで、岡山県美作市にて耕作放棄地の開拓と自然農畑づくりに取り組んでいるため、その後にめでたく参加できることとなりました。
2022年、夏「ともに、鞆の浦プロジェクト」
案内人ふじもんと合流〜福山駅から鞆の浦へ〜
前日の夜にJR福山駅に到着し、翌朝からの旅に備えます。
翌朝、9:30にふじもんと合流し、鞆の浦を巡る旅が始まりました。
まず、福山駅から30分ほどバスに乗り、最寄りのバス停まで移動します。
移動のお供はバスに乗る前にふじもんから手渡された「ともに、鞆の浦。オススメMAP」。マップ片手に、ふじもんにガイドしてもらいながらのバス移動となりました。
バスを降りると、そこは瀬戸内海の島々を見渡せる沿岸部でした。
この日の天気は快晴。気温も高く、まさに夏の日差しでしたが、潮風が吹き抜け、心地よい景色に癒されました。
さぁ、ここからまち歩きのスタートです。
まちのランドマーク・常夜灯をめざす
ここから、まずは鞆の浦のランドマークである常夜灯をめざすこととなりました。
そもそも、この鞆の浦という場所はTVドラマ「流星ワゴン」やアニメーション映画「崖の上のポニョ」といった作品の舞台にもなっており、常夜灯やまちの景色を眺めるために、観光客も訪れるといいます。
とはいえ、常夜灯までの道のりは入り組んだ路地にもなっているため、初めて訪れる方にはちょっとした迷路のように感じられるかもしれません。
町の路地を抜けると、お目当ての常夜灯が見えてきました。
鞆の浦を訪れる多くの観光客にとって、この常夜灯がゴール地点であり、この近所のカフェに入って、そして帰る。というのが定番のスタイルのようです。
しかし、今回の旅はここからがスタートでした。
鞆の浦の特産品「保命酒」を試飲する
「瀬戸内の養命酒」とも呼ばれる「保命酒」は、かの黒船来航時にペリー提督にも奉納されたという鞆の浦の特産品です。
保命酒を醸造・製造している酒蔵は、全国でも四蔵のみ。しかもその四蔵すべてが福山市鞆の浦に位置するといいます。
今回は、その一つ「入江豊三郎本店」にお伺いしました。
お酒と聞いたら黙っていられないのが、米農家の私です。
「入江さん、保命酒をつくるということは、この辺りは水が澄んでいてお酒にも使いやすいのでしょうか?」
『保命酒は、水ではなく焼酎を使うんですよ』
「え、そうなのですか!?」
そんな一幕もありつつ、保命酒を試飲させていただくことができました。
ただ、炎天下のまち歩きの後のため、さらに「鞆の浦サイダー」もいただき、水分補給に努めます。
さて、休憩も済み、次の目的地へ移動します。
次の予定は、鞆の浦に移住されてきた「コミュニティフリーランス」長田涼さんへのインタビューです。
東京から家族三人で鞆の浦への移住を決めたフリーランスのお話
入江豊三郎本店から歩いて移動し、鞆の浦のバス停近くのカフェ「SHION」にて「コミュニティフリーランス」長田涼さんのお話を伺います。
フリーランスとして活動しつつ、お子さんが生まれたことで移住先を検討し始めた長田さん。全国を巡りながら鞆の浦を選ばれた背景は、こちらの記事でも語られていました。
移住の決め手の一つに「移住者である自分が地域に関わる余白があるかどうか?」というお話もありました。
自分がここに移住した時に、地域の皆さんのリソースや価値に加え、自分が関わることで何を生み出していけるか?
精力的に自分自身を鞆の浦に投下していく長田さんのエネルギーを感じつつ、次の予定がギリギリになるまで盛り上がってしまいました。
後ろ髪を引かれつつ、SHIONを後にすることになりました。
なお、長田さん自身の感じた、鞆の浦に暮らしてみての魅力については、以下の記事でも紹介されています。
次の目的地はお昼ご飯、そして「NIPPONIA鞆 港町」です。
お食事処「おてび」と「お手火」
この日のお昼ご飯は、ふじもん行きつけのお店「おてび」にて取ることになりました。
趣のある構えですが、屋根瓦の上に見慣れない松明のようなものが飾られています。
調べてみると、「おてび」という店名の由来は、日本三大火祭りのひとつである、「沼名前神社」の行事・「お手火神事」にちなんだものとのこと。
屋根に飾ったものよりも遥かに大きい、重さ約200kg長さ約4mの燃え盛る大松明を鞆の青年が担ぎ、神社への階段を練り上がるという神事だそうです。
私の地元も古い風習の残る地域ですが、このお祭りに関しては完全に度肝を抜かれてしまいました。
さて、腹ごしらえが済んだら、次は「NIPPONIA鞆 港町」の鳥井践さんにお話を伺います。
鞆の浦への移住と、NIPPONIA HOTEL運営
NIPPONIA HOTELといえば、我が故郷の伊賀にも展開しているホテルグループ。
これまでにも噂には聞いていたものの、詳しくお話を聞くことは今回が初めてでした。
現在、「NIPPONIA鞆 港町」を家守(ホテルマネージャー)として運営する鳥井践さんは、この鞆の浦でのホテル立ち上げにご夫婦で取り組むこととなり、それがきっかけで2020年に移住されてきたとのことでした。
それまでに鞆の浦についてはまったく知らなかったと仰る鳥井さんですが、先述の長田さんが移住される際にも相談相手となる等、地域のキーパーソンとして認知されつつある存在です。
ホテル運営そのものについて、歴史的な建造物の扱いについて、地域の強みと課題について、また、ひとりの移住者としての体験や今後について、旅の一行からは次々と質問が飛び出しました。
ホテル内装の見学もさせていただいた後、町の坂の上の医王寺までの道案内も快く買って出てくれました。
徒歩15分ほどの道のりを石段を登りながら進むと、この町を一望できる医王寺に辿り着きました。
朝9:30からここまででほぼ一日を通して散策してきた鞆の浦の旅も、これにて一段落。
案内してくださった鳥井さんにも別れを告げ、一行はバスに乗ってJR福山駅へと戻ります。
この夕方以降の福山駅でも、案内人ふじもんによるまた違った企画と新たな出会いがありました。
「ひと旅酒場in福山-1時間店長-」
「ひと旅のごちそう」とは?
夕方〜夜の企画については、ふじもんはこのような投稿をしていたようです。
なるほど、どうやらふじもんが1日店長を務める酒場に参加できるそうです。
ただ、企画タイトルにもある「ひと旅のごちそう」とは何だろう?
……調べてみました。
詳しくは上記の記事をご覧いただきたいですが、ふじもん自身がこれまでご縁のあった地域の食材、ひと、ものを商品開発や企画を掛け合わせることで、新たな関係を紡いでいく入り口づくりをしよう、という取り組みのようです。
自分が何に参加しようとしているのか、ようやく頭が追いついてきました。
AREA INN FUSHIMICHOと伏見町再開発
会場となったのはAREA INN FUSHIMICHO。JR福山駅すぐ近くの再開発が進む伏見町というエリアのコミュニティスペースです。
この伏見町。元々は大手百貨店主導での再開発計画が進んでいたそうですが、現在は地域の事業者が新たに商店会を立ち上げて独自の取り組みを始めているそうです。
AREA INN FUSHIMICHOの経営母体もまた、ゲストハウス運営のほか、コワーキングスペース、映画館、飲食店およびサウナの運営を行う等、幅広い事業を行いながら地域づくりに貢献されています。
ちなみに、伏見町の名前の由来は、福山城に現存し、国重要文化財指定されている伏見城(京都府)から移築された伏見櫓だそうです。
この、伏見町をご案内いただくのがAREA INN FUSHIMICHOのマネージャー・壇上真聡さんでした。
まず、旅の一行はチェックインを済ませて荷物を置き、身軽になろうということで手続きを進めました。
その後、部屋を案内していただくことになりましたが、男女のドミトリーおよび個室は町中のビルに点在しており、AREA INNからも移動となります。
この部屋案内の道すがら、壇上さんには町についても案内いただくこととなりました。
さて、伏見町まち歩きからAREA INNに戻ると、保命酒カクテルで乾杯です。
丸一日歩き通した身体に保命酒が染みました。
社会の状況もあり、長時間の滞在とはなりませんでしたが、一日の疲れも癒されるような和やかな時間を過ごすことができました。
旅を終えて、地元・伊賀との関わり方を考える
まず、こうしてまとめてみるとなかなか濃い旅だったんだなぁ……という率直な感想が出てきました。
一方で、
自分はふじもんのように地元のことについて知っているだろうか?
友人たちを招いて楽しめる、回れるルートを持っているだろうか?
と自分に問いかけたくなります。
私は移住者というより、京都府から地元・三重県伊賀市に戻ったUターン者と言えます。
実家の米農家を兼業しつつ、耕作放棄地の開墾と畑や果樹園としての再活用の他、稲作の体験プログラム等を開催したりしながら西日本を中心にあちこち飛び回っており、ありがたいことに地域間を飛び回りながら各地の良さを見聞きできる立場でもあります。
一方、例えば今回のふじもんのように地元の特産品を知っているか?と問われたら、そこまでアンテナを広く張れていません。(自分の育てる米に関しては、ウンチクの一つや二つは語ることはできますが)
一つ、米の文脈で誇れるものがあるとすれば、それは実家にも程近い酒造さん・大田酒造の存在でしょうか。
三重県伊賀市はかつて琵琶湖の底に沈んでいた土地(古琵琶湖層)であり、現在の琵琶湖はそこから北上して生まれました。
その時代の有機物の豊かな体積土が米の美味しさに繋がっているのですが、もうひとつ欠かせないのが「水の質」です。
サンガリアが「伊賀の天然水」として紹介しているように、淀川水系の原流域であるこの地の水は、米にとっても日本酒にとっても不可欠なものであり、私にとっても誇りです。
この水を活用した酒蔵の大田酒造は、国内外の賞を受賞している他、今年はまさかのタツノコプロとコラボする等、精力的な商品開発にも取り組んでいます。
もちろん、ここ以外にも魅力的な場所や商品もあるはず!
今回の旅のように良いきっかけをくださったふじもんと、各地でお会いした皆さんにお礼申し上げたいです。
福山市にも、また行きたいですね〜。
最後に、ふじもんがどのように「鞆の浦」と関わってきたのか?等については、以下の記事に詳細が載っています。
何より、案内人のふじもんの人柄が「良いんだよなぁ」と感じたので、ここまで読み進めてくださった方は是非一度覗いてみてください。