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ゼロから始める伊賀の米づくり4:百姓をするとは、地域の信頼を受け継ぐということ

「百姓をする(父から継いで米作りをする)」と決めてから、天気予報に敏感になりました。

数日後に雨の予報が出ていたある日、天気が良いうちに実家へ戻り、単身、トラクターを運転し、耕すことに決めると一路、伊賀市へ。

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というのも、父の死後、実家の田を取り巻く様々な声を祖母や人伝に聞いていたのです。

「お父さんが亡くなって大変でしょう?田んぼはどうするの?」って尋ねてきてくれるんや、近所の人は。私も年寄りやし、土地やら何やらをどうするとは、私からは、よう言えん。

俺は、勝(父)に最後に田んぼを手伝ってくれ、と頼まれた。昔からの付き合いやし、断るつもりもなかった。ただ、田んぼを手伝うにも相場ってもんがある。トラクターに乗ってお前の家の田んぼに入ると、周りからの目もあってな…。

そもそも、見渡す限りの田園風景で、誰が何をやっているかなど、一目瞭然。地域の人々は日々、遠くから近くから「あの田んぼは、どうなるのか?」と見ているのでした。

そういった話を聞かされたら、奮起しないわけにはいきません。

まずは、長靴を履いて田んぼに入って石を拾い、トラクターの刃を傷つけないよう注意。

次に、トラクターに灯油を入れ、エンジンをかけていざ出発!田に水を入れる前の、何度目かの耕起を。

と、ここでトラブルが発生!

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エンジンを一度切って休憩をしていたのですが、キーを何度捻ってもエンジンがかからない…!

ギアはニュートラルになっているし、刃のローターも同様。燃料切れにもなっていなければ、ブレーキもきっちり踏み込んでいる。しかし、エンジンがかからない。

田んぼの真ん中で立ち往生である。助けを求めようにも、平日昼間のど田舎には、人っ子ひとりいない。

YoutubeやGoogleの力を借りて解決策を探るも、無情に時間が過ぎていく…。

「(まずい…。エンジンが掛かってくれなければ、トラクターを放置して京都へ仕事に?そんなわけには…)」

と、そんな考えが頭を過ぎると、助け舟が!

実家のトラクターの2倍くらい巨大なトラクターのエンジン音が。

急いで、駆け寄る!

「すいません〜!!!ちょっとお時間良いですか!!?」

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巨大なトラクターから降りてきたのは、自分の背丈の半分くらいの小柄なおっちゃんでした。

「あれ?君、雄貴くんか?大変やったなぁ、今回は

後に祖母の話を聞くに、その小柄なおっちゃんは、この地域でも最高齢で田んぼを続けているという長老的な存在でした。父の葬儀にも見舞ってくれていました。

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「今日、休みか?平日、仕事もあるやろうに大変やろう?」

『今、どうにか京都とこちらの生活を成り立たせようとしているところです…。実家の祖母や母も放って置けないですし、父の思いもあるので。』

「そうか。気になっては、いたんや。個人的な考えやけど、一度土地を手放したら、そう簡単には返ってこないぞ。先祖代々受け継いできた土地や家や…。大事にしていった方が良いと思うわ」

『自分も長男として生まれましたし、やっぱり大事にしていきたいんですよね…。簡単なことではないとは、わかってはいるつもりですが…。』

「焦って決めることはない。今年のうちは他の人にも手伝ってもらいながら、そうして準備を整えていったらええんやないか?俺の方も時間が会ったら、鋤いておいてやったってええしな!」

『いやいや!そこまで甘えるわけには…!』

「君のところの婆さんと俺は同い年。この辺のみんな、兄弟みたいなモンや。…まぁ、難しかったら言ってきな?」

『ありがとうございます…!』

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長老の話も聞いたその後、なぜか何事もなかったかのようにエンジンがかかり(電気系統の接触の具合だった様子)、無事に鋤き終えることができました。

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たった一度の帰省で、田んぼを取り巻いてこんなにも多くの人の思いや話を聞くことになるとは当初は想定しておらず…。

改めて、「百姓をするとは、地域の信頼を受け継ぐということ」ということを意識させられる時間でした。

父は、息子の自分の知らないところで、こんなにも多くの人の期待や信頼に応えていたのか…。

焦らず着実に、生活を作っていこう。さぁ…次は、田植え機のエンジンの確認!そして、手伝ってくれてるおっちゃんとの話し合い!

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