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【読書感想】倫理学の実践の書

こんにちは、Yukiです。

最近になって、再び暑い日が続いています。僕の住んでいるところでは、8月の初期の頃は、涼しい日があったのですが、最近は外に出るのも億劫になるほどです。

自身の健康を守るように気をつけたいところです。

さて今回ご紹介する本は、平尾昌宏さんの『ふだんづかいの倫理学』です。

時々、衝撃を与えてくれるような本と出会うことがあります。僕の場合、本書がまさにその類いの本です。

本の内容

本書は、倫理学の入門書です。しかし、倫理学の用語を解説する入門書ではありません。タイトルにもあるように「ふだんづかい」が出来るように、倫理学を解説した本です。

僕たちは、普段あまり意識しませんが、生きている以上、倫理的・道徳的な判断を迫られるときがあります。例えば、悪友からモノを盗んでこい、さもなくば、ぶっ飛ばす、と言われたとき。会社の不正を目の当たりにしてしまったとき。

自分が当事者でなくとも、殺人を犯した犯人が判決を言い渡され、思いのほか軽かったとき。税金を誰がどのように納めるべきか他の人が話していたとき。

このように、僕たちの周りには、倫理的・道徳的な事柄が溢れています。そうした事柄に対して、自分で考えることが出来るようになる。これが「ふだんづかい」の意味です。

まとめれば、読者が普段の倫理的・道徳的な事柄に出会ったときに、自分で考えて判断できるようにするのが本書です。

さて、ふだんづかいと言っても、こんな疑問を抱くのではないでしょうか?

自分で考えて判断すると言うけれど、そもそも倫理とか道徳って人それぞれじゃない?だから対立するし。

確かに、世の中を見てみると、対立は彼方此方で起きています。そして互いに「こちらが正義だ!」と主張します。そのため、まるで倫理や正義は複数あるかのようにみえます。

そこで、本書では、倫理の中身について丁寧に紐解いていきます。具体的には、正義とは何か自由とは何か愛とは何か、です。詳しくは本書に譲りますが、これらの考察をすることで、中身というかそれぞれの正体は1つで、それを実現するための手段が異なっている、ということが明らかになります。つまり、いくつかパターンがあると言うことです。

このように本書では、身近に溢れる倫理的な事柄の整理を行い、それを用いて、現実であり得る事例に当てはめて考えていきます。

今までに無かったタイプの入門書

本書の特徴は、本の内容を日常に落とし込むということが念頭に置かれている点です。著者は、これまでの倫理学の入門書について、倫理っぽいことを述べているか、かなり専門的な内容だったと述べています。それらとは異なり、本書は倫理学の基本を知った上で、現実に応用する形式が採用されています。

僕たちは、倫理学と聞くと、机上の空論というか、あまり関係のないものと考えがちです。しかし、全体を通じて「そうじゃないんだ」ということが分かります。むしろずっと身近にある。ただ身近にありすぎて、意識しないと見えてこない。それを平易な言葉と例で改めて意識させてくれるのが本書です。

面白かったのは、正義についての考察です。先にも書いたように、僕たちは正義の形は人の数だけあるように考えます。例えば、A国とB国が対立し、戦闘しているとします。すると、両国が「こちらが正義だ!」と主張します。この例に限らず、こうしたことはよく見かけます。

これをどのように考えたら良いか。著者は、正義の原理は1つであると言います。そして、それを実現する方法はいくつかあると。このように考えれば、納得できます。つまり対立しているのは、正義そのものではなく、正義を実現する方法だったわけです。

このように整理されることで、複雑に絡まり合っていた糸が解けるように、スッキリとした見通しが得られます。それを提供してくれる点に本書の意義があると思います。

終りに

今回は、平尾昌宏さんの『ふだんづかいの倫理学』をご紹介しました。本書を読めば何かしら得るものがあると思います。気になった方は是非とも読んでみてください。

ここまで読んでいただきありがとうございました!


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