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立ち退き要求は突然に。

ことの幕開けは職場の昼休み、妹からのLINE。

「お姉ちゃん、私たち家を出て行かなきゃならなくなっちゃった」

ンン~~~~~???待て待て待てェ、結論なのかもしれないがそれだけ言われても困る。
ホワイ??ワロハプン?DO YOU COURT ON???

まあ私はこのくらいではあせらない。なぜなら姉だから。ここは冷静に移行。いたっい何があったのかをい王都からきっこすんpだ。

とりあえずもう少し詳しい状況を教えてくれとLINEを返すと、ほどなくして一枚の書類の写メが送られてきた。

概要はこうである。あまりにも建物の老朽化が激しいために、つきましては半年後の今年の年末までにご退去いただきたく・・・。後日業者とともにお伺いいたします、と。

ああ~いや、、まあ、なあ…うん。 

確かに台風時は全窓施錠にも関わらず風が吹き荒れたり、風呂に向かうドアと壁に隙間があってほぼ露天風呂だったり、壁に肘ぶつけたら凹んだり、水道の管に穴が開いて、シンク下から流しの水が溢れ出したりと思い当たる節は山ほどあった。

遊びに来た友達が「なんかパースおかしくない?」と言うから試しに床にリンゴ置いてみたら転がったし。

むしろ思い当たる節しかないじゃないこの状況。
きっと頭のどこかではわかっていたにちがいない。

とはいえ、まさかこの年(確か25)で退去勧告に遭うとは。別に古くから住んでるとかでもないのに。
しかもこの日なんと、上司に退職届を叩きつけた翌日のことである。どういうタイミングだ。 

順番逆だったら私退職できてないかもくらいは思ったことある。

退去勧告に遭うと、立ち退きに関する費用の金額や保証の交渉をするのは居住者(乙)本人である。しかも相手はたいてい貸主(甲)ではなく雇われた専門の業者。

お役に立てるかは存じませぬが、これから立ち退き要求を受け取られる際のご参考になればと。いやどういう状況だよ。でも、人生何が起こるかわかりませぬぞ。こんなふうに。

ことの顛末だけ知りたい方は途中のハウツーや各種手続きはお読み飛ばし下され~。

立ち退き要求の理由

立ち退きの理由については様々あり、正当な理由がなければ認められない。

・建て替えて資産価値を高めたい
・家賃滞納する入居者がいて困っている
・建物を売却したい
・老朽化や耐震性のなさ  などなど

入居者に問題がある場合は少ないので、立ち退きに応じるかどうかも含めて考えると良いと思う。うちの場合は老朽化、しかもかなり身に迫った脅威だったために承諾の方向を取った。

また、その申し入れは期間満了の6か月前までに行われなければならないとされている。不動産屋の都合で年末を期限とされる場合が多く、うちもそうだった。年末に引っ越しなんて勘弁してくれ!!って感じだったし、仕事の繁忙期でもあったので、交渉して3月末までに延ばしてもらった。

言ってみるものである。
ほぼ泣き落とし。

立ち退き料の交渉

立ち退くことを承諾した場合は、立ち退きにかかる諸費用を交渉する。
あ、私たちは穏便に事が進んだから自分たちでやったけれど、トラブルになりそう、正当な理由がないなど悪質な場合は第三者に介入してもらった方がいいかもしれない。

あくまでうちの場合の話である。

大きく分けると、交渉できる対象は以下のものである。

①引っ越しにかかる費用
②敷金・礼金などの返金
③ネット環境や住居にかけていた保険の解約料
④引っ越し先の物件の賃料の差額の保証

①、②はほぼ応じてもらえるはずだ。

③は、例えばインターネットの解約料などである。2年契約の火災保険を更新してまだ一年しかたっていない場合、残りの一年分返してもらうなども正当に請求できる。取られるときは大概痛手な更新料なんかも同様に返ってくる可能性がある、言ってみよう!

④は、新しい家の家賃が今の場所よりも高かった場合、だいたい一年分の差額を請求できることが多い。あまりに差が激しい場合は認められないので、今の家賃+1~2割と考えておくとよいと思う。

また、探しても良い物件が見つからない場合、条件を伝えて探してもらうこともできた。それくらいはしてくれよって感じだわな。年末は回避したにせよ年度末だぞ。

基本的に立ち退き交渉はこちらから請求しなければ向こうからは絶対に言ってくれない。だから、家にかけているお金はすべて書き出して、請求できるものを整理する必要がある。

場合によっては立ち退きによって生じた精神的ストレスへの補償なんかもあるらしい。マンションなどの場合は、貯金に影響してきたりもするのだろうし。

立ち退きが自身に及ぼす影響をきちんと考えて、自分へのダメージをなるべく少なくするといい。

実際の交渉

提示する交渉内容が決まったら、いざ業者と対面である。

冷静に、落ち着いて話をしよう。
相手の言うままを受け入れるのではなく、あくまで自分の主張を通す強気の姿勢で。

その場でそれでよいと言うのではなく、交渉した内容を一度持ち帰らせてもらうのが良い。きちんと考え、穴がないかを確かめたうえで承諾しよう。

引っ越しともろもろの手続き

ここからは普通の引っ越しと変わらない。

が、立ち退き料は全額一度にもらえることもあるらしいが、うちの場合は領収書と引き換えだったので、引っ越しやそれにかかるお金のかかる作業の領収書はとっておくこと。

おつかれさまでした。

遊布野家の突然の立ち退き要求の結末

さて我が家のことの顛末である。背も小さく女だしこんな見た目だし(童顔)、常日頃からナメられることの多い遊布野・姉。

どっちかって言うと妹の方がナメられない。
顔取り替えてほしい。

ここではそれがもらえる金の額に直結してしまうため、自分が損をしないために付け焼き刃ながらものすごく勉強した。

そして相手の業者に言わせしめた。

「も…もしかして同業者の方ですか」

勝ったぜ。

いえっ和菓子屋です!!を飲み込んで、「詳しい人が知人におりまして」と言っておく。
でもこれは相手にとっても幸いだったらしい。聞くと、借主の方が優位なのをいいことに「300万円寄越せ!!」など法外な請求をしてくる人もいるのだとか。

確かにそういうのを相手にしていたら、突然紙を出してきて、リストアップされた立ち退き請求額の内訳を示されたら逆に面食らうのかもしれない。

ので、我が家の交渉は滞りなく、ほぼこちらの要求通りに進んだ。

ただ一つ通らなかったことがある。
前の家はもともとは木枠に昭和ガラスの嵌ったドアが玄関ドアだった。カギは昔の小学校でよく見たくるくる回す奴。

さすがに年頃の女の子がひとりで(妹が来る前)住むにはあまりにセキュリティが、ということで、私が自費で修理・交換していたのだ。20万くらいかかったから少しでも戻ってきたらなあと思ったのだがダメだった。ま、しかたない。
 
みなさん、賃貸の改造・リフォームは計画的にね!!

そして中でも触れた精神的ストレスへの補償だが、正直言うとほしかった。年末だし。仕事辞めるって言った直後だったし。
でもそこはあえて言いださなかった。なぜか。

引っ越し先も同じ大家さんだったからだった。

ほとんど同じ間取りの貸家群が隣にもう一並びあったのだ。流石にかわいそうだと思ってくれたと言うことにしておくが、そちらは耐震工事が済んでいて、ちょうどひと部屋空いているからということになり、貸してもらえることになったのだった。

当然敷金は前の家のをスライド、礼金は不要である。家賃も据え置いてもらった。そして、前に住んでいたイタリアからの留学生さんに家具を貸してあげていたらしく、欲しいのがあったら使っていいと言うから、遠慮なく好きなものを残してもらった。

そんな感じで、遊布野家姉妹はその半年後、超短距離の引っ越しをすることになる。

その距離なんと約30メートル。

それでも引っ越しトラック呼んだけどね!だってお金もらえるし!

一週間くらい前からどちらの家も入居可能にしてもらい(電気ガスは通ってない)細かいものは1週間前くらいから自分たちでアリのように運んだ。まあまあ他ではない経験をしているだろう。

そして、前の家でお隣に住んでいたおばあちゃんが、新しい家の隣のご夫婦に「あの子たちをよろしく」と申し送りしてくれたおかげで、今日に至るまで優しい近所づきあいを続けることができている遊布野姉妹だ。

うちのような場合は少ないかもしれないが、誰かのお役に立てば、青天の霹靂のように「住む場所がなくなった」という連絡を受けて青ざめた経験も無駄ではなかったというものである。

事実、遊布野家史上大事件ベスト2であった。

ベストワンは…またいつかの機会に。


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