乳製品なしで骨を強くする。【基本編】
「カルシウムが豊富な食材は?」
と聞かれたら、
牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品や、小魚や桜海老など、動物由来の食品ばかりが頭に浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
菜食は乳製品を食べないし、小魚とかも食べないし、
「子供の背が伸びなかったらどうしよう。」
「老後骨粗しょう症になったらどうしよう。」
と不安に感じる方も多いと思います。
さらに、骨の強度を下げてしまう生活習慣があったり、カルシウム以外にも骨の健康のために気をつけないといけない栄養素があったり、カルシウムを摂っているからといって、丈夫な骨を保てるというわけでもありません。
なので今回は、菜食でカルシウムをバッチリ摂りつつ、骨の健康もしっかりと保つ方法をシリーズ化してご紹介していきたいと思います。
今回の記事は、カルシウム入門編ということで、全文無料で公開しておりますので、この機会にぜひ沢山知識を持って帰っちゃってください!
では、早速いきましょう。
今回の目次はこちら。
カルシウムとは
カルシウムの一番有名な役割は
骨や歯を作ったり、そのメンテナンスに使われること。
また、
心臓や神経系が機能するためにもなくてはならないミネラルでもあります。
他にも
・血が凝固するのを助けたり
・筋肉を緩ませるお手伝いをしたり
・細胞の代謝を調節したり
働き者の栄養素です。
カルシウムをちゃんと摂らないとどうなる?
カルシウムが十分に摂れていないと、血中のカルシウム量が下がってしまい、理想の血中カルシウム量にするために骨からカルシウムを取って調節しようとします。
このカルシウムの摂取量が低い状態が続くと、どんどん骨がスカスカになっていき、骨折しやすくなる骨の病気、「骨粗しょう症」になってしまいます。
そして、
骨粗しょう症になると骨の強度が減ってしまい、つまずいて手や肘をついたり、くしゃみをしたりする、わずかな衝撃で骨折してしまうことがあります。
がんや脳卒中、心筋梗塞のように、この病気が原因で命を落とすということはありませんが、骨粗しょう症による骨折によって、車椅子生活になったり、介護が必要になってしまう人も少なくありません。
骨粗しょう症は痛みなどの自覚症状がないことが多いため、今のうちから意識的に骨の強度を高める生活をすることが大切です。
カルシウムの摂取基準
日本では、男性で18−29歳の方は1日800mg、30−74歳の方は1日750mg。
女性で18-74歳の方は1日650mgを摂取するように言われています。
こちらの表に厚生労働大臣が定めた「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書をもとに、年齢、性別、ライフステージ別の摂取基準をまとめました。
黄色く塗られている数値を目指すようにしましょう。
気をつけないといけない人は誰?
私たちの体内では、骨代謝と言って、骨は骨形成(新しい骨を作る)と骨吸収(古い骨を破壊する)を繰り返すことで常に作り替えられています。(肌のターンオーバーと似た感じです。)
骨代謝:
骨形成(新しい骨を作る)⇄骨吸収(古い骨を破壊する)
30歳くらいまでは骨代謝のバランスが骨を作る側に傾いているため、骨密度が上がり続けるのですが、30歳以降は骨の形成と破壊のバランスが均衡になり、いずれ破壊側に傾くようになってしまいます。
その結果として、
骨密度が下がっていき、若い時にしっかりと骨密度を上げられなかった人は骨粗しょう症になってしまうことがあります。
骨粗しょう症を予防するには、
・30歳までにできる限り骨密度を食事や生活習慣を通して上げる
・30歳以降は骨密度の低下を防ぐ選択をする
という2つを実行することが大切。(次の記事でお話ししていきます。)
つまり、カルシウムは全ての年齢層の人が意識して摂りたい栄養素です。
でも特に気をつけたいのは女性。
実は約80%の骨粗しょう症のケースが女性で、特に更年期女性はリスクが最も高いと言われています。
この理由は、バランスのとれた骨代謝にはエストロゲンが深く関係しているから。
閉経後の更年期に入った女性は、エストロゲンの量が低下します。
エストロゲンが減ってしまうと骨を破壊する細胞が活発化し、骨の密度がどんどん落ちていってしまうので、更年期女性は骨粗しょう症になってしまうリスクが高いと言われています。
閉経
↓
エストロゲン量の低下
↓
骨を破壊する細胞が活発化
↓
骨代謝が骨吸収側に傾く
↓
骨密度下がる
↓
骨粗しょう症リスク上がる
乳製品を食べても骨は強くならない?
乳製品は現代人のカルシウム摂取源として知られていますが、世界各地で牛乳が飲めるようになったのは、わりと最近のこと。
それまでは乳製品を食べていなかったにもかかわらず、1日の食事からおよそ1500−3000mg のカルシウムを摂れていた人口が世界各地にいたと言われています。
旧石器時代は乳製品などはなく、主に野生の葉物野菜から平均2000mgものカルシウムを摂っていたそうです。(ちなみに日本で推奨されている成人の摂取基準は650-800mgです。)
なぜ当時これだけの量のカルシウムを乳製品なしで摂れていたのかというと、
昔の作物には沢山のミネラルが含まれていたから
です。
現代の果物や多くの農作物は、栄養価よりも甘さや食感、見た目、食べやすさ、育てやすさなどを優先して品種改良されてきたため、私たちの祖先が食べてきた農作物よりもずっとずっとカルシウムの含有量が低いんです。
だから農作物だけではカルシウムが摂りにくいということで乳製品が注目され始めたんですね。
でも実は、
最もカルシウム(と乳製品)を摂取した人口の方が、それよりもずっとカルシウムと乳製品の摂取量が低かった人口よりも、骨粗しょう症の発症率が高かった
という研究結果も出ていて、乳製品がカルシウムを沢山含んでいるからと言って、骨の健康を保つのにいい食品というわけでもないのです。
この現象を説明する理由としてよく言われるのが
動物性タンパク質には血液の酸性度を上げてしまうアミノ酸が豊富に含まれていて、血液のpHバランスを理想値に戻すために骨から血液へカルシウムを引き出し、カルシウムが役目を終えたらそのあとは尿と一緒に体外へ出てしまう
ということ。
これが原因とはまだ断言はできないのですが、実際に動物性タンパク質をより多く食べている人は植物性タンパク質を多く食べている人よりも、尿中のカルシウムが多かったという研究結果も多数出ているので、、、
信じるか信じないかはあなた次第です。(どこかで聞いたことあるこのフレーズ。)
でも統計でも乳製品の摂取量と骨粗しょう症の発症率が比例していたり、カルシウムの摂取量は多いのに骨粗しょう症の発症例も多い人口がいるってなると説得力はありますよね。
あと、メカニズムは解明されていませんが、
動物性タンパク質を沢山食べると、カルシウムは一旦吸収されるが、その多くが骨には蓄えられず、そのまま尿に中に排出される
という研究結果も出ております。
また、乳製品に含まれる乳糖は大人の人間はちゃんと消化できない人が多く、「本当は人間には適した食品ではないのではないか」とも言われています。
実はあなたも乳糖不耐症?
乳糖不耐症という言葉をご存知でしょうか?
乳糖不耐症の人は、乳糖を分解するラクターゼという酵素が体内で十分に作られないのに乳糖を摂取することで、乳糖がちゃんと消化されず、様々な不調を感じます。
具体的には
・腹痛
・下痢
・ガス
・お腹の張り
などの消化器系の症状を引き起こしたり、
・頭痛
・めまい
・関節痛
・口内炎
・吹き出物
・肌荒れ
などの乳糖不耐症とは一見関係のないような消化器系以外の症状が出ることもあります。
「乳製品をやめたら肌の調子が良くなった。」
という話を耳にしたことがあるかもしれませんが、これは乳製品に含まれる有害物質やホルモン、動物性脂肪、カゼインなどが関係している他にも、その人が実は乳糖不耐症だったからということも考えられます。
人間の赤ちゃんは乳糖不耐症なことがほとんどなく、この症状を持つのは大人がほとんどなのですが、その理由は
人間の赤ちゃんは母乳に含まれる乳糖をちゃんと消化吸収できるようにラクターゼをしっかりと体内で作ることができるが、成長するにつれて体内でラクターゼを作る量が減り、4歳になる頃には乳糖不耐症の症状が出る子も出始める
ということ。
ちなみに、日本人はもともと「乳製品を飲める」遺伝形態の人がとても少なく、ほとんどの日本人が、程度の差はありながらも乳糖不耐症だと言われています。
菜食をしている人が気をつけるべきポイント
カルシウムが沢山含まれてる乳製品を取り入れても骨が強くなるわけでもないけど、カルシウムが少ない現代の植物性の食品だけで骨の健康を保たなきゃいけないのも、なんだか大丈夫なのかなって思いますよね。
ご安心ください。次の記事から菜食で骨を健康的に保つために知っておきたいポイントをお話ししていきます。
次の記事からの主なトピックはこちら。
①カルシウム吸収率の上げ方
②丈夫な骨を作るために必要なカルシウム以外の栄養素
③骨を強くする生活習慣
④骨をもろくする生活習慣
⑤菜食のカルシウム摂取源
今あるあなたの体は一生もの。
今回のシリーズでもしっかり学んで、自分の体を正しく大切にケアできる知識をつけていきましょう♡
より詳しい情報をご希望の方や個人的な質問・ご相談のある方は菜食栄養学セミナーにてお伺いいたします☺︎
ここまで読んでくださりありがとうございました!
また次の記事でお会いしましょう。
I hope you are having a wonderful morning, noon, evening or night, whenever you are reading this.
Lots of love,
Yuka
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