さあ、みんな大好き「タンパク質」の話をしましょうか。【基本・質編】
さて、皆さんがきっと一番気にしていると言っても過言ではない栄養素、タンパク質について思いっきり語る時間がやって参りました。実際のところ、皆さんはタンパク質についてどれくらい知っているのでしょうか。(気になる。)
私は菜食栄養学について発信しているので、もちろん植物性タンパク質のことについてお話ししていきますが、菜食をしていない方にとっても大切な情報を今回も盛り込んでおります。
タンパク質はお肉から摂るというイメージが強いと思いますが、実は世界的に見ると摂取しているタンパク質の65%は植物性の食品から来ているんです。(穀物から47%、豆類・ナッツ・シードから8%、フルーツから1%、そして野菜から9%という感じに。)
菜食をする際に、もしフルーツばかり食べる食生活を送っていたり、カロリー制限をしていたり、ジャンクフードばかり食べていたり、豆類を食べていないとタンパク質不足になる可能性はありますが、バランスの取れた菜食は、タンパク質バッチリ摂れます。
実際、私菜食始めてから筋肉量増えました💪
でも、
「タンパク質の量は取れてたとしても、タンパク質の質は低いでしょ?」
とか、
「バランスの取れた食事って、実際どういう食事なの?」
とか、
色々な不信感や疑問をお持ちの方も多いと思います。
なので今回も、みなさんがよりヘルシーな食生活を送るために必要な基礎知識と情報を、惜しみなく書き綴っていきたいと思います。
今回はいつもと違ってタンパク質をちゃんと摂取するためや健康を促進するための知識だけではなく、世間のいろいろなタンパク質に関する情報を正しく受け取り、マーケティング戦略の被害者にならないための情報も一緒にお届けできたらなと思います☝︎
では、早速いきましょう。
今回の目次はこちら。
アミノ酸とタンパク質について
アミノ酸はタンパク質の構成要素で、炭素、水素、酸素、窒素によりできていて、タンパク質はアミノ酸が複雑に組み合わさることによってできています。
アミノ酸は20種類あり、その内9つが体内では作ることのできない必須アミノ酸。
必須アミノ酸:体内で合成することができないため、食べ物から摂らないといけないアミノ酸のこと。
覚える必要はないですが、必須アミノ酸は、フェニルアラニン、バリン、スレオニン、トリプトファン、イソロイシン、メチオニン、リジン、ヒスチジン、ロイシンの9つです。必須アミノ酸は植物性食品にも動物性食品にも含まれています。
タンパク質は体内に入るとタンパク質は分解されてアミノ酸として吸収されて、また色々なアミノ酸を組み合わせて体に必要なタンパク質を作ります。なんと、体内のタンパク質は数万種類にも分類され、それぞれ違う役割を持っています。
タンパク質の体内での役割
タンパク質は脂質や炭水化物と同様、マクロ栄養素なので、体内でエネルギー源(タンパク質1 gあたり4 kcal)として使われることができますが、他にも筋肉と骨の構成要素として使われたり、体を動かすために必要な栄養素です。
マクロ栄養素:私たちの体を動かすためにエネルギー源となるカロリーを与えてくれる栄養素。具体的にはタンパク質、脂質、炭水化物のことで、基本的な身体機能をサポートするために不可欠。
タンパク質はさらに、
・体を守る(抗体を作る)ため
・体内反応を起こす(酵素を作る)ため
・生体機能を促す(ホルモンを作る)ため
・酸素や電子を運ぶため
・細胞のメンテナンスや入れ替わり
などにも必要とされます。
タンパク質はどれくらい摂ればいいの?
日本で1日に摂ることを推奨されている量は、成人男性が1日65g、成人女性が1日50gです。でも人によって体格や身長も違うので、自分の体重や目的に沿って必要なタンパク質の量を割り出すのが一番確実です。
18歳以上の大人の場合、菜食の人は最低0.9 g/kg/d(1日に自分の体重1kgに対して0.9g)のタンパク質を摂取できるようにするといいと言われています。なので、もし体重50kgの菜食をしている18歳以上の人は、1日最低45g摂るのがいいということになります。
過剰な体脂肪はタンパク質をあまり必要としないため、タンパク質摂取量は自分にあった理想体重に合わせて計算しましょう。
理想的なマクロ栄養素の割合
体づくりをしている方はもうお馴染みかもしれませんが、マクロの割合、つまり食事で摂る脂質、タンパク質、炭水化物の割合はどれぐらいがいいのかについて少し話していきます。
私たちの体が脂質、タンパク質、炭水化物をエネルギーに変換すると、脂質からは1gあたり9kcal、タンパク質と炭水化物からは1gあたり4kcal得ることができます。
そのため、私たちが食べる食事の中にこの3つの栄養素がそれぞれどれくらい入っているかによって、その食事から取れるカロリー数が決まります。そして、私たちの摂取カロリーの内、タンパク質からきた方が良いとされる割合が、
13-20%
カロリー摂取量が少なめの人(年配の方や減量したい人)は筋肉を落とさないように、20%に近づけるといいと言われています。
念のため、こちらの表に厚生労働大臣が定めた「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書をもとに、年齢、性別、ライフステージ別の摂取基準をまとめましたので、載せておきます。(黄色く塗りつぶされている数値が摂取目安です。)
タンパク質が特に必要な人って?
軽度の運動やスポーツをする人は、あまり運動しない人とタンパク質の摂取推奨量は変わらず、0.9 g/kg/d以上は要りません。むしろ体を動かすためのエネルギーがもっと必要なのでもっと炭水化物がいることが多いです。
耐久系のスポーツ(例えばサイクリング、長・中距離走、サッカーなど)の選手は一般の人よりも筋肉がいるためよりタンパク質が必要で、特にトレーニングや筋トレの初期段階は1.2-1.6 g/kg/d を摂ることが勧められています。
筋力系のスポーツ(ウェイトリフティング/重量上げ、吊り輪、アメフト、野球など)の選手は1.2-2.0 g/kg/d が推奨量です。
生まれてから体の成長がある程度止まるまでの子供は、体重に対するタンパク質の摂取量がより必要になります。生まれてから初めの一年の間は新生児は大人の2倍のタンパク質が必要で(1.8 g/kg/d)、生後6-12ヶ月の赤ちゃんは最低11gほど必要(厚生労働省が目安としている摂取量は15g)。
4-8歳の子供は最低19gほど必要(厚生労働省が推奨している摂取量は25-30g)。そして大人に近づくにつれ、体重あたりの必要量は減っていきます。
60歳以上の方も、タンパク質を使う体の能力の効率が落ちるため、菜食をしている年配の方は1.0-1.1 g/kg/d 摂取することが薦められていて、この量を摂るのはちゃんと献立を計画的に立てないと難しいこともあります。
ダイエットや減量などで食事制限をしている人は、食べるカロリーが減る分、タンパク質も必然的に減ってしまうので、意識的にタンパク質源を取り入れている必要があります。
タンパク質が足りないとどうなる?
現代人は十分もしくはそれ以上にタンパク質を摂れている人がほとんどで、過度なダイエットや偏食をしていない限り、タンパク質不足になることはありません。
でも、タンパク質は筋肉や骨の構成要素だったり、細胞のメンテナンスや入れ替わりにも必要とされることもあって、足りなくなると体にサインがわかりやすく現れます。
例えば、
・髪が抜ける、薄くなる
・顔や足がむくむ
・爪が欠けたり割れやすくなる
・肌あれ(乾燥、くすみ、ニキビ、そばかす、ハリツヤが減るなど)
・風邪をひきやすくなる
・筋肉量が減る
など。
他にも
・精神的に不安定になったり、鬱っぽくなる
・集中力低下
などの精神的症状も出たりします。
動物性 VS 植物性
「植物性のタンパク質は動物性のタンパク質よりも質が低い」とか、「植物性タンパク質は不完全タンパク質で、動物性タンパク質は完全タンパク質」とか、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
タンパク質を効率よく吸収したい方にとっては、植物性タンパク質よりも動物性タンパク質の方が魅力的に映ることが多いと思います。
植物性タンパク質を選ぶか、動物性タンパク質を選ぶか、はたまた両方とも摂るのか、どの選択肢を取るのかは、あなたが食事をする上て、栄養素を摂る上で、何を重視し優先するかにかかっています。
現代に生きる私たちが食べるものを選ぶ際に、意識的・無意識的に使っている軸は、
・利便性:入手、保存、調理が楽か
・タンパク質の質:食べた分ちゃんと吸収され使われるか
・食材自体のコスト:商品の価格が高いか安いか
・健康面のコスト:体に優しいか、将来医療費にお金がかからない体を作れるか
・味&好み:食べた時の幸福感
・食材に対するイメージ:「豆腐は女子っぽい、男はやっぱりステーキでしょ。」みたいな
・今までの習慣&文化:「試合前はいつもカツ丼、お祝いごとの時はお寿司、クリスマスはローストチキン、母の日はオムライス」みたいな
・環境への負荷:食材を作るために使われる土地、水、化石燃料、排出される温室効果ガス、有害物質や、持続可能かどうかなど
・エシカル性:労働条件、フェアトレード、家畜動物の扱いなど
などなど
挙げればきりがないのですが、私の専門分野は栄養学なので、タンパク質の質と健康面のコストに焦点を当てることにします。
今回の記事では、タンパク質の質について、次の記事で健康面のコストについてお話ししていきます。
タンパク質の質が高いのはどっち?
突然ですが、タンパク質の質を決める重要な2つのファクターは「消化性」と「アミノ酸スコア」です!
①タンパク質の消化性
タンパク質の消化性(体がどれだけの量のタンパク質を吸収できるか)はその食品に含まれる食物繊維の量に左右されます。
植物性食品には食物繊維が含まれているのですが、一部の食物繊維は人間の体内では消化されず、腸内を通って排泄されます。その際にタンパク質の少しだけ一緒に体の外へ出してしまい、タンパク質の消化性を下げてしまいます。
動物性食品はその点食物繊維を含んでいないので、消化性が高いです。精製された植物性の食品(食パン、プロテインアイソレート、豆腐、ピーナッツバターなど)も少ししか食物繊維を含んでいないので、動物性タンパク質と同じくらいの消化性があります。
調理法もタンパク質の消化性を変えます。
豆、ナッツ、シード、穀物の浸水や発芽は消化を助ける酵素を活性化したり、フィチン酸塩などの消化性を妨げる成分を破壊することにより、タンパク質の消化性を上げます。また、発芽はアミノ酸の量を増加させ、さらにタンパク質のクオリティを上げることができます。
もし96%のタンパク質を吸収し4%が吸収せず排出されたとしたら、その食物のタンパク質の消化性は96%とされるのですが、このタンパク質の消化性をまとめた表を見ると、植物性の加工食品はタンパク質の消化性は動物性の食品と比べそれほど低くはないですが、やはりオーツやレンズ豆などのホールフードは少し消化性が低いことがわかります。
この表の数値だけ見てしまうと、全粒粉の食品よりも白い小麦粉の食品を選んだり、豆腐や煮豆よりもプロテインパウダー(ソイプロテインアイソレート)を選んだ方がいいと思うかもしれません。でもそんなに栄養学はシンプルではなく、加工食品や精製された食品は食物繊維が少ないためタンパク質の消化性を高めますが、食物繊維と一緒に大切なビタミン、ミネラル、ファイトケミカルも取り除かれています。
小さい子供や年配のためにカサを減らしたり、高いエネルギーが必要な人には加工食品は便利ですが、タンパク質の消化性だけをみて食材を選ぶのはやめましょう
②タンパク質のアミノ酸スコア
では続いてアミノ酸スコアに着目してみましょう。
アミノ酸スコア:必須アミノ酸9種類の含有率を点数化したもの。
動物性の食品に含まれるタンパク質は、必須アミノ酸の量がそれぞれちょうど良い量で含まれている(アミノ酸スコア=100)ため、それを食べるだけで体内で効率よく使われることができます。動物性のタンパク質はよく完全タンパク質と言われるのですが、その理由がこれです。
植物性の食品はというと、全ての植物性のホールフードに9つ全ての必須アミノ酸が含まれているのですが、食品によってそれぞれの必須アミノ酸の含有量は違うため、いろいろな種類の食品を食べることが必要です。植物性のタンパク質は一品だけじゃなくて、2品以上の食品を食べないと必須アミノ酸のバランスが良くならないので、不完全タンパク質(アミノ酸スコア<100)と言われたりもします。
まあでも1日に豆だけしか食べない、米だけしか食べない、ナッツしか食べないみたいな生活をする人は、ほとんどいらっしゃらないと思うので、あまり気にする必要はありません。
知っておくと便利なのは、
・豆類やシード類はリジンが多くメチオニンが少ない傾向にあり、
・穀物はメチオニンが多くリジンが少ない傾向にある
ということ。
でも、難しいことは考えず、豆類、シード、ナッツ、穀物、野菜を24時間の中でちゃんと摂取(つまりはバランスの良い食事)をしていれば、必要な量の必須アミノ酸を摂取できてしまいます。必ず一回の食事にご飯と豆や豆とナッツを一緒に食べないというわけではありません。
ちなみに大豆製品は植物性食品の中でも数少ない、必須アミノ酸スコア(必須アミノ酸含有量のバランス)がとても良い食材で、よく大豆は完全タンパク質だって言われたりします。
他にも植物性食品でアミノ酸スコアが動物性食品と変わらない食材もあるのですが、それはよく「スーパーフード」と呼ばれる食品たち。私は皆さんに、スーパーフードに頼るよりもまずはバランスの良い食事を心がけていただきたいので、あえて安価で親しみがあり、日常に取り入れやすい大豆製品しかここではご紹介しません。
タンパク質の消化性とアミノ酸スコアを踏まえてタンパク質の質を考えると
タンパク質の消化性:動物性 > 植物性
アミノ酸スコア:動物性 ≧ 植物性
という感じなので、皆さんがご想像していた通り、タンパク質の質は動物性タンパク質の方が高いことが多いです。
では、タンパク質の質はここまでにしておいて、健康面のコストに目を向けた場合、動物性と植物性、どちらの方が優っているのでしょうか。
次回の記事では、
・動物性の食品と植物性の食品のマクロ栄養素の割合
・動物性の食品と植物性の食品に含まれるタンパク質以外の成分
・それぞれのタンパク質を食べた時に起こる体内での反応
の3つを考慮して、健康面のコストについてお話ししていきます。
ここまでお読みいただいた皆さん、ありがとうございました。
少しでも皆さんの疑問が解消されたり、何か新しいことを学ぶお手伝いができていたら幸いです。より詳しい情報をご希望の方や個人的な質問・ご相談のある方は菜食栄養学セミナーにてお伺いいたします!
では、また次の記事でお会いしましょう。
I hope you are having a wonderful morning, noon, evening or night, whenever you are reading this.
Lots of love,
Yuka
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