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謎の多い栄養素、ビタミンD。確実に補給するための方法は?【まるわかり編】

今まで鉄分に始まり、カルシウム、タンパク質、オメガ3脂肪酸、ビタミンB12と、菜食を始める際に意識して摂りたい、知識をつけておきたい栄養素を優先的にご説明してきましたが、これにて菜食入門編の栄養素シリーズ完結となります。

有終の美を飾る栄養素は、ビタミンDです!

ビタミンDは丈夫な骨を保つために大切な栄養素だということはカルシウムシリーズですでに少しお話ししましたが、他にも筋肉、心臓、脳、膵臓、甲状腺が機能するのにも必要だったり、細胞の成長と成熟もコントロールしたり、免疫力を保ったり、様々な病気の予防もしたり、とっても働き者の栄養素です。その分、欠乏してしまうと身体の至る所で不調が出やすい栄養素でもあります。

でも、ビタミンDは確実な摂取基準が定まっていなかったり、栄養素を体内で作り出せたり、まだまだ謎の多い栄養素の一つ。

そこで、こちらの記事ではビタミンDについて包括的かつ体系的にまとめ、健康的に過ごすために必要なポイントをまとめた、日々の生活にすぐ取り入れやすい実践的な内容にしました。

実際のところ、どの摂取法が一番確実で安全なのかや、年代別のおすすめ摂取法&摂取量などについてもお話ししていきます。

では、早速いきましょう!

今回の目次はこちら。

1.ビタミンDとは - 実はホルモン?

ビタミンDは脂溶性ビタミンの一つで、水に溶けず、油に溶けやすい性質を持つ栄養素です。名前にはビタミンという字が入ってはいますが、体内ではホルモンのような働きがほとんど。

というのも、ビタミンDは

・ごくわずかな量で体の物質代謝を正常化する
・生命の維持や成長に必要な有機物
・食物から取り入れられる

という理由からビタミンの一つと考えられてきたのですが、実は私たちの体のなかで合成され、構造もステロイドホルモンの一種であることが判明しました。

現代は色々なことが重なって、結局は栄養素のようにちゃんと摂取しないと欠乏してしまうことがあるので、栄養素の中に入っています。

そんなビタミンDの働きはこちら↓

カルシウム関連
・カルシウムとリンの吸収を助ける
・血中カルシウム濃度を調整する
・カルシウムの尿を通して排出されることを抑える
細胞や体の機能関連
・筋肉、心臓、脳、膵臓、甲状腺、生殖器官を正常に機能させる
・細胞(免疫系や骨も含む)の成長と成熟の制御→感染症予防や回復に効果的
・膵臓でのインスリン生産の調節
・血圧の調節

主に骨の健康を保つために大切な生体活動の調節をし、他の臓器や細胞でも様々な機能のサポートをします。

ここでちょっとした用語解説
脂溶性ビタミン:水に溶けにくく油脂に溶けやすいビタミンのこと。ビタミンA、D、E、Kがこれに分類される。油脂に溶けた状態で体に蓄積していくが、摂りすぎてしまうと水溶性ビタミンのように尿と一緒に排出できないため過剰症を引き起こす。
ホルモン:ほんのわずかな量で体内の様々な代謝、神経伝達、発生、分化などのあらゆる生体活動の調節機構に密接に関与する物質の1つ。体内の器官または組織で作られる。


2.ビタミンDが不足するとどうなる?

ご覧の通りビタミンDの働きはとても幅広いのですが、実際に不足してしまった場合、次のような症状や病気になってしまうリスクが高まってしまいます。

骨関連の病気

骨軟化症:正常な硬い骨が形成されるために必要な、骨基質の石灰化(リン酸カルシウムや炭酸カルシウムなどが沈着すること)がちゃんと起こらず、未石灰化部分の割合が増え、偽骨折による骨の痛みや骨折、筋力低下など、骨の弱さ(軟らかさ)に伴うさまざまな症状が生じる病気。

くる病:骨や軟骨の石灰化障害がきっかけとなる小児の病気。発症原因は骨軟化症と同じだと考えられているが、成長軟骨帯(成長期特有の軟骨組織)が骨へと完全に置き換わるまえに発症するものは「くる病」、それ以降に発症するものは「骨軟化症」とよばれる。

骨粗しょう症:骨密度が低下し骨がスカスカになり、骨折しやすくなる骨の病気。骨の強度が減ってしまい、つまずいて手や肘をついたり、くしゃみをしたりする、わずかな衝撃で骨折してしまうことがある。

感染症関連

クローン病:口腔内、小腸、大腸など、消化管のいたるところに慢性的な炎症をきたす病気。

多発性硬化症:脳や脊髄、視神経のあちらこちらに病巣ができ、様々な症状が現れるようになり、症状が出たり治まったりを繰り返す病気。

リウマチ性関節炎:関節や骨部、筋肉などの運動器官に痛みが起こる疾病。細菌やウイルスを抑えるはずの免疫機能が異常に反応してしまい、自己の細胞を敵とみなして攻撃してしまうという、自己免疫疾患の一つ。

生活習慣病関連

糖尿病:体内のインスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖(血糖)が増えてしまう病気。血糖値が何年間も高いままで放置されると、血管が傷つき、将来的に心臓病や、失明、腎不全、足の切断といった、より重い病気につながってしまう。

心臓血管疾患:狭心症、心筋梗塞、弁膜症、不整脈などの心臓・血管など循環器における疾患。症状がないまま病状が進行して、症状が現れた時には重症となり、時には死に至ることもある。

卒中:臓器内の出血や血栓などが原因で症状が急激に出ること。脳の出血や血栓などの循環障害によって突然に意識障害や運動麻痺をおこす脳卒中がその代表。

癌(特に大腸癌):体内の細胞が異常かつ無制限に増殖する病気。細胞増殖が生命維持に必要な臓器や組織で起ると正常な機能がそこなわれ、あるいは停止し、死にいたることもある。

その他の症状

認知機能低下:物忘れなどの記憶障害や、判断、計算、理解、学習、思考などを含む脳の機能が低下してしまう。認知症や鬱のような症状が出る人もいる。


3.ビタミンDの摂取基準

ビタミンDはまだ謎の多い栄養素の一つで、私たちの体はどれくらいこの栄養素が必要なのか、どれくらい食べ物から摂取した方がいいのかが確実にはわかっていません。そのため、推定平均必要量(EAR)や推奨量(RDA)は定められていなくて、厚生労働省は骨折リスクを上昇させないビタミンDの必要量をもとに目安量(AI)を設定しています。

そんなこんなで日本で定められている目安量がこちら。

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