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魚食べなくても大丈夫なの?DHA・EPAの正体とは。【基本編】

「DHA」と聞いたら、皆さんの頭には何が浮かびますか?

「青魚」
「血液サラサラ」
「脳に良い」
「目に良い」
「血管を健康にする」
「オメガ3脂肪酸」

とかが多いのかなと思います。

よく菜食に関する質問で「魚食べなかったらDHAとかEPAはどうするんですか?」って聞かれることがあります。でも、実はDHAやEPAは必須栄養素ではないということ、皆さんはご存知でしょうか?

厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」の2015年版からはもうDHA・EPAは必須脂肪酸としては載らなくなり、オメガ3脂肪酸が必須脂肪酸として載るようになり、魚は絶対に必要な食材というわけではなくなりました。

そして、DHAとEPAは植物性のオメガ3脂肪酸をしっかりと摂ることで体内で合成することができちゃうんです

でもやっぱり、完全菜食で体が必要な量のDHAとEPAを体内で合成するためにはちゃんとした基礎知識と注意しなければいけないポイントを押さえておく必要があります。なので今回の「オメガ3脂肪酸シリーズ」で、これで安心して菜食取り入れられると思っていただけるように、必要な知識と情報をお届けしていきます⭐︎

では、早速いきましょう。

今回の目次はこちら。

DHA・EPAとは

EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA (ドコサヘキサエン酸)は、ホルモンのような働きをする物質を作るのに使われ、体に様々なメリットを与えてくれる長鎖脂肪酸のことで、両方ともオメガ3脂肪酸の一種です。

EPA慢性的な炎症を減らす役目を果たしたり、特定の精神疾患を予防する作用がある。
DHA:脳や視覚機能の発達やメンテナンスに必要とされる。

EPAとDHAは他にも

血栓を防ぐ
血圧を下げる
免疫力を高める
細胞分裂のサポート
鎮痛・抗炎症作用
認知症予防や脳機能の改善
血管や心臓関連の病気の予防
などに役立ちます。

EPAもDHAも、より小さく短いオメガ3脂肪酸のALA(アルファリノレン酸)が変換されてできる脂肪酸です。なので、青魚を食べることでEPAやDHAを直接摂取することはできますが、ALAを含む植物性の食材を十分に摂取することで体内で合成することもできるので、必ず摂らないといけない脂肪酸ではありません。


オメガ3脂肪酸とは

オメガ3脂肪酸はPUFA(多価不飽和脂肪酸)の一種で、オメガ6脂肪酸というもう一つの種類のPUFAと一緒に様々な働きをします。

例えば、

・免疫や炎症反応を統制する働きのある物質を作る材料(EPAなど)として使われる
・細胞膜の構成要素として働く
・神経系機能や視覚に必要な成分(DHAなど)として使われる
など。

オメガ3脂肪酸の中で、ちゃんと食事から取らないといけないとされる必須脂肪酸ALA(アルファリノレン酸)です。オメガ6脂肪酸は十分に摂れている人が多いのですが、オメガ3脂肪酸は多くの人が不足しがちなため、注意が必要。

ここでちょっとだけ専門用語のご紹介。
PUFA(多価不飽和脂肪酸):
炭素原子のチェーンに水素原子がくっついていないところが二箇所以上(二重結合が2つ以上)ある脂肪酸。PUFAを多く含むオイルは冷蔵された時も液体のまま。健康にいいと言われ、多くの植物性の食品に含まれる。
オメガ3:二重結合が脂肪酸のメチル末端から3番目にあるという意味。オメガ3脂肪酸の必須脂肪酸はALA(アルファリノレン酸)。
オメガ6:二重結合が脂肪酸のメチル末端から6番目にあるという意味。オメガ6脂肪酸の必須脂肪酸はLA(リノール酸)。
必須脂肪酸:体内では合成されないため、外部(食べ物など)から摂らないといけない脂肪酸。


オメガ3脂肪酸(ALA)が足りないとどうなる?

オメガ3脂肪酸は鉄とかカルシウムみたいに、不足すると貧血とか骨粗しょう症になるみたいなはっきりとした欠乏症はないのですが、十分摂取できていないと起こりやすいとよく言われている症状はもちろんあります。

例えば、

・血中の中性脂肪やコレステロール値が高いまま(生活習慣病になりやすい)
血が固まりやすい(血栓ができやすい状態になり、脳梗塞や心筋梗塞)
子供の発育が遅れる危険性(エネルギーを作る能力が低下したり、脳の発達が遅れる可能性)
肌トラブル(乾燥しやすい、皮膚炎など)
などなど。

個人差はもちろんありますが、私は元から乾燥肌・敏感肌なので、オメガ3脂肪酸を摂るのを怠っていると肌が乾燥気味になったり痒くなったりします。


オメガ3脂肪酸の摂取基準

日本では、男性で18−49歳の方は1日2.0g女性で18-49歳の方は1日1.6g摂ることを勧められています。

こちらの表に厚生労働大臣が定めた「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書をもとに、年齢、性別、ライフステージ別の摂取目安量をまとめました。

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でも、これは一般的な食事(動物性の食品を含んだ食事)をしている人用の目安量で、DHAやEPAを直接摂ることがほとんどできない菜食をしている人の場合、この目安量は少し変わってきます。

菜食をしている成人男性は1日最低3.2g女性は2.2gのALAを摂ることを目指しましょう。DHAやEPAのサプリを取る場合は一般的な推奨量のままで大丈夫です。

ちなみに、厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」の2010年版ではDHA・EPAの摂取目安量は18歳以上、男女区別なく1日あたり1g(1,000mg)以上とされていましたが、2015年版からDHA・EPAについてはオメガ3脂肪酸としてひとくくりになり、DHA・EPA個別記載が無くなりました。

ここでちょっとしたYukaの語り入ります。
DHAやEPAの摂取量の記載が取り払われた要因として挙げられるのが、DHAやEPAが含まれている食材の魚を摂取することによる体への害が懸念され始めたということ。食事からDHA・EPAを多く摂るためには、魚をたくさん食べることになるのですが、一部の魚には水銀やダイオキシンといった、身体に悪影響を及ぼす重金属や環境汚染物質が蓄積しているリスクがあることや、最近は特にマイクロプラスチックも魚を食べるときに一緒に知らないうちに体内に取り込んでしまうとして懸念されています。
最近はプラスチック汚染とも言われていますが、毎年800万トン以上のプラスチックがゴミとして海に流れ込み、一部は紫外線・海流・波で、マイクロプラスチックと呼ばれる細かい破片となり有害物質が付着したものを、魚がエサと間違えて食べ、その魚を私たちが食べています。
魚介類に含まれるマイクロプラスチックと飲み水に含まれるナノプラスチックを合わせて、私たちは平均で1週間にクレジットカード1枚分のプラスチックを摂取しているとも言われています。


オメガ3とオメガ6の摂取バランス

「オメガ3脂肪酸をちゃんと摂る」のも大事だけど、「オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の摂取の割合も大切だ」とお聞きしたことがある方もいらっしゃるんじゃないかなと思うのですが、これ本当です。

理由は大きく分けて2つあります。

①ALAがDHAやEPAに効率よく変換されない

オメガ3脂肪酸の必須脂肪酸であるALAを十分に摂れていても、オメガ6脂肪酸の必須脂肪酸のLA(リノール酸)とのバランスがよくないとALAがDHAやEPAに変換されにくくなってしまいます。DHAやEPAが十分に作られないと脳機能や神経細胞の働きが下がってしまう可能性があるので要注意。

②炎症が起きやすくなったり病気になりやすい体になる

ALAを含むオメガ3脂肪酸は炎症を抑える作用があるのですが、LAをはじめとするオメガ6脂肪酸は炎症を促進する作用があるため、オメガ6の摂取量が常に高くなってしまうと体が慢性的に炎症を起こしやすい状態になってしまいます。
自覚しやすい症状で言うと、肌荒れやアトピー、アレルギー症状が出やすくなったり、知らないうちに体が肥満や、がん、動脈硬化、関節炎、糖尿病、心臓病、アルツハイマーなどの炎症性疾患にになりやすい状態になってしまったりしまう可能性も。

オメガ6とオメガ3の理想的な比は2 : 14 : 1の間くらい。(1 : 1 でも良いという専門家たちもいます。)出来る限りこのバランスで摂ることを心がけましょう。

ちなみに、

・ごま油
・グレープシードオイル
・大豆油
・コーン油
・コットンシード油
・菜種油
・キャノーラ油
・ひまわり油
・紅花油(サフラワー油)
・ライスブランオイル(米油、米糠油)

などの油はオメガ6脂肪酸がとても多く含まれているため、できるだけ避けるのがお勧め。ごま油などは、調理のために使うというよりは、香りや風味づけのために料理にちょっと垂らすくらいにしておきましょう。

オメガ6が豊富な食材の大さじ1杯分には実際にどれくらいのオメガ6が含まれているのか、どうやってオメガ3とのバランスをとっていくのかなどは次回の記事でお話ししていきます。

オメガ3脂肪酸が特に必要な人は?

子供からご年配の方まですべての人がちゃんと摂りたい栄養素ですが、特に気をつけたい人たちもいます。

①子供

成長途中の子供は、脳を含む臓器もまだまだ発達途中のため、オメガ3脂肪酸の摂取が足りなかった際のダメージが大きいです。授乳期に母乳で育てている場合は、お母さんがしっかりとオメガ3脂肪酸を摂取できていれば大丈夫ですが、離乳が始まってからは、一般的に勧められている量の約2倍のオメガ3脂肪酸(生後6ヵ月から2歳までは1.6g)を摂取できるように心がけましょう。

②妊娠期と授乳期

ALAをDHAとEPAに転換する効率が下がってしまう可能性があるので、心配な方はDHA・EPAのサプリを使用も視野に入れるといいです。授乳期・妊娠期の女性でサプリを取る場合は、200-300mgのDHAサプリを1日1回取り、食事からのオメガ3脂肪酸の摂取量は一般の目安量(妊婦は1.6g、授乳婦は1.8g)が推奨されています。

③糖尿病や高血圧を経験している方

妊娠期・授乳期の女性と同様、ALAをDHAとEPAに転換する効率が下がってしまう可能性があります。心配な方はDHA・EPAのサプリを使用も視野に入れるといいです。

ヴィーガンのEPA・DHAサプリは微細藻類や海藻を原料に作られていますが、値段が高いことが多いので、食事でしっかりと補える場合は食事からのみで大丈夫です。次回の記事で食べ物から十分にALAを摂る方法やより具体的なサプリの取り入れ方についてお話しします。

菜食の人が気をつけるべきポイント

菜食でも十分ALA摂取できるから大丈夫とは言っても、ALAは特定の食材にしか含まれていなかったり、その食材の保存法や使い方にも注意が必要です。

菜食でしっかりとオメガ3を摂取をするために最低知っておきたいのが

①ALAの摂取源と取り入れる量
②ALAの吸収を上げる方法
③ALAを酸化させずに食材を保存する方法
④ALAを酸化させない食事への取り入れ方
サプリの選び方と取り入れ方
の5つ。

これからの記事でこの5つのトピックを中心に、菜食でもしっかりとオメガ3を摂取し、健康的になるためのコツをご紹介していきますのでお楽しみに♡

noteには書かれていないより詳しい情報をご希望の方や個人的な質問・ご相談のある方は菜食栄養学セミナーにてお伺いいたします☺︎

ここまで読んでくださりありがとうございました。

I hope you are having a wonderful morning, noon, evening or night, whenever you are reading this. 

Lots of love,
Yuka

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