佐野由香里

エッセイ・小説・映画感想文

佐野由香里

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最近の記事

映画『PLAN75』

映画『PLAN75』を観た。 少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。満75歳から生死の選択権を与える制度<プラン75>が国会で可決・施行される(公式HPより)。 恐ろしい。生きることを止める選択をせざるを得ない高齢者が、追い詰められていく。親が75歳を過ぎているので、他人事ではない。30年も経てば我が身だ。 いつまでも元気でいられる人は、ほんの一握りだと思う。若いうちは自分が歳をとるなんて、思ってもいなかった。 高齢者も若いときがあったんだ。みんな歳をとるんだよ。

    • 今を大切に生きる

       久しぶりに従妹と会った。彼女は病気がちで、何度も手術と入退院を繰り返している。家の近所の大学病院に入院したと聞いて、会いに行ってきた。  以前の彼女は耳が聞こえにくかったが、まだ元気だった。車の運転もできた。  30代の彼女は杖をついて現れた。以前はなんとか会話ができたが、もう耳はまったく聞こえず、筆談するしかなかった。顔面が麻痺し、片目の視野も欠けているという。痩せて、小さくなっていた。親戚から聞いた話では、医師からは好きなことをさせるように言われたらしい。次、会うことは

      • 術後1年

        今日で、子宮頸がんの手術から1年が経った。 入院した日から、なぜか発熱していた。精神的に不安定だったからだろうか。手術当日も微熱があったが、なんとか手術室に入れた。 コロナ禍だったので、1人で手術を受けた。怖くて、心細かった。 大部屋に戻ったときに、全身麻酔から意識も戻った。なんとか生還した。もしかしたら、という覚悟はしていた。 麻酔のせいで気分が悪かった。訴えてもどうすることもできないようで、我慢するしかなかった。寝返りが打てなくて、あまり眠れなかった。術前に血栓の怖

        • 入院から1年

          1年前に入院した。初めての入院だった。検査から子宮頸がんのステージ1だろうということだったが、自分がどうなるのかわからなくて、悲しくて、怖かった。 入院したのは大学病院で、何人もの医師が1つのチームとなって治療に当たった。内診と超音波の入院診察があった。Youtubeでいろいろ調べていたので、どういう検査をするのか知っていた。痛いと言う人もいて、びびっていたが、わたしは特に痛みは感じなかった。でも婦人科の診察台というのはどうしてああいう形なんだろう。本当に嫌だ。 手術は翌々日

        映画『PLAN75』

          雨の日のフードデリバリー

          雨が嫌いだ。 いつからか濡れるのが嫌で、雨の日は可能なら外出しないようにしている。 昨日の朝から雨が降っていた。 天気予報は外れた。 買い物に行こうと思っていたので、冷蔵庫は空だ。 久しぶりにフードデリバリーのアプリを開くと、キャンペーン中だった。 なんと買いに行くよりお得だったので、頼むことにした。 家にいながらにして温かい料理が届く。 置き配にしたので、配達員とも顔を合わせる必要がない。 なんて便利な世の中。 今日も雨だ。 違うフードデリバリー会社に新しく登録すると、

          雨の日のフードデリバリー

          春休み 人影のない 校庭に 子ども達待つ きれいな桜

          飛行機のデッドライン

          飛行機に乗り遅れた。まさか、まさかだった。 空港に着いたとき、離陸まで1時間を切っていたと思う。ラウンジでドリンクを1杯飲んで、お手洗いを済ませ、ちょうどお昼前だったのでランチを食べておこうと思った。注文した時点で、保安検査場の締め切り時間が迫っていた。このとき、もしかして厳しいかなと思った。急いで掻き込んで、お会計。前の人がレジの人と談笑していた。やっと番が回ってきて、クレジットカードを早く差し込み過ぎてエラー。「ちょっと待ってください」と言われ、別のレジに。外国人観光客が

          飛行機のデッドライン

          がんになった、わたし

          もうすぐ、がんが見つかって1年になる。わたしの人生で大きな出来事だった。それを記録しておきたい。 子宮筋腫があったので、毎年子宮頸がん検診は受けていた。県外に引越しをして、例年より3ヶ月遅く、初めての病院で検査を受けた。 しばらくして病院から電話があった。異常がある人に電話しているが、電話では詳しく話せないと言う。検査が他の病院では感じたことがないくらい痛くて、2度と行きたくないと思って診察券を捨ててしまっていた。まさか検診に引っかかるとは思ってもいなかったのだ。いつ来院す

          がんになった、わたし

          働くということ

          しばらく働いていない。いわゆる無職、主婦というやつだ。無職といっても、主婦の家事労働は果てしなく、休みがない。一人暮らしの場合とは異なる。自分以外の家族の生活のために働いているのだ。評価されないし、感謝もされない。掃除、洗濯、料理。家族が快適に生活できるように家事をしている。お金に換算したら相当な労働だ。 ちょうどコロナ禍が始まる前に離職し、コロナが明け(たのだろうか?)、久しぶりに働いてみようと思った。完璧に家事をできているわけではない。掃除ができていなかったり、洗濯物をた

          働くということ

          妊娠した夢

          妊娠した夢を見た。ずっと子どもが欲しかったのだ。不妊治療もした。でも授からなかった。嬉しくて、嬉しくて。 よく考えたら、手術で卵巣と子宮を摘出していた。妊娠するわけがない。   目が覚めた。夢だった。なんだ。    

          走るということ

          術後、熱心に走っている。大会にエントリーしたからということもあるが、術前より熱心になった。 疲れない程度なら走ることは体にいいと思うし、何より、今さらながら走ることが好きだったことを知った。 走り始めたのは十数年前にランニングブームが始まった頃、ほとんど走ったこともないのに近所のランニングサークルに入会した。 そこで人生が変わった。 年齢も職業も違う人たち。 毎週末の朝、集まって10キロぐらいを走る。 初めて参加したときは、2、3キロしか走られなかった。 メンバーの1人が付い

          走るということ

          マラソン大会に戻ってきた

          術後、初めてマラソン大会に出た。 楽しみながら走ることを目的とし、記録計測は行わないファンランの部5.6km。 友人とメイドの仮装をして駅伝大会に出たときの、青いウィッグをかぶって出走。 沿道の応援に感謝しながら走ると決めていた。 「ありがとう」手を振る。 タイムを気にしないで、沿道に寄っていく。 折り返し。 もう終わってしまう。  わたし、まだまだ走れるよ。 こんなに元気になったよ。 ゴール。 コースに礼。 ありがとうございました。 また、ここから始めよう。

          マラソン大会に戻ってきた

          「ありがとう」と言いながら走る

           大きな地震があった地の復興マラソンの応援に行ってきた。津波で流され復興した地域を走るという。  わたしは、ただ沿道に立っていた。他の応援の人は拍手をしたり、ランナーに「がんばれ」とか声をかけていた。ランナーは「ありがとう」と言いながら走ってくる人が圧倒的に多い。他の大会とは違うように思った。ずっとランナーにお礼を言われていたら、なぜか涙が出てきて、わたしはランナーに手を振っていた。目が合って頷くと、ランナーも頷く。  わたしも今度走るときは、沿道の応援に「ありがとう」と言お

          「ありがとう」と言いながら走る

          離れていても

           がんになって手術するとわかったとき、何人かの友人にしか知らせなかった。  手術前に会えた友人は、元気になったときに飲んでと、わたしの好きなお酒をプレゼントしてくれた。  手術前に、神社に祈祷に行ってくれた友人もいた。退院してから、その友人から退院祝いのお花が届いた。よくがんばりましたね、というメッセージカードが添えられていた。そのお花の写真を撮って、がんで手術したことをSNSに投稿した。 それを見た別の友人は、がん封じの神社にお参りに行って御守りを送ってくれた。入浴剤

          離れていても

          手術室まで歩く

          今年、全身麻酔の手術を初めて受けた。 両親も病気で何度も手術しているし、ドラマや映画でも手術のシーンを観たことがあるから、なんとなく、どういうものかはわかっていた気になっていたけど、実際は想像していたのと違う点があった。 手術室まで歩いて行くということ。 手術室の看護師が病室まで迎えに来てくれて、一緒に歩いて行く。 手術室のフロアには、たくさんの手術室があって、これから手術を受ける人が看護師と歩いている。 手術室では看護師や麻酔科医に何度も氏名を確認される。 手術台に上がる。

          手術室まで歩く

          花のある生活

          先日、花育体験教室に行ってきました。 自分で花を5本、葉っぱを2本選んで、花屋さんがブーケにしてくれます。 見たこともないような花もたくさんあって、好きな物ばっかり選んでいたら、バラバラな印象…。 花屋さんのアドバイスもいただいて、全体の色のバランスを考えて。 花瓶もいただいたので、帰ってから花を飾りました。 か、かわいい。 どれだけ見ても飽きなくて、しょっちゅう見ています。 こんなに花が好きだったのかと、自分でも驚くほど。 ギフト券もいただいたので、次回お花屋さんに行って

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