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飛行機のデッドライン


飛行機に乗り遅れた。まさか、まさかだった。
空港に着いたとき、離陸まで1時間を切っていたと思う。ラウンジでドリンクを1杯飲んで、お手洗いを済ませ、ちょうどお昼前だったのでランチを食べておこうと思った。注文した時点で、保安検査場の締め切り時間が迫っていた。このとき、もしかして厳しいかなと思った。急いで掻き込んで、お会計。前の人がレジの人と談笑していた。やっと番が回ってきて、クレジットカードを早く差し込み過ぎてエラー。「ちょっと待ってください」と言われ、別のレジに。外国人観光客が多い。まだ自分の番じゃないのに、横からレジの人に支払方法を質問してくる外国人がいる。「急いでいるんですけど」とレジの人を急かす。それから、お土産を買いに行く。買って帰ると約束したのだ。ここでも横から外国人観光客がレジの人に何か聞いている。やっと番が回ってきた。研修生がレジを担当していた。「急ぎでお願いします」ごめんなさい。やっと買えた。
しかしターミナルへ行くにはバスに乗らなければならなかった! 走るのは得意だ。ダッシュする。しかし、バスは行ってしまった。息を切らしながら、次のバスを待つ。やっと乗れた。ゆっくりバスに向かって歩いて来る人達。バスはガラガラなので、全員乗せてから出発する。でも離陸まではまだ時間がある。サーッと通れたら、まだ間に合うと思っていた。やっとターミナルに着いて、保安検査場へ。搭乗券のQRコードをかざすと、エラーで通れなかった。係員が無線で誰かに連絡して、やり取りが何度かあって、それから「もう通れないのでカウンターに行ってください」と言われた。チェックインは、空港に着く前にwebで済ませていた。チェックインの機械の前にいたスタッフに言うと、「次の便をお探しください」と言われた。まだ諦めきれず、カウンターのスタッフに事情を説明する。「数分前に飛行機のドアが閉まってしまったので、乗ることはできないんです」と言う。
信じられなかった。
保安検査場に並んでいると、出発が近い便の乗客が優先的に通してもらっているのを何度も見たことがある。わたしは旅慣れていて、走って最後の1人で搭乗したこともある。飛行機も遅れることがある。しかし保安検査場を通過できる期限があったのだ。初めて知った。空港に着いて、まっすぐ保安検査場に行っていれば。まだそこにいる、わたしが乗るはずだった飛行機。でも、もう乗られないのだ。
飛行機は飛んでいった。わたしを置いて。
格安で買ったLCCの航空券で、払い戻しはできなかった。また買い直すと、4倍以上の金額になった。

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