食事の時は楽しい話を

 我が家の食事は野菜から
 お料理の悩みとしてよく言われるのが、「子どもが野菜を食べてくれない」。栄養バランスや彩りを考えて、食べてくれるようにせっかく工夫して作っても、お子さんが食べてくれないとがっかりしますよね。息子は好き嫌いなく育ってくれたので、一例として我が家の食事法をお話をさせていただきます。  
 子どもは最初にメインのお料理から箸をつけがちです。温かいうちに食べたくなりますし、しょうがないですよね。そこで食卓には、まず二、三品ほどの野菜料理を出しました。野菜を食べ終えてから、温かいメインのおかずを出します。作り手としては、途中で食卓を離れるので少し面倒ですが、八分通り調理をしておけば、焼き色をつけたり、少し温めてすぐに食卓へ出せる状態にできます。私はガスレンジのタイマーを利用して、食卓に出すタイミングを計っています。
 息子は2歳の頃から、まずは野菜を食べないとお魚やお肉は出てこない、という食卓が当たり前になっていました。それが習慣になってしまうと、母としては楽チンです。外食している時も、息子は「まずはお野菜だよね、何にする?」と。大人になり、一人暮らしをしている今でも野菜から食べているようです。
 ここで次に言われるのが、「でも野菜料理のレパートリーが少ない」。例えば、サラダやおひたし、煮物やきんぴら、ナムルなどはいかがでしょうか。旬の野菜は栄養価が高く、味も濃いので、簡単な調理法で美味しく出来上がります。
 野菜から食べることは、子どもの野菜嫌い克服のためだけではなく、大人にとっても健康的な食べ方です。同じメニューの食事でも、お魚やお肉、ご飯の前に野菜をまず食べる方が、血糖値の上昇が緩やかになり、脂肪もつきにくくなります。成人病予防やダイエット効果も期待できそうですね。
 これから春にかけては、多くのアブラナ科の野菜が旬を迎えます。まずはカリフラワー。新鮮なカリフラワーは表面が白く、傷や変色・粉ふきがなく、ずっしりと重量感があるものを選びます。最近はオレンジや紫色の品種、スティックタイプのカリフローレ、恐竜の背中のようなロマネスコなど、バラエティに富んでいます。
 私が習ったフランス家庭料理では、小さくフサに分けて、薄い酢水で洗い、生のままマヨネーズや岩塩をつけて食べていました。生のカリフラワーの歯ごたえと美味しさは衝撃的でした。
火の通りが早いので茹で過ぎに気をつけ、少し硬めに茹でたグラタン仕立てもオススメです。

 私の好きな食べ方は、茎の部分に切り目を入れ、もこもこしている部分を手で割き、一口大にしてグリルパンや魚焼きグリルで焦げ目がつくまで焼きます。軽く塩を振ってそのまま、又はピクルスにしたり、バーニャカウダソースで食べたり。水分が抜けて香ばしさも加わり、驚きの美味しさです。
 菜の花類は、のらぼう菜やオータムポエム、かき菜など、これからどんどん種類が増えてきます。茎の切り口がしっかりと緑色のものが新鮮です。白っぽくなっているものは時間が経ち、筋っぽく苦味が出てきますので、新鮮なものを早めに調理して美味しく食べてください。均一に火が通るよう、茎・葉・花の部分と手で折りながら分け、蓋のできる鍋に入れます。塩をひとつまみふり、オイルをまわしかけて、少量の水を入れて蓋をし、中火で2〜3分加熱。これだけで美味しい野菜料理が一品出来上がります! もし伸びて花が咲いてしまったら、水に挿してお部屋に飾り、春を感じましょう。

 
食事の時は楽しい話を! 
 このコラムを書かせていただいてから、丸一年になりました。「青い前かけ」は私にとって特別な思い出です。5歳上の姉とお揃いのワンピースを、洋装店で選んだ生地から作ってもらい、私の一張羅(いっちょうら)でした。その残り布から母が作ってくれた、青のチェックの前かけ。私はその前かけをつけるのが嬉しくて、台所に立つのが楽しく、母の真似をしながら大人になった気分でした。毎日の食事準備や、季節の特別なご飯作りを手伝いました。
 私が中学に上がる頃、父が単身赴任になり、姉も進学で家を出、母は仕事で忙しくなりました。私は一人で食事をすることが多くなり、家族で楽しく食卓を囲むことがなくなりました。久しぶりに父が帰ってきても、母に逆らってばかりの私に、父からお説教をされる始末。そのため私は家族に本音を言えなくなってしまいました。
 そんな経験から、息子が生まれた時に夫と幾つか決まりごとを作りました。その中の一つが、
「食事の時は楽しい話をしよう」
お説教も無し!、ケンカもしない!、成績の話はしない!、など。食卓は楽しい場所、ホッとする場所になり、たくさん話ができたと思います。

 父が亡くなったことをきっかけに母とじっくり話し、母も子育てに悩んでいたと知り、私も母に当時言えなかったことを伝えました。そしてコラムを書き始めてから、母や家族との楽しい時間を思い出すことができました。本当は一緒に幸せな時間も過ごし、一緒に笑っていたのに、つらい思い出でフタをしていたことに気づいたのです。このコラムも、もうしばらく書かせていただけることになりました。皆さんの食卓が幸せな空間となり、お料理が楽しくなるよう、これからも小さな提案をさせていただこうと思っています。

 今回のレシピは、「菜花とカリフラワーのサラダ」です。コツは菜花の時期によって火の入れ方を変えること。出始めの水分量の多い時期は1分ほど、名残になると筋張ってくるので、長めに茹でます。

材料(基本量)
菜花 100g
カリフラワー 100g
塩、白胡椒、EXヴァージンオリーブ油
ドレッシング:アンチョビ 1枚、塩 ひとつまみ、酢(バルサミコ酢でも) 大さじ1杯、EXヴァージンオリーブ油 大さじ2杯

① 菜花を洗い、茎・葉・花の部分と手で折りながら分ける。
② 蓋のできる小鍋に菜花を入れ、塩をひとつまみふり、油を大さじ1杯を回しかける。水を約50ml加え、蓋をして中火で1~2分加熱する。加熱後すぐに鍋からあける(水には取らない)。
③ カリフラワーを房に分け、茎の部分に包丁で切り込みを入れて手で小分けする。
④ グリルパンや魚焼きグリルで軽く焦げ目がつくまで焼く。
⑤ ボウルにアンチョビをほぐし入れ、塩ひとつまみ、酢を加えてよく混ぜ合わせる。しばらくおいて塩が馴染んだら油を加える。
⑦ 皿に菜花とカリフラワーを盛り付け、ドレッシングを回しかける。

 菜花は手で折った方がアクが抑えられるそうです。優しい味わいの菜花とカリフラワーのポリポリとした食感と自然な甘みを楽しんでください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?