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がむしゃらに走ってつかみ取る栄光。ビートたけしの下積み時代を描いた映画「浅草キッド」に見る5つの「すごい」ポイント


完成度、100パーセント。

一体何から話していいのかわからないほど、心が震える映画。

ビートたけしの下積み時代を描いた「浅草キッド」


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Netflixの独占配信で、小作品だと思いきや、大泉洋、柳楽優弥の豪華2大キャスト、さらに、才能の塊、劇団ひとりが監督。

すごすぎて伝えたい事がたくさんあるのだが、項目ごとに分けて整理して書いていこうと思う。



1.とにかく柳楽優弥が凄すぎる


とにかく、若かりし頃のビートたけしを演じる柳楽優弥がすご過ぎる。以前から演技力がとんでもないのはわかってはいたが、今回で夢をがむしゃらに追いかけるビートたけしの青年時代を見事に演じきった。

顔が決して似ているわけではないが、監督の劇団ひとりが語っているように、肩を回す癖や目をしばたかせる癖など、たけしの特徴的なしぐさを徹底的に染み込ませ、単なる物まねではなく、気持ちをビートたけしに仕立て上げたそうだ。顔は柳楽優弥なのだけど、ふと出る仕草がビートたけし。

やはり存命している大物芸人、そして仕草に特徴がある人を演じるのはかなりハードルが高いと思うが、柳楽くんは見事にやってのけた。

下っ端のエレベーターボーイから、だんだん売れっ子になっていくあたりの表情の変化も見事。

「赤信号 みんなで渡れば 怖くない」

なんて標語まで飛び出した伝説のツービートの漫才も再現。

元ネタのyoutubeが見つかったので、ぜひ本編を見て、見比べてみてほしい。よく研究されていると思う。

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彼の最高のシーンは、こっそり師匠のタップシューズを履いて、師匠に習ったタップダンスをこっそり踊って喜びがはじけてしまう瞬間。



あんな表情よく出せるなぁと思うほど、生き生きとしている。あまりに素晴らしいシーンで、何度も繰り返し見てしまった。

柳楽優弥くんは、是枝裕和監督の監督作「誰も知らない」で主役に抜擢され、12歳でカンヌ国際映画祭のパルムドールを取ってしまったのだが、その後天才少年としてもてはやされ、役者としての生き方にかなり悩んでいた時代もあったと言う。



そこからひと皮むけて役の幅がどんどん広がり、好青年も不良も、何でもマルチな俳優さんになった。

本当にこれからもずっと応援していきたい俳優さんだ。

そんな演技派の彼の作品の中でも、特にこの「浅草キッド」の役は、彼にとっての「はまり役」と言えるだろう。



2.大泉洋がすごい


Wikipediaによると、大泉洋扮するたけしの師匠、深見千三郎は実在の人物らしい。しかも大泉洋と同じく、北海道出身だったようだ。

大泉洋は、いつも、大泉洋本人の素顔みたいな演技をするのだが、それなのに役にぴったりハマっているという不思議な演技をする。大泉洋が素で演じてもハマる役ばかりオファーされているのか、大泉洋がひたすら上手いのかさえもはや分からない。

確実に大泉洋なんだけど、でも違う人が乗り移ってるような不思議な自然体の演技が今回も炸裂。テレビの波が押し寄せる時代に、従来の舞台にこだわる劇場の師匠を軽やかに、そして情熱的に演じていた。

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大泉洋と柳楽優弥の師弟関係の空気感もよくて、とてつもなく愛情に溢れていてたまらない。

ビートたけしが、この師匠の元を去って月日が経ち、久しぶりに再会するシーンはめちゃくちゃ泣ける。

むかし、大泉洋がやけにテレビに出てきた頃は、なんでこの人はこんなに売れてるんだろうと思ったけど、バラエティに出ていても、ひょうきんな顔をしながら場の空気を読んで、その場を盛り上げることが天才的にうまいし、演技をやればやるほど、全部大泉洋なんだけど全部違う人って言う独特のキャラの立ち位置を持っていることに気づいてとても好きになった。

時々駄作みたいなものに出ちゃうこともあるんだけど、この「浅草キッド」は傑作。大泉洋のはまり役もかなりのものだ。


3.門脇麦がすごい


美人なんだけど、場末の女を演じさせると結構な重みを出してすごみが出る女優さん。

出演作品も本格的なものが多く、注目の女優さんだ。

今回も大泉洋が座長を務めるフランス座で歌手を目指すストリッパーを演じるが、歌のうまさ、そしてストリッパーのなりきりぶり、どれをとっても素晴らしい。

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なんというか、尾野真千子をもっと重くしたような感じというか、この女優さん、先が楽しみ。


4.劇団ひとりの才能がすごい


劇団ひとりは、以前から作家活動をしているのは知っていたが著作などは未読。ただ、息子と一緒にクレヨンしんちゃんの映画「爆睡!ユメミーワールド」を観たとき号泣した。脚本は劇団ひとり。こんなにわたしの心の隙間に入り込んで泣かせに来るのはニクイ、と思った。

クレヨンしんちゃん嫌いでも必見の名作。

劇団ひとりは、何となく芸人のようで芸人じゃない雰囲気は出していたが、監督の才能があるかどうかは知らなかったし興味もなかった。なので本作を観るときもさほど期待はしていなかったのだが、出来の良さに驚いた。店舗が良くて、適度に軽くて、適度に熱い。こんなに暖かく面白く、そして、観た後にじんわりと温まるような気分になれる映画を作れるとは、とてつもない才能を感じた。

もっともっと彼の作品が見たくなった。ぜひどんどん監督業に精を出して欲しいなと思う。



5.Netflixがすごい


これほんとにやばいんじゃないか。

Netflixがどんどん映画制作に手を出している。韓国ドラマを独占配信ももちろんだが、最近は日本国内の有名俳優さんを使ってどんどん映画制作している。

オリジナル独占配信の作品て、そんなに大したことないんじゃないかと思っていたんだけど、本作で覆された。

これは日本の制作会社、配給会社は焦らないといけないと思う。

芸能はK-Popに、家電も外国に、携帯はiPhoneやサムスンに、そして映画製作配給まで外国に持っていかれそうになっている。

確か、私の好きな是枝監督もNetflix独占配信の映画を撮ると言っていたような気がする。

あまり業界に詳しいわけではないが、やはり外資は豊富な資金と、とりあえずやってみようというチャレンジ精神で、クリエイティブなアイデアに多額の資金を投じる下地があるのだろう。

だから監督や製作者がやってみたい事にチャレンジをさしてくれ風土があるのかもしれない。

だってグローバルだし、サブスクで月1000円。私だってなかなかやめられないままズルズルと加入しちゃってるNetflixだもの。

そりゃ資金力がたんまりあるだろう。

Amazon PrimeとNetflixさえあれば、ほとんどのエンタメが楽しめちゃう感じになっているし、これで独占配信とかされたらさらに退会しなくなっちゃうし、真面目に日本のいろいろなコンテンツ、商品等が完全に海外に侵略されていることに、大丈夫か?とかなり不安を覚える。

1ユーザーとしては、のほほんと良いものを享受してればよいのだけど、これからの日本が不安になる。

これからの世界、国の侵略は、領土ではなくマーケティングプロモーションなど個人のユーザがどこにお金を落とすかにかかってくる気がする。

Netflixは本気で世界を狙っている。良作を出してくれるなら私だってじゃんじゃんみる。ほんとに日本の企業は頑張って欲しいなと思ってしまう。

6.がむしゃらに頑張る時期って大事


「浅草キッド」の映画の「すごい!」を5個まとめてみたところで、わたしがこの作品を通じて感じたことをまとめてみようと思う。


ビートたけしが場末の劇場のエレベータボーイから大御所になった話は私くらいの世代であれば皆知っていることだが、

どんな成功者も、やっぱり一時期「がむしゃらな時代」みたいなものがあったんだなと思う。

私の好きなBTSも、売れるまでは合宿所に共同生活で、相部屋に押し込まれ、何年も何年もどぎつい練習をしてきたそうだ。

今は人々に囲まれて名声を得ている人たちでも、必ずがむしゃらな時代はあったはず。

がむしゃらじゃなくてもいいけど、成果を出している人は、とにかく行動を積み重ねて試行錯誤している背景が必ずあるはずだ。

私も毎日が、雑用やパート、育児家事で過ぎていってしまう毎日だが、その中でも目標をもって一つ一つ行動を積み重ねていくことが大事だと思った。

よりよい10年後のために、もっとわたしが望む人生にするために、私らしさをつかむために、わたしもまた、わたしなりの速度でがむしゃらにやってみようと思う。

ちなみに本作、Netflixに入ってない人でも、これだけのために入って1本見てみる価値はある。そのぐらいオススメである。

今日もお読みくださりありがとうございました!




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