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故郷を好きでいたいから、私は実家に戻らないと決めた。


15:00

大きなキャリーケースを引っ提げて故郷に向かうローカル線に乗り込んだ。

発車まであと12分あるとはいえ、座席はがらんとしている。

もともと人混みや他人の話し声が得意ではないから、帰宅ラッシュに当たらないようにこの時間を選んでみたけれど思惑通りだった。
いつもなら周りの会話が耳に入らないように、イヤフォンをして動画や音楽を聴いているけれど、今日は気にする必要はなさそうだ。

15:12

ドアが大きな音を立ててプシューっと閉まり、電車がゆっくりと動き出す。やっぱり乗客は少ない。むしろ私が座ってから一人も増えなかった。

ガタンゴトンと線路を渡る音、天井でクルクル回る扇風機の音、風に揺られて広告の紙が靡く音、それ以外はとても静かで穏やかな車内は、イヤフォンがなくてもとても安心する。



車窓から見える景色が大きなビルから、背の低い住宅街になって、広い畑や田んぼ、青々とした木々が見えてきたら、あっという間に地元に到着。

田舎の空気はほんの少しだけ澄んでいて、電車の扉が開くだびに、草木の深い香りがする。わたしはこの香りが大好きで、これを味わうたびに田舎に帰ってくると言っても過言ではない・・・いやちょっと過言だ。


16:06

電車は実家の最寄り駅に到着した。
乗車時間は54分と長いけれど、何度も帰ってきているのですっかり慣れてきた。でもほんの少しだけお尻は痺れている。


実家の合鍵で誰もいない家に入り、気の持ちよう程度の「ただいま」を玄関に落として2階に登り、自分の部屋に荷物を運び入れた。
誰も使わなくなった自分の部屋は、ほんの少しだけ埃っぽいにおいがして、ベランダにつく窓を開けて換気をした。

新緑が生い茂る山々と、チュンチュンと元気いっぱいに飛び回る鳥たち、遠くの方できれいに鳴いているウグイス。



「田舎来たわ・・・」


誰もいない静かな部屋かつ、大きな電子ピアノとベッドとクローゼットだけが置いてある、ビジネスホテル並みの無機質さ漂う部屋の中で、小さく深呼吸をしながら背伸びをした。



今日わたしは、ある決心をしたくて帰ってきた。


「いまの住まいを手放して実家に戻ること」


安定のしない本業

先行きがまだ見えない副業

導き出せない自分の未来設計


一度だけ原点に立ち戻り、自分を見つめ直したかった。

でもまだ揺らいでいるから実家に帰ってきたのだ。


私が導き出したい「なにか」をみつけに。



だけどここに帰ってきた時点で
わたしの答えはもう明白だった。


ここが好きだ。
だから私は実家に戻らない。


私はこの環境に慣れてしまいたくないと思った。



新緑の山々、広い青空、鳥のさえずりと、澄んだ空気

静かで穏やかでゆったりと進む時間


この癒しと充足感をずっと味わい続けたい。

自分の葛藤や、努力や、苦悩を、ぜんぶ無に返してくれる、この感覚を失いたくない。
きっとこの環境に甘んじず前に進み続けることで、この景色はいつまでも美しく澄んで見えるような気がした。


「帰ってきてよかったな・・・」


長期滞在をする予定だけど、ずっと抱えていた一番大きなわだかまりは、すでに無くなったような気がした。


ちなみに今朝、いつもの散歩コースで立ち寄る神社でおみくじを引いたら「大吉」だった。


「転居・時を置け」だって。


「やっぱりな〜」
と頷いている私の心はもう揺るがなそうだ。


とはいえ、あと数日間はこの充足感にどっぷり浸らせていただき、自分の現実と未来について考えていこうと思う。


まずは一つ
大きな決断ができた帰省1日目のおはなし。





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花崎由佳(はなさきゆか)

フリーフォトグラファーをしながら
メンタル心理カウンセラーもやってます

日々の小さなお悩み、人間関係のお悩み、
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