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パラレルキャリアとライフプランとお金の話

パラレルキャリアを考えるためのヒントについてこれまで2回に分けて書きましたが、ある程度ビジネスのイメージが持ててパラレルキャリアの具体的な実現を考えている人が、どこかのタイミングで必ずぶつかる重大な問いがあります。それは「会社の仕事を(定年まで)続けるべきか、辞めるべきか?辞めるならいつがいいか?」ということです。

この問いに答えるには、何歳ごろまで仕事をしていたいか、(給与と事業所得とを合わせて)いくらくらい稼ぎたいのか、そもそも本当はどんな仕事をしたいのか・・・といった、仕事についての自分の根源的な欲求と向き合って考える必要があります。つまり、(事業主としてではなく)個人としてのライフプランとファイナンシャルプランです。

私はファイナンシャルプランニングの有資格者(AFP認定者)ですが、FPは顧客相談に欠かせないスキルとして、ライフプランとファイナンシャルプランの作成方法を必ず学びます。これは自分のパラレルキャリアを考える上で大変役に立ちました。私は自分のライフプランとファイナンシャルプランを作成しているので、これに自分の事業のビジョンや計画を付け加えて、ことあるごとに見直しています。

もちろん、FPが作成するような精緻なものでなくても、何歳ごろにどんなことをしていたい、そのためにはいくらくらいお金が必要、など大まかに当たりをつけることはできます。ただ、キャリアについて何かしらの転換を考えている人は、キャリアとはあくまでも人生の一部であること、ふたつを切り離して考えることがナンセンスであることをはっきり認識していて、自分の人生を会社や家族に任せず、自分の手で動かしていきたいという気持ちを持っているはずです。それならば、これを機会として一度しっかりしたライフプランとファイナンシャルプランを持っておくことは決して悪くないはずです。ひとたび起業して事業主となれば、事業の計画を立ててその予実を把握していく必要があるわけですから、それを考えることにも繋がります。

以下、ライフプランとファイナンシャルプランを作る上で重要なポイントを考えていきます。

1. 老後を含めた人生計画を考える

人生100年時代ということが言われるようになり、老後を含めた人生計画を考えることの重要性が認識されつつあります。パラレルキャリアを考える上では、このことは殊更重要になります。なぜなら、自分で行う事業には、会社と違って定年がないからです。いつまで働いて、いつごろ引退したいのか?まずは考えてみましょう。その際、自分が本当はどんな仕事をしたいのかという問いは非常に重要です。雇われてする仕事なら、定年まで働いたらあとはゆっくり過ごしたいと思うかもしれませんが、自分が好きで始める事業なら、気力と体力が続く限り続けたいと思うかもしれません。全て自分次第です。

家を買う、または自分の事業のためにオフィスや店舗をもつといった、不動産に関わるイベントは計画に必ず織り込んでおきましょう。不動産をもつことは(買うか借りるかに関わらず)大きな投資なので、タイミングが重要になります。

オフィスや店舗を持つ場合に、最も安定的に場所を確保する方法は自宅と兼ねることです。毎月の賃料の支払いや契約更新といった事務的な手続きを省略できますし、何より自分の事業のために最適化したスペースを持てるからです。
他方、オフィスや店舗を自己所有するということはそれだけ身重になることを意味します。手放したい、より良い立地に移転したいといったときには足かせにもなり得ますし、何より所有するための経済的負担(ローンなど)があります。身軽さを重視するのであれば、賃貸物件にテナントとして入居する方が良いかもしれません。

こういった点を考慮に入れて、もしもオフィスや店舗を持つならいつごろのタイミングか、買うのか借りるのか、また、可能ならそのときの資金調達の方法も含めてイメージしておくとより具体的な良い計画になります。

また、家族がいる人であれば、当然ながら家族の計画も考慮に入れたプランを考える必要があります。家族のイベントは、キャリアや事業で重要な決断をするタイミングに影響する可能性があるからです。家計の稼ぎ手としては、例えばこどもが進学を控えてまとまった資金が必要になることが分かっている年には、事業においては大きな投資は避けて地道に売上を拡大しようと考えるかもしれません。また、配偶者やパートナーも、家計や自身のキャリアに関して何か計画を持っているかもしれませんから、よくすり合わせておく必要があります。何より、事前に思いや計画を伝えてあらかじめよく話し合っておくことで、家族からキャリアや起業に関する理解や協力を得られる可能性は大きく高まります。この点は決して小さく見積もらない方がよいと私は考えています。

2. いくら稼ぎたいかを考える

自分が本当はいくら稼ぎたいのか、制約を取り払って自由に考えたことはありますか?

会社員として働いていると、会社から支払われる給与がどうしても全ての計画の出発点になってしまいます。毎月決まった額が支払われますし、多くの会社において、だいたい何年でどれくらいの役職に就いてどれくらい給与が上がるかも分かってしまうからです。良くも悪くも見通しがきくのです。もちろん会社員としてのみ働いていればそれは仕方がないことです。

しかし自分の事業を始めるときにその制約はありません。究極的には、稼ぎたい金額から逆算して、それだけ稼げるようにビジネスを大きくする方法を考えていけば良いのです。というより、その順番で考えないと事業の計画は立てられないのです。企業における中期経営計画も、企業として中期的に目指したい姿と規模感の目標をまず持って、そこから毎年の事業計画へとブレイクダウンしていきます。実態としては、大企業になるほど現状からの積み上げ式の計画になりがちですが、本来は逆で、まず目標があるべきなのです。

制約を取り払って、思い切って、自分が本当はいくら稼ぎたいのか考えてみましょう。

会社員としての今の自分の給与を超えたい?
社長の給与を超えたい?
それとも、ザッカーバーグを超えたい?

決して恥ずかしいなどと思う必要はありません。GAFAはいずれも20代で起業した創業者が1代で築き上げた会社です。それが今や世界の経済を牽引しているのです。夢物語ではなく、21世紀の地球上で実際に起こった出来事です。
ただし、彼らはビリオネアになりたくて起業したわけではないようです。むしろお金のことなど脇に置いて、自分が実現したいと思う世界を実現するためにひたすら考え抜いてやり切ったのです。その結果としての経営者報酬に過ぎません。
ですから金銭的な目標は、最終的な目的としてではなく、あくまでも、自分のビジネスをどんな規模の事業に育てたいかの指標として考えると良いでしょう。

3. 会社からの給与と事業から得る利益を考える

自分がどれくらい稼ぎたいのかイメージできたら、いよいよそれを計画に落とし込みます。

例えば10年後に2,000万円稼いでいたい、とイメージしたとします。(あくまでも例です。目標が大きいほど良いというものではありません。自分にとって納得の行く金額である必要があります)
会社員とのパラレルキャリアを考える上では、まず、10年後の自分の、会社員としての給与を試算します。大まかで大丈夫です(人事制度と給与の額表があれば概算できるでしょう)。仮に900万円とします。その場合、2,000-900=1,100万円が事業で10年後に目指す利益目標になります。

となれば、あとはこの目標を10年で達成するために、どのようなペースで事業を育てる必要があるか、自ずと見えますね。単純計算すれば、1年ごとに110万円ずつ利益を増やしていけば良いことになります。(さらっと書いていますが決して簡単な目標ではありません)

この目標は「利益」目標であって「収益」目標ではないことに留意しましょう。事業には経費がかかりますし、黒字なら事業所得としての所得税が、また法人化すれば黒字・赤字にかかわらず法人税が生じます。これらを差し引いた数字が先ほどの1,100万円になるように事業計画を立てるのです。

例えば店舗ビジネスをやろうと思えば、経費や設備投資の費用が大きくなる分、上記の利益を出すために必要な売上は大きくなります。他方、設備投資があまり必要ないビジネスであれば利益率は高くなるので、利益より少し多い売上を目指すことになります。どちらが良いということではありません。自分の事業です。自分が実現したいことが何なのかを考え抜いていく中で選ぶことになります。

また、これを考えていくと、いつが自分にとっての会社の辞めどきなのかが見えてくる場合があります。例えば会社員の給与と事業の利益が逆転したら、会社を辞めて自分のビジネスに専念しよう、といった具合にです。
あるいは、新型コロナウィルスの流行が経済に与えた打撃を見て、むしろ安定した会社員の仕事は定年まで続けようという前提を改めて持った人もいるかもしれません。それならばそれを自分の譲れない制約条件として、その中でどうやって自分のビジネスをめいっぱい拡大できるかを考えていくのです。それこそが起業の醍醐味です。

このようにして大まかな事業計画を立てたら、あとはその利益をどのようにして得るかを、サービスやプロダクト作りの中に反映させていきます。ここからはもうファイナンシャルプランニングの域を出て、事業戦略そのものを考えることになっていきます。

4. 立てた計画はことあるごとに見直す

ところで、このようにして立てた計画をその通りに実行できる人はまずいません。企業の中期経営計画も同じことです。ですから、計画は都度、実態を踏まえて見直していく必要があります。計画が順調に進めば、思い切った設備投資や会社の退職の計画などを当初の予定より早めることになるかもしれませんし、逆に思ったように進まなければそれらを遅らせる必要があるかもしれません。あるいは、家族の誰かに予期しない出来事が起こって事業の計画に影響することもあるでしょう。

計画を持つことは大事ですが、計画に縛られすぎることはかえって事業に悪影響を及ぼします。状況が変わったら、必要に応じてよりアグレッシブな計画に、あるいは無理のない計画に修正していく柔軟さも経営には求められます。それもまた自分の手で事業を営む面白さと言えるのではないでしょうか。

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ライフイベントやコロナ禍をきっかけに自分の働き方を考え直したいと考えている方のために、パラレルキャリアのためのライフプラン・ファイナンシャルプラン作成をお手伝いします。モニターになっていただける方、関心のある方は下記メールアドレス宛にご連絡ください。

パラレルキャリアのためのパーソナル・ファイナンス研究所(私の個人プロジェクトです)
Parallelcareer.finance@gmail.com

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