【絵本紹介】6.23は沖縄慰霊の日~沖縄戦に関する絵本~
6月23日は沖縄慰霊の日。
1945年6月23日に第32軍司令官牛島満中将、長勇参謀長が自決し、旧大日本帝国陸軍司令部の組織的戦闘が終結したとされている日です。
その年の4月1日に沖縄島のほぼ真ん中にアメリカ軍が上陸し、沖縄は約3か月近くに渡って、日本で唯一の地上戦の舞台になったのでした。
沖縄戦の詳しいことはここでは述べませんが、そんなに長い間一般の住民も「鉄の暴風」と呼ばれる空から陸からの攻撃にさらされていたこと、沖縄県民の4人に1人が亡くなったと言われていることを、私たちは同じ日本人として知り、語り伝えていかなければならないと思っています。
宮内庁のHPには、「忘れてはならない4つの日」として、以下の4つが挙げられています。
毎年6月23日 沖縄慰霊の日
毎年8月6日 広島原爆の日
毎年8月9日 長崎原爆の日
毎年8月15日 終戦記念日
https://www.kunaicho.go.jp/about/gokomu/odemashi/irei.html
私の住む大阪では、4つのうち沖縄慰霊の日だけが課業中にあたっています。
以前勤務していた市は沖縄市と兄妹都市だったので、給食のメニューに沖縄の食べ物が時々登場していました。
とりわけ、毎年6月23日は「沖縄慰霊の日メニュー」として、沖縄にちなんだメニューになっていました。
そんな、なにかのきっかけで「沖縄」を話題にして、子どもたちにも知っていってほしいですね。
きっかけの一つとして、今回は沖縄戦や平和に関わる絵本をご紹介します。
■なきむし せいとく 沖縄戦にまきこまれた少年の物語(たじまゆきひこ 作 童心社)
ここは、1945年の沖縄です。
ぼくの名前は、なかませいとく。
いつもないているので、みんなから「なちぶー」とよばれています。
3月のおわりごろ、アメリカのぐんかんが島をとりかこみ、ぼくたちは、南へにげることになりました……。
アメリカ軍が上陸した4月から2か月以上逃げまどった日々を、田島征彦さんが、せいとくの視点で描いています。
あまりにも壮絶な経験の末、せいとくは泣くことすらできなくなってしまうのです。
だれを頼ることもできず、逃げ続けた末に母親が亡くなるのを目の当たりにする。
そんなことは今の日本ではあり得ませんが、世界のどこかで同じようなできごとが起きていることに、思い致さずにはいられません。
■りゅう子の白い旗 沖縄いくさものがたり(新川明 文 儀間比呂志 版画 築地書館)
りゅう子の島では、日本軍とアメリカ軍が島を焼きつくす戦争をしていました。
りゅう子とお母さん、弟の3人は、家を捨てて南へ逃げることにしました。
砲弾が飛び交う中を逃げ、かくれているところを日本兵に追い出され、ついにはお母さんと弟が機関銃によって亡くなります。
独りぼっちになったりゅう子は、さまよった末に入ったガマで……。
のちに「白旗の少女」として有名になる、白旗を掲げて歩く少女の映像から、作者がフィクションとして書いたお話です。
(作者が初めてその映像を見た時は、白旗の少女が誰か、まだわかっていなかったそうです)
なので、「白旗の少女」である比嘉富子さんの体験というわけではありません。
それはどうあれ、せいとく(『なきむしせいとく』の主人公)やりゅう子のような体験をした子どもたちが数多くいたことは、こういう絵本を通して伝えていくべきだなあと思います。
■マブニのアンマー ―おきなわの母―(赤座憲久 作 北島新平 絵 篠崎書林)
戦争の終わった年、久しぶりに那覇に戻ってきたマツさんは、息子の昭夫の戦死を知りました。
それからというもの、マツさんは昭夫の骨を探しに、毎日(本島南部の)マブニ(摩文仁)に出かけていきました。
毎日毎日出かけては骨を拾い集めて話しかけるマツさんに、いつしか骨が自分のことを話すようになりました。
そうして、11年が過ぎて……。
息子の死を知ったマツさんの
「どんなことがあろうと、ヌチドゥタカラ(命こそ宝)、いのちはたいせつというのはもちろん、おもうことさえゆるされなかったなんて……。」
という言葉は、戦争で大切な人を失った人たちの、心の叫びだったに違いありません。
文中に何度か出てくる、沖縄のわらべうたも合わせて聴きたいものです。
(今は絶版のようですので、図書館などで探してみてくださいね。びっくりのお値段なので(;'∀'))
文中でマツさんが歌っているわらべうた「いったーあんまー まーかいが」
■わすれたって、いいんだよ(上條さなえ 作 たるいしまこ 絵 光村教育図書)
わたしのうちは、神奈川県で沖縄料理店をやっている。
沖縄生まれのおばあちゃんが、ママとふたりでやっている。
おばあちゃんはおいしい料理がたくさん作れるのに、なぜか「ムーチーだけは作れない」と言う。
それに、自分のたんじょう日を「わすれてしまったさー」と言う。
そんなおばあちゃんは最近わすれることがふえて、病院で「ニンチショウかも」と言われて……。
(*「ムーチー」とは、餅粉をこね、白糖や黒糖、紅芋などで味付けを行い、月桃の葉で巻き、蒸して作る(by Wikipedia)沖縄のお菓子です)
おばあちゃんが誕生日を「忘れた」って言ったり、「ムーチーは作れない」って言ったりする背景には、幼い頃体験した沖縄での戦争にまつわるできごとがあったんですね。
いろんなことをわすれていくおばあちゃんに
「わすれたっていいんだよ。わたしたちがおぼえていればいいんだもん。」
と言うわたし。
これって、大切なメッセージですね。
「わたしたちがおぼえていればいい」と言えるだけのものを伝えてもらっている、そんな関係を言葉の背後に感じ、しみじみとしました。
■へいわってすてきだね(安里有生 詩 長谷川義史 絵 ブロンズ新社)
へいわってなにかな。
ぼくは、かんがえたよ。
おともだちとなかよし。
かぞくが、げんき。
えがおであそぶ。
……。
2013年6月23日の「沖縄全戦没者追悼式」で、当時与那国島の小学校1年生だった作者の安里有生くんが朗読した詩に、長谷川義史さんが絵を描いた絵本です。
小学校1年生の目から見た「平和」が、シンプルな言葉で綴られていて、私たちの心にすっと入ってきます。
「みんなのこころから、へいわがうまれるんだね。」
という言葉は、真理だなあと思うのです。
平和って、ほんとうに身近なところから始まっているんですね。
巻末の、長谷川義史さんのあとがきも必読です。
*この絵本は、拙著『子どもの心に種をまく 子どもの心に種をまく 笑顔あふれる学級づくりに役立つ読み聞かせ絵本: 道徳、人権の授業におすすめの絵本88冊』の中でもご紹介しています。(以下のリンクより)
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電子書籍を出版しています。
子どもたちの心に種をまくように、ちょっと心に響いたり、何か行動してみようと思えたり、そんなきっかけになる絵本を集めました。
主に小学校の教科の学習の中で、関連づけて読み聞かせができる絵本を紹介しています。
それぞれの季節に合わせて読み聞かせできる絵本を紹介しています。
子どもたちにも人気の、読み聞かせで鉄板ともいえる絵本を紹介しています。
なぜ小学校で読み聞かせをするのがいいのか、学級づくりにどう役立つのか、そんなことも書いています。
2021年9月に出版した、初めての電子書籍です。
子育て中であり仕事にも忙しかった小学校の先生の私が、少しずつ意識を変え、生活を変え、夢を叶えていったお話を書いています。
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