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【本】組織内の分断線を表す、フォールトラインとは?

フォールトラインという言葉を聞いたことはありますか?

「フォールトライン」とは、Fault(断層)とLine(線)から成る言葉で、日本語では主に「断層線」と訳されます。経営学では、一つのグループが属性の違いによって潜在的に複数のサブグループに分断されているとき、サブグループ間の境界線のことを、組織内の“断層”に例えて「フォールトライン」と呼んでいます。

日本の人事部より抜粋

ダイバーシティ促進!これからは多様性の時代だ!と叫ばれていますが、ダイバーシティが進んだ組織では、メンバーの多様な属性によって「サブグループ化」が起こるといわれています。

サブグループは、何かのきっかけ(トリガー)によって、顕在化し、組織内に分断線(フォールトライン)を生じさせるものでもあるのです。

組織やコミュニティの中でなぜフォールトラインが生じるのか、そもそもフォールトラインとは何なのか、ということが気になり、この本を購入し読み始めています。

下記の本をもとに、フォールトラインについてまとめていこうと思います。

今回は、サブグループとは何か、フォールトラインとは何か、というお話が中心で、サブグループとフォールとラインがどんな影響を及ぼすか、ということは別の機会にまとめようと思います。


サブグループとは何か

フォールトラインを理解する上で、サブグループの理解は欠かせません。

サブグループには様々な定義があり、「成員に機会を与えるもの」(Mannix,1993)、「知識を獲得し解釈する程度を形成するもの」(Gibson &Vermeulem,2003)などがあります。

この本では、

「外から規定されたものではなく、自然発生的にワークチームのメンバーの一部から生まれ、かつ成員間に、集団内の他の成員間とは別の独自の相互依存症がある集団」

『フォールトライン』p23

と定義しています。

簡単にいうと、ワークチーム内で自然にできるものであり、かつメンバー同士が相乗効果を意図的に発揮している状態の集団、ということかなと理解しています。

サブグループの分類と属性

サブグループには様々な種類があります。その種類を把握するにはどのような属性が、どのようなサブグループを生み出すのかを理解することが重要だといわれています。

【属性について】

多様性3類型(Harrison &Klein)
Harrison &Klein(2007)は、距離、種類、格差の3軸でサブグループを見ています。

距離:ユニット内で成員が互いに一つの連続的な属性S(lateral continuum S)において、異なる状態を指す。例えば、チームの目標やプロセスに関する意見、信念、価値観、態度などが異なることをいう。

種類:ユニット内で、成員が質的に互いに異なる状態を指す。

格差:社会的に価値のある資源D(例えば給与、パワーなど)に着目する。

『フォールトライン』p23

このHarrison &Klein(2007)の研究の流れを汲んで、サブグループを分類したのがCarton &Cummings(2012)です。

【サブグループについて】

サブグループの3分類Carton &Cummings(2012)
Carton &Cummings(2012)は、アイデンティティに基づくサブグループ、資源に基づくサブグループ、知識に基づくサブグループの3種類に分類されると述べています。

アイデンティティに基づくサブグループ:社会的アイデンティティ理論に依拠するもの。「共有された社会的属性や価値観」を元に、集団内に作られる。性別や年齢に基づくサブグループがこれに該当する。

資源に基づくサブグループ:社会的支配理論に依拠するもの。資源について主張できるサブグループの能力には違いがあり、その能力の違いに基づくヒエラルキーに沿って差別化されるサブグループを指す。派閥、連合、連立などが該当する。

知識に基づくサブグループ:組織進化論に依拠するもの。「知識」に基づいて差別化されるサブグループである。同期入社仲間などが該当する。

『フォールトライン』p25-28

フォールトラインとサブグループの違い

フォールトラインは、複数の属性の構成から、サブグループができると仮定し、集団内にできるサブグループがどれくらい強く分断されるのかを表す、便宜的な「指標」である、といわれています。(p47)

一方でサブグループとは、フォールトラインの産物として生じるものです。

フォールトラインは、あくまでも複数の属性の構成を元に、サブグループができると「仮定」する概念であり、フォールトラインは実際にサブグループが生じているかよりも、サブグループの出現しやすさを示しているとも言えます。(p47)

フォールトラインの属性ごとにどのようなサブグループが形成されるのか

フォールトラインの元になる「属性」は、主に業務に関連するものか(タスク関連属性)、それとも、業務とは関係なく社会的カテゴリー化を生じさせるものか(社会的カテゴリー属性)という基準で分類できるそうです。

上記でも述べた、Carton &Cummings(2012)のサブグループの3分類を元に、どのような属性がどのような場合にアイデンティティを顕在化させ、サブグループ化が知覚されるのかをみていきましょう。

①距離(価値観、態度など意見や立場の異なるメンバー間の隔たり)に基づくフォールトラインは、アイデンティティに基づくサブグループを形成しやすい。→自分と同じ価値観を共有している人に対して愛着を感じやすくなる。

②格差(給与や年功などパワーやステータスのヒエラルキー)に基づくフォールトラインは、集団内にヒエラルキーを作るような属性から作られる。→公正性が非対称的に近くされがちで、資源に基づくサブグループを形成しやすい。

③種類(情報、知識、経験の異なる名義的な分類を指す)に基づくフォールトラインは、知識や専門技術等の属性から作られる。→知識や専門技術等の属性から作られる。

『フォールトライン』p51-52

属性によって違うサブグループが形成されるということも、なんとなくわかっていてもこうやって整理すると「なるほどな」と思わされます。

フォールトラインの元になる属性が、属性エレメント(要素)ごとにどのようにパフォーマンスに影響を与えるか、についてはまた次のnoteでまとめたいと思います!

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