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<ラグビー>スコットランド対日本、イングランド対南アフリカ,ウェールズ対オーストラリア、フランス対オールブラックス、それぞれの結果

毎週盛りだくさんのテストマッチとなった,オータムネーションズシリーズも、今週が最後。

スコットランド29-20日本

7月の遠征で良いゲームをし、オーストラリアとのゲームでも惜敗だったため、ティア1として安定した試合をできると想定して、ヨーロッパに旅立った日本代表。しかし、オールブラックスにも勝ったほど絶好調のアイルランドに粉砕され、次のティア2として楽観視していたポルトガルに苦戦した。そして、アイルランドに負けず好調を維持しているスコットランドに、どこまで良いゲームをできるかが課題となった。

6分,スコットランド11番WTBデューハン・ファンデルメルヴァがトライ。10番SOフィン・ラッセルのコンバージョン失敗で,5-0。
11分,日本代表10番SO松田力也がPG,5-3。
スコットランドは,応援歌「フラワー・オブ・スコットランド」のように花開くラグビーができていないとコメントされる一方,日本が善戦している。
26分,松田PG,5-6。
28分,スコットランド15番FBスチュアート・ホッグがトライ。ラッセルのコンバージョン成功で,12-6。ホッグは,イアン・スミス及びトニー・ステンジャーを抜く通算25トライのスコットランド代表最多記録を達成した。
40分,スコットランド14番WTBダーシー・グラハムがトライ。ラッセルのコンバージョン成功で,19-6。

前半、スコットランド19(3T2C)-日本6(2P)
24分までは善戦したものの,その後2トライを取られて,やはり実力差を実感させている。2019年より,スコットランドはチーム力を上げ,日本は下げている上に,スコットランドのホームでは,やはり厳しいものがある。

43分,スコットランド1番PRジェイミー・ブハッティが,タックル後に退転しないことを繰り返してシンビン。
43分,松田がPG,19-9。
47分,松田がPG,19-12。
55分,スコットランド16番HOスチュアート・マキナリーがトライ。ラッセルのコンバージョン成功で,26-12。
64分,日本代表20番FLテヴィタ・タタフがインゴールに入り,TMOとなるが,トライ。松田のコンバージョン失敗で,26-17。
72分,松田がPG,26-20。
80分,ラッセルがPG,29-20。

後半、スコットランド10(1T1C1P)-日本14(1T3P)
合計、スコットランド29(4T3C1P)-日本20(1T5P)
9点差の負けで,79分までは6点差に迫っていたことから,日本としてはオーストラリア戦に次いで善戦した結果となった。アイルランド戦の惨敗とポルトガル戦の辛勝で,やや評価を下げていた日本だが,このスコットランド戦で少しは評判を取り戻すことができたかも知れない。


イングランド27-26南アフリカ

両チームともに似たようなFWのフィジカルとPGを中心とした戦い方をする。そして、2019年RWC決勝の再現となった。

イングランドは,HOジェイミー・ジョージとSO/CTBでキャプテンのオウウェン・ファレルが怪我で欠場した。キャプテン代行は,6番FLコートニー・ロウズが代行した。16番HOのリザーブに入ったニック・ドリーは,これが初キャップとなる。

通算対戦成績は,43戦,南アフリカ26勝,イングランド15勝,2引き分け。直近の対戦は,2019年RWC決勝で,南アフリカが32-12で圧勝した。南アフリカは,この試合に勝てば,無敗の遠征となる。

ジャック・ニーナバー監督は,猛烈なFW戦になると想定しつつ,イングランドが新たな戦術を用意してくると予想していた。

7分,イングランド12番CTBマヌー・ツイランギがトライ。10番SOマーカス・スミスのコンバージョン成功で,7-0。
14分,南アフリカ10番SOハンドレ・ポラードがPG,7-3。
17分,イングランド15番FBフェディー・スチュアートがトライ。スミスのコンバージョン成功で,14-3。
22分,ポラードがPG,14-6。
24分,スミスがPG,17-6。
26分,ポラードがPG,17-9。
30分,ポラードがPG,17-12。

前半、イングランド17(2T2C1P)-南アフリカ12(4P)
イングランドが2トライで先行するが,南アフリカがPGで着実に追いついている。
南アフリカのリザーブメンバーは,先発以上に強いことから「ボンブスコッド(爆弾要員)」と呼ばれている。

44分,ポラードがPG失敗。
49分,ポラードがPG失敗。
55分,ポラードがPG,17-15。
63分,南アフリカ22番SOエルトン・ヤンチースがPG,17-18。
65分,イングランド22番CTBラッフィ・カークがトライ。スミスのコンバージョン成功で,24-18。
68分,イングランド18番PRウィル・スチュアートが,チーム反則の繰り返しで,シンビン。
69分,南アフリカ11番WTBマカゾレ・マピンピがトライ。ヤンチースのコンバージョン失敗で,24-23。
73分,南アフリカ23番FBフランス・ステインがPG,24-26。
76分,南アフリカ6番FLでキャプテンのシヤ・コリシが,イングランド14番WTBジョー・マーチャントに空中でタックルして,シンビン。
80分,スミスがPG,27-26。

後半、イングランド10(1T1C1P)-南アフリカ14(1T3P)
合計、イングランド27(3T3C2P)-南アフリカ26(1T7P)
結局,ポラードがPGを外したこととヤンチースがコンバージョンを外したことが,南アフリカの負けにつながった。イングランドは,キャプテンのSOオウウェン・ファレルが不在の中で,南アフリカに勝利したことは大きい。エディ・ジョーンズの高笑いが聞こえる。


ウェールズ29-28オーストラリア

調子を落としているオーストラリアとしては、ここで一矢報いたいゲーム。デイヴ・レニー監督は,キャプテンのFLマイケル・フーパーを欠いてしまった。キャプテン代行は,1番PRジェイムズ・スリッパ-を指名した。また,フーパーに代わる7番FLには,NZ人のピート・サムを入れた。

ウェールズのNZ人監督ウェイン・ピヴァックは,SHにトモス・ウィリアムス,11番WTBジョシュ・アダムズが怪我から戻ってきた。そして,連敗しているオーストラリアに用心しつつ,ホームの観客に熱烈な声援を呼びかけていた。

3分,オーストラリア14番WTBアンドリュウ・ケラウェイがトライ。10番SOジェイムズ・オコナーのコンバージョン成功で,0-7。
6分,ウェールズ10番SOダン・ビガーがPG,3-7。
14分,オーストラリア8番NO.8ロブ・ヴァレティニが,ウェールズ4番LOアダム・ベアードに頭対頭のタックルをして,レッドカード(退場)。
16分,ビガーがPG,6-7。
19分,オコナーがPG,6-10。
22分,オーストラリア15番FBカートリー・ビールが,インテンショナルノッコンをして,シンビン。オーストラリアは13人に。
23分,ウェールズ2番HOライアン・エリアスがトライ。ビガーのコンバージョン成功で,13-10。
28分,オコナーがPG,13-13。
32分,ウェールズ11番WTBジョシュ・アダムズとオーストラリア14番WTBアンドリュウ・ケラウェイが,空中で衝突してTMO。ケラウェイは脳震盪になったが,アダムズに反則はなく,ケラウェイが反則ありとして,ウェールズのPKとなる。
38分,ビガーがPG,16-13。

前半、ウェールズ16(1T1C3P)-オーストラリア13(1T1C2P)
オーストラリアは,レッドカードとシンビンが続き,数的不利な状態が続く。疲労の溜まる後半に影響が出てくると思われる。

48分,ウェールズ13番CTBニック・トンプキンスが,オーストラリアFBビールと同じインテンショナルノッコンをしたのち,そのボールを拾ってトライ。オーストラリアとウェールズの選手は皆,反則と判断してプレーを止めていたが,レフェリーのマイク・アダムソンはプレーオンと判定。これは,明かにミスジャッジだった。ビガーのコンバージョン成功で,23-13。
58分,ウェールズ17番PRガレス・トーマスが,オーストラリア18番PRアラン・アラアラトアの頭にタックルをして,TMOの結果,シンビン。これで,10分間は14人対14人の戦いになった。
60分,オーストラリア9番SHニック・ホワイトがトライ。オコナーのコンバージョン成功で,23-20。
65分,ビガーがPG,26-20。
70分,オーストラリア11番WTBフィリポ・ダウグヌがトライ。オコナーのコンバージョン失敗で,26-25。
78分,オーストラリア15番FBカートリー・ビールが40mのPG成功,26-28。
79分,ウェールズ15番FBリアム・ウィリアムスが,ゴールラインにあと1mと迫るが,トライならず。
82分,ウェールズ22番SOリーズ・プリーストランドがPG,29-28。

後半、ウェールズ13(1T1C2P)-オーストラリア15(2T1C1P)
合計、ウェールズ29(2T2C5P)-オーストラリア28(3T2C3P)

オーストラリアは,ザ・ラグビーチャンピンシップで南アフリカに連勝して,一時は世界トップレベルに持ち直したと見られたが,結局オータムネーションズシリーズでは,日本に勝利した以外は,スコットランド,イングランド,ウェールズに連敗してしまい,調子を落としてしまった。

一方のウェールズは,オールブラックスに完敗したものの,南アフリカに惜敗,フィジーに完勝,オーストラリアに辛勝と,どうにか面目を保った結果となった。


フランス40-25オールブラックス

アイルランドに負けて、今シーズン2敗目となったオールブラックス。2023年RWC開幕戦の前哨戦ともなるフランス相手に、負けられない。

オールブラックスは,あと2トライを記録すれば,初のシーズン100トライを達成する。これまでの記録は,2003年のアルゼンチンが記録した92トライだが,オールブラックスは既にイタリア戦でこの記録を破っている。また,ウィル・ジョーダンは,現在年間15トライを記録し,2003年に記録したジョー・ロコゾコの17トライに迫っている。この試合でハットトリックを達成すれば,新記録だ。

フランスがホームで最後のオールブラックスに勝ったのは,2000年の42-33に遡る。また,現在フランスはオールブラックスに14連敗中で,これはフランスが1908~1927年にウェールズ相手に記録した15連敗に迫るものとなっている。

フランスは,シックスネーションズではスタッド・ドゥ・フランセのゲームで強さを発揮しているが,オールブラックスはこのグランドのフランスとの対戦で,6勝1引き分けと無敗。

オールブラックスは,フランスの青いジャージと色が重なるため,セカンドジャージーとして白を着用する。また,先週はリメンバーズデー(追悼の日)という第1次及び第2次世界大戦で亡くなった人を追悼する式典があったが,オールブラックスは,この試合のトロフィー名になっているキャプテン,デイヴ・ギャラハーを含む13人のオールブラックスが亡くなっている。そのため,今月はTVキャスターや政治家が胸に付けているポピー(忘れな草,追悼に意味を持つ)を象ったものを,袖に付ける。

キャプテン代行のLOサムエル・ホワイトロックは,50~60キャップを得た選手でも白いジャージを着る機会はあまりない上に,先人を偲ぶポピーの袖章を付けたこの試合のジャージは,非常に貴重なものになる。さらに今シーズン最後のゲームである他,前週のアイルランド戦の負けという強いモチベーションがあるため,チームは相当に強い意気込みを持っていると述べている。

3分,フランスが,ゴール前モールから2番HOペアト・マウヴァカがトライ。15番FBメルヴァン・ジャミネのコンバージョン成功で,7-0。フランスがモールでトライを取るのは珍しく,まさに「イメージチェンジ」そのもの。
7分,オールブラックス15番FBジョルディ・バレットがPG,7-3。
10分,バレットがPG,7-6。
フランスは,キックオフの際に,オールブラックス11番WTBジョージ・ブリッジをターゲットにしている。
12分,フランスが右中間ラックから10番SOロメイン・ヌタマックが個人技で抜いてトライ。ジャミネのコンバージョン成功で,14-6。オールブラックスのディフェンスが淡泊すぎる。
19分,フランスSOロメイン・ヌタマックがDG失敗。
ここまで,オールブラックスに小さなミスが目立ち,それを得点につなげられている。
26分,ジャミネがPG,17-6。
27分,オールブラックス13番CTBリエコ・イオアネが,15番FBジョルディ・バレットのノッコンからのターンオーバーで自陣インゴールに入られたものを,トライセービングタックル。
32分,フランスが,再びゴール前モールから2番HOマウヴァカが2つ目のトライ。ジャミネのコンバージョン成功で,24-6。オールブラックスのモールディフェンスに課題あり。
38分,オールブラックスがゴール前でPKを得るが,PGを狙わずにタッチを蹴る。
39分,オールブラックスが,ゴール前ラインアウトから2番HOダン・コールズが個人技で抜け,4番LOブロディー・レタリックにつないだボールがノッコンとなり,ノートライ。

前半、フランス24(3T3C1P)-オールブラックス6(2P)
フランスとしては,想像以上の最高のスタートを切った。オールブラックスは,アイルランド戦の負けを引きずったようなミスが出ている。これまでのオールブラックスは,負けた試合の次は,猛烈に強くなっているが,それが全く出てこない。これほど弱いオールブラックスは,2009年以来のことだろう。

昨年もアルゼンチンに初めて負けるなど疑問符が付いていたが,今年はザ・ラグビーチャンピンシップの優勝で錯覚してしまったようだ。もちろん,長期遠征とCOVID19による隔離という軽視できないハンデもあり,そのためのローテーションで2チーム制としたことは評価できるが,ここまでのプレー振りからは,イアン・フォスター監督の手腕に大きな疑問を持たざるを得ない。

2023年まで契約を延長しているが,年内にも解任して,スコット・ロバートソンを監督にして,コーチ陣を入れ替える可能性が大きく浮上してきた。また,そうしないとオールブラックスは,2023年RWCで優勝できるチームへ成長するために必要な改革ができそうもない。

47分,オールブラックスが,12番CTBクイン・ツパエアの突破からできたゴール前ラックから,9番SHアーロン・スミスのカットパスを受けた15番FBジョルディ・バレットがトライ。バレットのコンバージョン失敗で,24-11。
51分,オールブラックスが,再び12番CTBツパエアの突破からつないで,13番CTBリエコ・イオアネが個人技で40mを走りきってトライ。バレットのコンバージョン成功で,24-18。
54分,オールブラックス6番FLアキラ・イオアネとフランス8番NO.8グレゴリー・オルドリットがやりあう。
55分,ジャミネがPG,27-18。
59分,オールブラックスが,ゴール前ラインアウトからモール。16番HOサミソニ・タウケイアホが抜け出したゴール前ラックから,7番FLアーディ・サヴェアがピック&ゴーでトライ。バレットのコンバージョン成功で,27-25。
63分,オールブラックス7番FLアーディ・サヴェアが,チーム反則の繰り返しでシンビン。ここでサヴェアをシンビンにするあたり,アンチオールブラックスのイングランド人レフェリーのウェイン・バーンズの面目躍如たるものがある。まるで,2017年ライオンズとの第3テストマッチで,ライオンズの誰も見てもそうとしか思えないアクシデンタルオフサイドをたんなるノッコンに曲解して,オールブラックスに勝利させなかったことを思い出させる。
64分,ジャミネがPG,30-25。
68分,フランス14番WTBダミアン・ペノーがトライ。ジャミネのコンバージョン成功で,37-25。オールブラックス23番デイヴィット・ハヴィリのパスをインターセプトされた。ハヴィリが,大外にいるFBジョルディ・バレットにロングパスを通していたらトライにつながっただけに,非常に残念なプレーだった。ハヴィリはこれを良い経験にしてもらいたい。
81分,ジャミネがPG,40-25。

後半、フランス16(1T1C3P)-オールブラックス19(3T2C)
合計、フランス40(4T4C4P)-オールブラックス25(3T2C2P)
これでフランスは,相当大きな自信をつけたことだろう。そして,チームが2023年RWC優勝へ大きく前進したことを,喜ぶことになった。

オールブラックスは,もう普通のチームになってしまったのかも知れない。そして,これからのラグビーは,南半球のエンターテイメント志向ではなく,北半球のただ勝てば良いという面白くないラグビーが主流になってくるのだろうか。それは,ラグビーの発展にとって,決して良いことではないと思うが。

ただ,ここで負けたことは,昨シーズンから疑問が生じていたイアン・フォスターとそのコーチ陣を,更迭する良いチャンスになったのではないか。オールブラックスは,2007年RWC敗退を良い教訓として,2011年と2015年RWCを連覇する程素晴らしいチームに成長し続けてきた。しかし,2019年RWCではチームも戦術も限界に来ていたため,2020年からはそれまでの方法を一新する必要があった。それが,アシスタントコーチであったフォスターを昇格させることで,チームの方向性を継続性することを選択したが,結果論ではあるが,オールブラックスとしてはチームを再生する必要があったことが,ここに来て判明したのではないか。

来シーズン以降のオールブラックスは,スコット・ロバートソンを監督に据え,コーチ陣を一新して,新たなスコッドと新たな戦術で,世界に挑戦して欲しいと強く願う。それこそが,オールブラックスのオールブラックスたる所以なのだから。ちなみに,NZヘラルドの読者投票では,81%がフォスター更迭・ロビンソン就任を願っている。

この日はNZにとって最悪の日となった。第1次世界大戦のデイヴ・ギャラハーのように,オールブラックスはグランドで戦死し,東京オリンピックのセブンズで金メダルを取ったものの,世代交代に失敗したブラックファーンズは,FWだけが強いイングランドに4-12,56-15と連敗し,同様にFWしか使える選手がいないフランスに,38-13,29-7と連敗した。これは,オールブラックス同様にFWの負けを意味している。オールブラックスもブラックファーンズも,トライを取り切る優れたBKがいるが,彼らが活躍できるのもFWが勝っているからだ。それができなければ,勝つことは難しくなる。

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