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<ラグビー>スコットランド対南アフリカ,アイルランド対オールブラックス,ポルトガル対日本,イングランド対オーストラリア,それぞれの結果

今週も盛りだくさんのテストマッチとなった,オータムネーションズシリーズ。ティア2レベルが,ティア1チームと対戦できる機会が増えたのは良いこと。

スコットランド15-30南アフリカ

17分,スコットランド10番SOフィン・ラッセルがPG,3-0。
20分,ラッセルがPG失敗。
24分,南アフリカ10番SOエルトン・ヤンチースがPG,3-3。
27分,南アフリカ11番WTBマカゾレ・マピンピがトライ。ヤンチースのコンバージョン失敗で,3-8。
35分,スコットランド15番FBスチュアート・ホッグがトライ。ラッセルのコンバージョン成功で,10-8。
40分,ラッセルがPG失敗。

前半,スコットランド10(1T1C1P)-南アフリカ8(1T1C)
南アフリカ得意のゴール前モール攻撃が,スコットランドに止められている。しかし,スクラムでスコットランドは多くの反則を取られている。まさかのスコットランドが前半をリードする展開。しかし,フィン・ラッセルの2回のPG失敗は,結果に影響ありそうだ。もしスコットランドが勝利すれば,2010年以来となる。

43分,南アフリカ11番WTBマピンピが2つ目のトライ。ヤンチースのコンバージョン成功で,10-15。
51分,ヤンチースがPG,10-18。
56分,ヤンチースがPG,10-21。
59分,スコットランドFBホッグが2つ目のトライ。ラッセルのコンバージョン失敗で,15-21。ホッグは,スコットランド代表として24個目のトライを記録し,トニー・ストレンジャーとイアン・スミスの持つ代表最多記録に並んだ。
65分,南アフリカ22番SOハンドレ・ポラードがPG失敗。
68分,ポラードがPG,15-24。
71分,南アフリカ23番FBフランス・ステインがPG,15-27。ステインは,モルネ・ステインとともに本当に息の長い選手だ。
78分,ポラードがPG,15-30。

後半,スコットランド5(1T)-南アフリカ23(1T1C5P)
合計,スコットランド15(2T1C1P)-南アフリカ30(2T2C5P)
後半は,南アフリカが実力を発揮して,PGで着実に加点して勝利した。後半途中までは,スコットランドにも勝機が少しはあったが,実力差がそのまま結果に反映した。南アフリカは,先発よりもリザーブに良いメンバーを多く入れており,後半勝負という考え方が浸透しているようだ。

南アフリカ11番WTBマカゾレ・マピンピ,スコットランド11番WTBデューハン・ファンデルメルヴァの2人が活躍。考えてみれば,ファンデルメルヴァは南アフリカ人なので,2人の南アフリカ選手が活躍したことになる。


アイルランド29-20オールブラックス

金曜日に,アイルランドの選手1人がCOVID19に陽性となり,再検査で再び陽性であれば選手交代を予想されたが,偽陽性となり事なきを得た。アイルランドの弱点の一つとして,選手層の薄さがあり,もし選手交代があった場合は,チームへの影響が大きかった。

また,アイルランドには,WTBジェイムズ・ロウ(元チーフス),CTBバンディー・アーキ(元チーフス),SHジャミソン・ギブソンパーク(元ハリケーンズ)の,3人のNZ人選手がいる。北半球チームには,多かれ少なかれ南半球出身の選手がメンバー入りしているが,オールブラックスになれなかったこれらの選手達は,他国の代表になることで活路を見いだしている。

2016年にシカゴでオールブラックスが負けた試合は,ジェローム・カイノをLOに起用して,FW戦で勝負できなかったことが敗因だった。決して,アイルランドがハカに対抗してV字のラインを敷いたことではない。2018年は,結局ソニービル・ウィリアムスの12番CTBと,リッチー・モウンガの10番SOがしっくりしなかったことにつきると思う。これは,2019年RWC準決勝のイングランド戦の負けまで続いた。またこのイングランド戦は,FW3列が劣勢になったことも影響した。これも決して,ハカに対抗してイングランドがVの字を作ったことが敗因ではない。ハカのイメージが強いことから,マスコミはすぐにハカに対抗されて,オールブラックスがパニックになったと囃し立てるが,パニックになったのはマスコミだけで,オールブラックスは何も変わらない。

13分,オールブラックス2番HOコーディ・テイラーがアイルランド10番SOジョナサン・セクストンにタックルした際に,手が頭に掛かったとして,シンビン。この判断は,教条的すぎるという批判もあった。
14分,アイルランドがシンビンで1人多いのを利用して,右中間ゴール前ラックから左展開。最後は11番WTBジェイムズ・ロウが左スミにトライ。10番SOジョナサン・セクストンのコンバージョン失敗で,5-0。
19分,オールブラックス15番FBジョルディ・バレットがPG,5-3。
21分,オールブラックス10番SOボーデン・バレットが,HIAにより退場。SOは22番リッチー・モウンガになる。
32分,オールブラックスが,左中間40mラインアウトから7番FLダルトン・パパリイが抜け出し,サポートした2番HOコーディ・テイラーにつないで左中間にトライ。ジョルディ・バレットのコンバージョン成功で,5-10。
38分,オールブラックス12番CTBアントン・リエナートブラウンが肩の怪我で退場。オールブラックスのBKライン構成が難しくなる。12番CTBは23番デイヴィット・ハヴィリが入る。

前半,アイルランド5(1T)-オールブラックス10(1T1C1P)
オールブラックスは,シンビンもありアイルランドに押されいるものの,5点リードで前半を終えた。後半に巻き返したい。

44分,アイルランドが,右中間ゴール前ラックから2番HOローナン・ケラファーが右中間にトライ。セクストンのコンバージョン失敗で,10-10。
51分,アイルランドが,中央25mラックから6番FLカエラン・ドリスが抜け出してポスト左にトライ。セクストンのコンバージョン成功で,17-10。オールブラックス2番HOコーディ・テイラーの,おそまつなタックルミス。
57分,セクストンがPG,20-10。
62分,オールブラックス14番WTBウィル・ジョーダンが右サイドを抜けてショートパント。これをチェイスした13番CTBリエコ・イオアネが取り,ジョーダンにリターンパスして,中央にトライ。ジョルディ・バレットのコンバージョン成功で,20-17。
66分,アイルランド22番SOジョエイ・カーベリーがPG,23-17。
68分,オールブラックスが,右中間ゴール前15mラックから左展開。13番CTBリエコ・イオアネのパスを受けた,20番FLアキラ・イオアネが左中間インゴールに入るが,TMOの結果,スローフォワードとされてノートライ。このトライが認定されていれば,オールブラックスは勝っていた。
70分,ジョルディ・バレットがPG,23-20。キャプテンのサムエル・ホワイトロックがしたこの判断は,結果的に勝敗へ影響することとなった。ゴール前のPKからトライを狙えば,取れていた可能性が高かった。
74分,カーベリーがPG,26-20。
80分,カーベリーがPG,29-20。

後半,アイルランド24(2T2C3P)-オールブラックス10(1T1C1P)
合計,アイルランド29(3T2C3P)-オールブラックス20(2T2C2P)

やはり,オールブラックスは長期にわたる遠征の連続で,身体よりも精神面の疲労が蓄積していたようだ。敗因を探るとすれば,これしかない。女子のブラックファーンズは,チームの世代交代を進める関係で,イングランドに連敗し,さらにフランスにも負けた。この日はNZラグビーにとって,悲しい日となってしまった。オールブラックスとしては,来週のフランス戦で,2009年のような挽回を期したい。

アイルランドは意図的にスローテンポの試合運びにし,またボールを長く保持するようにしたため,オールブラックスは,ボール保持(ポゼッション)と地域獲得(テリトリー)が,それぞれ約30%台に止まったことが,敗因とされている。しかし,もともとオールブラックスは,少ないボール保持と地域獲得であっても,たとえば優れたキックカウンターアタックから,爽快かつ魔術的なトライを取って勝利してきた。今回も,ウィル・ジョーダンのトライに象徴されるように,そうしたスキルを持った選手は多くいる。

しかし,そうしたプレーを如何なく発揮できなかった上に,指揮官が「相手が強かった。レフェリーとTMOに嫌われた」というコメントをしているようでは,心許ない。オールブラックスは,少ないチャンスを確実にトライに結びつけるからこそ,世界最高のチームになっている。それが,今現在はできていないということが,2023年RWCに向けての課題だろう。もしチームの成長が停滞するのであれば,イアン・フォスターにはチームを指導する資格に疑問があるということになる。そして,スコット・ロバートソンであれば,どうだったかと,どうしても考えてしまう。

チームが成長するための鍵を握るのはFWの選手たちだ。特に4番と5番のフィジカルと3列の選手の機動力が十分に働いていないからこそ,優れたBKに良いボールがいかず,また相手にボールを保持させてしまっている。ボーデン・バレットの脳震盪とアントン・リエナートブラウンの肩の怪我により,次のフランス戦の出場が微妙になったが,オールブラックスは層の厚さから,SOにはリッチー・モウンガとダミアン・マッケンジーがいるし,CTBにはデイヴィット・ハヴィリとクイン・ツパエアがいる。LOには,ツポウ・ヴァアイとジョシュ・ロード,3列ではルーク・ジェイコブソンとホスキンス・ソツツがいる他,キャプテンのサム・ケーンが調子を上げている。

フランス戦のメンバーは,怪我人を除いてアイルランド戦とほぼ同じと思われるが,ここはむしろ生きの良い若手を多く起用してみるのも,良い効果が得られるかも知れない。


ポルトガル25-38日本

キャプテンのFLピーター・ラピース・ラブスカフニが欠場し,代わりにマイケル・リーチが入っている。怪我という理由もあったが,リーチとしてはメンバー外となったことに忸怩たる思いがあったと想像できるので,この試合への意気込みは大きいだろう。

また,リザーブ19番LOに19歳のワーナー・ディアンズが入った。流通経済大柏高校のメンバーとして花園で大活躍し,どこかの強豪大学に進学するとみられていたが,東芝ブレイブルーパス東京に入った。リーチを慕ったことが遠因とされているが,日本代表が強くなるためには正しい決断をしたと思う。その成果が早くもこの試合のメンバー入りとなった。ディアンズは,2023年,2027年,2031年,2024年のRWC4大会で,日本の主力として活躍することだろう。

なお,先発の13番CTBに初キャップとなる中野将伍が入っているが,既に24歳,選手として大きく伸びる時期を大学で無駄に過ごしてしまったのが残念だ。ディアンズのようにトップリーグチームに入っていれば,今頃10キャップ程経験値を積んで,日本代表の先発争いをしていたと思う。

さらなる日本代表の強化を図るのであれば,高校ラグビーの優れた選手達はリーグワンのトップレベルのチームに直接加入するようにすべきだ。大学ラグビーは,「大学ラグビー(エリートレベルではない,学校教育の一環としてのスポーツ)」という狭い枠の中で,古き良き母校愛としてやっていけば良い。間違っても日本ラグビーを強化するための組織でないことを認識すべきだろう。大学の4年間で,これまでどれだけ多くの人生育成を失敗してきたか。彼らは選手として大きく飛躍する貴重な4年間を無駄にしたことで,ラグビー選手としての資質を浪費してしまった。

もし大学教育及び大学卒という学歴に関わるのであれば,現在も実質そうであるように,プロ契約の一部として,通信教育を受ければ良い。プロ契約なら,そのための十分な時間も資金もある。また,むしろこの方が「セミプロ」のような幽霊学生という実体に合っていると思う。これは,日本人選手だけでなく,留学生選手にも当てはまることだ。

前半,ポルトガル11(1T2P)-日本21(2T1C3P)
10番SO松田力也のゴールキックが安定している。

後半,ポルトガル14(2T2C)-日本17(2T2C1P)
合計,ポルトガル25(3T2C2P)-日本38(4T3C4P)

最後,15番FB山中亮平のインターセプトトライで面目を保ったけど,それまでは25-31の6点差で,ポルトガルにゴール前に攻め込まれる劣勢だった。さらに,レフェリーのアンドリュウ・ブライスが教条的な笛で若干違和感があったが,41分に6番FLマイケル・リーチ,75分に,17番PR中島イシレリが,それぞれ危険なタックルでシンビンになるなど,チームとしてディシピリンに問題があった。

初キャップの13番CTB中野将伍は初トライを挙げた一方,19番LOワーナー・ディアンズは,わずか4分間のプレーで,アピールする時間が足りなかった。


イングランド32-15オーストラリア

金曜に,先週のオウウェン・ファレルに続き,イングランド1番PRエリス・ジェンジがCOVID19陽性となり,欠場。17番ベヴァン・ロッドが1番に上がり,17番にはトレヴァー・デイヴィソンが入った。

5分,オーストラリア10番SOジェイムズ・オコナーがPG,0-3。
7分,イングランド15番FBフレディー・スチュワードがトライ。12番CTBオウウェン・ファレルのコンバージョン成功で,7-3。
12分,ファレルがPG,10-3。
14分,オコナーがPG,10-6。
17分,ファレルがPG,13-6。
20分,オコナーがPG,13-9。
30分,ファレルがPG,16-9。
40分,オコナーがPG,16-12。

前半,イングランド16(1T1C3P)-オーストラリア12(4P)
オーストリアはトライが取れない。PGの競り合いは,イングランドの土俵。

43分,オコナーがPG,16-15。
51分,ファレルがPG,19-15。
64分,ファレルがPG,21-15。
73分,イングランド10番SOマーカス・スミスがPG,24-15。
80分,イングランド16番HOジェイミー・ブラミアーがトライ。スミスのコンバージョン成功で,32-15。

後半,イングランド16(1T1C3P)-オーストラリア3(1P)
合計,イングランド32(2T2C6P)-オーストラリア15(5P)
トライを取れなければ,イングランドと勝負にならない。また,2枚のシンビンも大きく影響した。オーストラリアは一時の勢いがなくなってしまった。クエード・クーパー不在だけの敗因ではない。やはり,長い遠征が影響しているのは,オールブラックスと同じかも知れない。一方,南アフリカは順調に勝利を重ねているが,来週のイングランド戦が注目される。ここで南アフリカも負けるようなら,単純に北半球勢が強いというよりも,COVID19への対応の差で,北半球が有利になったという結論になると思う。

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