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<ラグビー>2022~23シーズン、シックスネーションズの結果等から

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

 先日、突然死した妹の三回忌に行ってきた。血縁とは不思議なもので、私が重度の肺炎で入院したルーマニアの病院から退院した直後、妹は亡くなった。またその前に、姪からの「・・・が死んだ」という言葉が夢の中に出ていたのだが、これが現実になってしまった。そして、もうあれから二年が経った。私はまだ生き残り、妹は既に墓石の下に入っている。人の生死は予め神の脚本に書かれているというが、そんな気持ちになった小春日和だった。

1.シックスネーションズ第2週結果

アイルランド32-19フランス

 ともにシックスネーションズ優勝候補だが、アイルランドは初戦のウェールズを余裕で粉砕したのに対し、フランスは初戦のイタリアに苦労の末辛勝したという、対象的な結果となった。そして、初戦の良くも悪くも反省を生かして、このおそらく勝った方がシックスネーションズ優勝に一方近づくことになる対戦は、早くも前半の山場と言える。

 そして、ホームであるアイルランドが、北半球の頂上決戦に完勝し、フランスの連勝を14で止めた。これでRWCに向けて、フランス有利という評判は消え去り、アイルランドの世界ランク1位という意味がより強くなった。また、NO.8ケイラン・ドリスは、一部のマスコミの評価では10点満点を得るなど、この試合で大活躍しており、このまま順調にいけば、RWCで最も注目される選手になる可能性がある。

 試合は、20分まで12-13と競った一方、24分にフランスPRにシンビンが出て、アイルランドが数的優位になりトライで逆転する。しかし、フランスもPGで追いすがり、前半を22-16で終えた。後半に入ると、アイルランドが全般に優位に立ち、そのままリードを拡げて完勝した。フランスは、連勝を支えてきたPGを刻む戦い方で勝利を目指したものの、アイルランドのインパクトあふれるアタックを止めることができなかった。

 フランスは、シックスネーションズ優勝が遠のいただけでなく、地元開催のRWCに向けて黄信号が灯った。一方勝ったアイルランドは、少なくとも北半球ではNO.1チームであることを強くアピールする結果となった。そして次の目標は、アイルランドがグランドスラムを達成となった。

 しかし、毎回思うのだが、アイルランドの強さを支えている大ベテランのSOジョナサン・セクストンは、既に引退してもおかしくない年齢であるばかりか、怪我が多い選手であるため、一度セクストンが不在となった場合は、アイルランドの実力は大幅に低下する可能性が高いと見ている。

 2011年RWCのオールブラックスは、大黒柱のダニエル・カーターが怪我で予期せぬ途中離脱をし、二番目と三番目のSOも決勝戦の前半までに怪我で離脱する緊急事態だった。それでも、最後は四場目のSOで優勝したように、分厚い選手層が優勝の原動力となった。一方のアイルランドは、セクストンしかテストマッチで勝てるSOはおらず、またフランスも選手層は薄い上にチームの調子は既に下降線に入っている。そのため、この2チームがRWCで優勝するには、中心選手が怪我で離脱しないという幸運に賭けるしかないと見ている。

スコットランド35-7ウェールズ

 敵地(ラグビーだけでなく、あらゆる歴史的観点から)で、宿敵イングランドを良いラグビーで倒して意気上がるスコットランドに対し、監督を名将ワレン・ゲイトランドに交代させたものの、アイルランドに圧勝されてしまったウェールズとの対戦となった。しかし、シックスネーションズのチームは近年実力が接近しており、ちょっとしたことで勝敗が変わる傾向があるので、勝負はやってみるまで分からないというのが正解だろう。

 しかし、好調のスコットランドが、1996年以来となる開幕からの連勝を達成した。特にSOフィン・ラッセルが、キックパスを含めた絶妙のパスでトライをアシストし、かつてのPGしか得点源がないと揶揄されたスコットランドの姿を一変させる活躍をした(昔、「スコットランドの得点は3の倍数」と下品なことを書いた日本人もいたが・・・)。また、絶好調のWTBドューハン・ファンデルメルヴァは、相手チームにとって大きな脅威になっている。

 完敗したウェールズは、2人のシンビンを出すなど規律の乱れもあり、チームの立て直した遠くなっている。シックスネーションズでは、このまま全敗するのではないかと心配されるほど、現在のチーム状態は最悪となっている。名将ワレン・ゲイトランドの今後の巻き返しを期待したい。

イングランド31-14イタリア

 元イングランド監督のクライブ・ウッドワードは、スコットランド戦の敗因を「エディー・ジョーンズ前監督の悪い影響が残っているため」と指摘しているが、これはさすがに「坊主憎ければ袈裟まで憎い」タイプの論調と言える。しかし、イングランドラグビー界の重鎮が、こうした過激な発言をするほど、エディー・ジョーンズ嫌いが沸騰していたことがわかる。

 また、元オールブラックスのSBW(ソニービル・ウィリアムス)は、イングランドSOマーカス・スミスについて、「彼はボールを持って走るのが好きなタイプの選手だが、クラブレベルでは成功しても、それがテストマッチレベルで通用することはない」と指摘して、スミスのテストマッチ経験値の不足が敗因の一つだったと述べている。

 スミスは、エディー・ジョーンズが早い段階でイングランド代表入りさせた才能あるSOだが、かつてのオウウェン・ファレル同様に、若くして代表入りしてちやほやされてしまうと、どこか勘違いしてしまってプレーがダメになるパターンに陥っているのかも知れない。

 一方のイタリアは、千載一遇のホームでのフランス打倒のチャンスを逃したが、このイングランド戦でのアップセットを虎視眈々と狙っている。トウィッケナムというイングランドが強いホームゲームながら、初戦に続くイタリアの奮闘ぶりに期待したい。今の北半球では、既にピークを越えてしまった感のあるフランスより、イタリアのゲームがはるかに面白い。

 SOマーカス・スミスのゲームメークに見切りをつけたボーズウィック監督は、特別なことはできないが、ディフェンスを含めて安定しているオウウェン・ファレルをSOに据えた。そして、12番CTBにはフィジカルに強いオリー・ローレンスを入れた。スミス-ファレルのラインより、ファレル-ローレンスのラインは、10・12番のフィジカルの強さを生かすラインに変わった。そして、これが結果的に成功し、ローレンスはMOMの活躍をしたが、やはり真の勝因は世界トップの強さを持つFW戦の優位だったと思う。

 試合は、ファレルが余計なことをせずに近場のFW戦に徹する一方、セットプレーやブレイクダウンでFWがイタリアを圧倒する。さらにディフェンスでも、イタリアの単調なアタックを制圧してPKを獲得し、タッチキック→ラインアウト→モールというシンプルなアタックで、前半に3トライを取り、19-0とリードした。

 またイングランドは、イタリア相手と言うこともあったのだろうが、PKを得ても安易にPGを狙わずに、タッチキックからのトライを狙いにいくなど、よりフィジカルバトルに徹した戦いを選んだ。そして、イタリアはこのイングランドの土俵に乗ってしまい、27分にシンビンを取られるなどして、なすすべなく押し切られたのが前半だった。

 後半に入ると、さすがに智将キアラン・クローリー監督は、これまで成功してきた「攻める方向が予期できないアタック」を徹底させ、前半はイングランドのディフェンス練習のターゲットになっていたものを後半に一変させた。そして、その成果は早くも43分に表れ、良いトライを返したものの、49分にイングランドFWのフィジカルに再び圧倒され、ペナルティートライとシンビンを取られてしまったのは、残念だった。これでほぼ試合の勝敗は確定してしまったが、それでも62分の速いオフロードパスをつないで取ったイタリアの二つ目のトライは、最近のイタリアの好調さを証明するものだったと思う。

 一方のイングランドは、最後までスキルよりもフィジカルを前面に出す、昔ながらのイングランド得意のラグビーに徹していた。その中では、69分にトライアシストした21番SHアレックス・ミッチェルの、相手FWとのミスマッチを突いたプレーは、南半球の選手がやるような非常に面白いものだった。先発SHジャック・ファンポートフリートの保守的なプレーとは対照的なプレヤーとして、今後の活躍に注目したい。

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