見出し画像

<ラグビー>オールブラックス対ワラビーズ第1テスト,南アフリカ対ブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズ第3テスト,結果

オールブラックス33-25ワラビーズ

3人目のSHであるフィンレイ・クリスティーが,トレーニング中に肩を怪我した。そのため,TJ・ペレナラが,早くもメンバー入りするとの報道が流れている。トンガ・フィジー戦と持ち味を発揮したクリスティーだが,シーズンの正念場となるテストマッチを迎えて,怪我で脱落するのは不運としか言いようがない。

一方のペレナラは,日本での活躍振りから即オールブラックス復帰と期待されたが,契約の関係で遅れたものの,まずは順当にメンバー入りすることになりそうだ。

話は変わるが,NZヘラルドのグレガー・ポールが,前オールブラックス監督スティーヴ・ハンセンの本を出版していて,宣伝を兼ねてヘラルドでその一部を紹介している。今回は,2019年RWC準決勝イングランド戦で,好調のスコット・バレットをなぜ6番FLで先発させたかということがメインになっている。

それは,2018年トウィッケナムでのオールブラックスの勝因は,イングランドのラインアウトの弱みを突いたものであり,オールブラックスには,ブロディー・レタリック,サムエル・ホワイトロックに加え,キアラン・リードの3人が高さのある有能なジャンパーとしていた。しかし,準々決勝アイルランド戦でリードが怪我をして,準決勝イングランド戦出場が直前まで微妙だったことと合わせ,196cmのスコット・バレットを先発させることで,ラインアウトを起点に勝負しようとした。そのため,サム・ケーンがリザーブになった。

実際,13-7とリードされた時,オールブラックスは反則を得て,タッチキックを蹴ってゴール前ラインアウトからモールでトライするチャンスがあった。ところが,ホワイトロックがイングランドのキャプテンであるオウウェン・ファレルを突き飛ばすという不要な反則をして,千載一遇のチャンスを逃してしまった。そのため,ホワイトロックに代えてスコットをLOにすべきだったとポールは主張している。

さらにハンセンは,イングランド監督エディー・ジョーンズと古い友人なので,試合前にジョーンズが仕掛けたきた口撃に対応しなかった。これはチームの士気に影響した可能性が高い。そして,メンタル担当のギルバート・エノカによれば,2019年のチームは,2007年準々決勝敗戦の痛みを共有する選手がいなかったことも影響したという。2011年と2015年は,2007年の苦悩を思い出すことで優勝への戒めにしていたが,2019年では準々決勝アイルランド戦の圧勝から,気を引き締めることに失敗したと分析している。

(横道にそれました。別掲するほどの内容でもないので,ここに記載しました。ここから本来の試合に関する記述に戻ります。)

オールブラックス19番LOスコット・バレットが病気のため,代わりにパトリック・ツイプロツ(37キャップ)が入った。また,16番HOダン・コールズもふくらはぎの状態が悪く,直前になってサミソニ・タウケイアホに交代した。なお、ウェリントンでプレーしているアサフォ・アウムアを、来週のゲームで招集する予定。

他の怪我人では、PRオファ・トゥンガファシは膝の手術で、4~5週間の欠場、PRジョー・ムーディは、まもなく復帰できる状態だが、来週のゲームは今週と同じPR陣になる予定。

イーデンパークで,オールブラックスが最後に負けたのは1994年のフランス戦にまで遡る。さらに,ワラビーズに負けたのは1986年が最後となっている。ブレディスローカップも,2003年からオールブラックスが保持している。

SHアーロン・スミスは,オールブラックスの100キャップを迎え,真のレジェンド入りとなる。オールブラックスとしては10人目、マオリとしては初のセンチュリオンメンバーとなり、試合前にセレモニーがあった。また、スミスは今回もハカをリード。先頭は、キャプテン代行のサムエル・ホワイトロック、左にコーディ・テイラー、右にリエコ・イオアネ。

10分まで,ワラビーズのラインアウトが不調。オールブラックスはスクラムが安定しているが,ブレイクダウンで反則を取られているほか,ノッコンなどイージーミスが多い。
16分,オールブラックス10番SOリッチー・モウンガが45mのPG成功,3-0。
21分,モウンガがPG,6-0。
24分,ワラビーズ10番SOノア・ロレシオがPG失敗。
29分,モウンガが40mのPG成功,9-0。
32分,ロレシオがPG,9-3。
36分,ワラビーズ11番WTBアンドリュウ・ケラウェイがトライ。ロレシオのコンバージョン失敗で,9-8。
41分,オールブラックス14番WTBセヴ・リースがトライ。モウンガのコンバージョン
成功で,16-8。

前半,オールブラックス16(1T1C3P)-ワラビーズ8(1T1P)
オールブラックスが,珍しくPGで得点を刻んでいる。トンガ・フィジーと異なり,ティア1チームとの対戦で,慎重になっている模様。また,LOブロディー・レタリックが3回も反則を取られている。その影響か,先制トライをされてしまう。終了間際に,PGに代えてタッチキックを選択し,トライを返す。オールブラックスとしては,消化不良の前半となった。後半は,ボーデンとジョルディのバレット兄弟を,どのタイミングで誰と交代させるかがポイントになると思われる。

45分,オールブラックスが,自陣から90mつないで14番WTBリースがインゴールに入る。しかし,TMOの結果,途中SHアーロン・スミスから,LOブロディー・レタリックへのパスがスローフォワードとされて,ノートライ。オールブラックスらしい複数の選手がパスをつないだもので,トライになっていれば歴史に残ったプレーだったので,非常に残念。
50分,ロレシオが50mのPG失敗。
52分,オールブラックスSOリッチー・モウンガが,自陣でワラビーズ12番CTBハンター・パイサミのパスをインターセプトし,75m走りきってトライ。モウンガのコンバージョン成功で,23-8。
58分,オールブラックス12番CTBデイヴィット・ハヴィリが,SHアーロン・スミスのピンポイントパスからトライ。モウンガのコンバージョン失敗で,28-8。
64分,オールブラックス15番FBダミアン・マッケンジーが,SHスミスのペナルティーアドバンテージからのピンポイントパスでトライ。モウンガのコンバージョン失敗で,33-8。
ここまでは,オールブラックスの完勝ペースだった。この後に何が起きたのか?
69分,ワラビーズ15番FBトム・バンクスがトライ。ロレシオのコンバージョン失敗で,33-13。
75分,ワラビーズFBバンクスが2つ目のトライ。ロレシオのコンバージョン失敗で,33-18。
83分,ワラビーズ16番HOジョーダン・ウエレーゼがトライ。ロレシオのコンバージョン成功で,33-25。

後半,オールブラックス17(3T1C)-ワラビーズ17(3T1C)
合計,オールブラックス33(4T2C3P)-ワラビーズ25(4T1C1P)

オールブラックスのスクラムとラインアウトは,全体を通じて良かった模様。ただし,トライを取り切るアタックは,まだ完成途上のようだ。また,後半勝負が決まってから,楽勝ムードで気を抜いたのか,連続3トライを献上したディフェンスは,次からの要反省材料となった。さらに、反則数18対9となったディシピリンの悪さを是正したい。

このゲーム振りからは,特にディフェンスの面で,オールブラックスのリーダーズグループが機能していないように思える。来週のゲーム振りを見てみないと判断できないが,このような内容では,イアン・フォスター監督更迭論が再燃してもおかしくない。

12番CTBデイヴィット・ハヴィリは,引き続き良い働きをしている。モウンガは,SOで良いプレーをしており,しばらくは先発SOの座を維持するだろう。ボーデンとジョルディのバレット兄弟は,見せ場がなく、来週も引き続きリザーブになりそうだ。FBダミアン・マッケンジー、FW3列のアキラ・イオアネ、ダルトン・パパリイ、アーディ・サヴェアは、アシスタントコーチのジョン・プラムトリーの観点では、合格点と述べている。

ワラビーズは,フランスと1勝1敗1分の結果をそのまま反映したような,ふがいない内容となったが,後半残り15分以降に3トライを返して,かなり面目を保った。終わってみれば,トライ数は4対4で,ロレシオのゴールキックが安定していれば,もっと接戦になった可能性もあった。


南アフリカ19-16ブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズ

3分,ライオンズ10番SOダン・ビガーがPG失敗。
11分,ライオンズSOビガーが怪我で退場し,22番フィン・ラッセルと交代する。
11分,南アフリカ10番SOハンドレ・ポラードがPG,3-0。
16分,ライオンズ22番SOフィン・ラッセルがPG,3-3。
19分,ライオンズ2番HOケン・オウウェンスがトライ。ラッセルのコンバージョン成功で,3-10。
36分,ポラードがPG,6-10。

前半,南アフリカ6(2P)-ライオンズ10(1T1C1P)
ライオンズは,ラッセルが入った後,PGよりもトライを取るラグビーに変化し,良いリズムになっている。このトライを取るラグビーを徹底して勝てたら,それはラグビーというスポーツの進化につながると思う。
南アフリカは,あいかわらずFW戦+キック,相手の反則からのPGという戦術に固執している。これ以外に戦う方法がないらしい。

前半のスタッツは明快だ。ランニング回数は,南アフリカ20対ライオンズ57,走った距離は,南アフリカ65m対ライオンズ133m,クリーンブレーク回数は,南アフリカ1回対ライオンズ4回,タックル数は,南アフリカ84対ライオンズ23,タックルミス回数は,南アフリカ15対ライオンズ3。内容からは,もっと点差が開いてもよいくらいだ。

47分,ポラードがPG失敗。
53分,ライオンズ22番SOフィン・ラッセルが,南アフリカ14番WTBチェスリン・コルベにタックルして,頭に当たる。TMOの結果,コルベが自らスリップして当たったと判明し,PKのみの判定となった。もし,シンビンやレッドカードになっていれば,南アフリカに大きく有利になっていた。
54分,ポラードが続けてPG失敗。ゴールキッカーとしてはより優れている,大ベテランの22番モルネ・ステインと交代するか?
56分,南アフリカ14番WTBチェスリン・コルベが,ハイボールキックのこぼれたのを拾ってトライ。ポラードのコンバージョン成功で,13-10。
61分,ライオンズ5番LO兼キャプテンのアルンウィン・ジョーンズが,19番アダム・ベアードと交代。偉大なLO兼キャプテンであったジョーンズの,ライオンズとしてのプレーはこれが最後となった。
63分,ラッセルがPG,13-13。
65分,南アフリカが10番SOハンドレ・ポラードから,37歳の22番SOモルネ・ステインに交代。南アフリカは,残り15分間,ステインのキックに勝ち越しを賭ける。
67分,ステインがPG,16-13。ステインのテストマッチでの得点は5年振り。
69分,ライオンズがPKを得て,PGでなくゴール前のタッチキックを蹴り,ラインアウトからのトライを狙う。
70分,ライオンズ17番PRマコ・ヴニポラがインゴールに入るが,ボールヘルドでノートライ。その後,ゴール前でのライオンズボールのスクラム。
72分,南アフリカがスクラムで反則を勝ち取り,息を吹き返す。
75分,ラッセルがPG,16-16。
79分,ステインがPG,19-16。12年前のライオンズシリーズ最終戦を再現。

後半,南アフリカ13(1T1C2P)-ライオンズ6(2P)
合計,南アフリカ19(1T1C4P)-ライオンズ16(1T1C3P)
ライオンズは,70分にゴール前のアタックからトライを取れなかったことが大きく影響した。南アフリカは,ここを耐えたことが勝ちにつながった。ただし、この南アフリカ陣ゴール前ライオンズボールのスクラムでの南アフリカのターンオーバーは、ライオンズがスクラムをつぶす反則をしたことが理由となっているが、見方によっては、南アフリカに反則を取っても良い微妙なものだった。

結果論だが,タイトなゲームでは,ライオンズが志向するようなトライを取るラグビーではなく,南アフリカが頑なに実行したFW戦とキックで陣地を取り,相手の反則を誘ってPGを得るゲームが功を奏して,接戦に勝利した。特に、LOエベン・エツベスは、かつてのバッキース・ボタを彷彿とさせるような、反則まがいかつ乱闘まがいのフィジカルバトルで勝利に貢献した。彼がカード(シンビン、レッドカード)にならなかったのは、まさにホームアドバンテージであったと思われる。

しかし,こうした面白くないラグビーがプレーの中心になった場合,ラグビーというスポーツの魅力が半減し,たんなるフィジカルな戦いに終始してしまうことになって,ラグビーの発展に寄与することはない。ラグビーはレスリングではなく,ボールゲームであることを忘れてはならない。

南アフリカのラグビーには悪いが,こうした面白くないラグビーが勝ちにつながらないようなルール改正が,将来ラグビーを発展させるためには必要になると思う。しかし,このライオンズシリーズを見る限りは,それは容易ではないようだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?