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詩「祈り」

消えていく
冬の蚊のような
情けない振り子時計の
右に 左に
光と影のように
振っては振られる
人生の過渡期

そして 春
また 冬
仏壇の前に座って
見たことのないご先祖様の顔を思い浮
 かべながら
さて なにを考えればいいのだろうか
祈り とは
あまりにも遠くて
小学校のときにやらされた
全校生徒の前での演劇
「工夫マン」とかいう名前だけは憶え
 ているのだけど
いったいどんな役だったか
思い出せない空白の電気信号に
わずかにでも 火を灯す
(祈り)
それは 冬
亡くなった祖父の顔が夢にすら出てこ
 ない
それでも
音は聞こえる
右に 左に

右に

左に

時計のガラス戸に降り積もった
埃を払って
去年より増えた 白髪を数えて
それがまた
生きる楽しみでもあって


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※2022年1月の作品です。

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