うどんシンクロニシティ
うどんからは遠いところにいた。
サンドイッチを作ろうと思っていたのだ。アボガトを潰して、フェタチーズとウォールナッツをふりかけ、最後にバルサミコ酢で上から曲線を描く。
友人夫婦にも「ランチにはサンドイッチ作るね!」と宣言していた。
だけれど、前日の夜に奥さんから
「ごめん、言い忘れてたけど私ナッツとオーツアレルギーなんだ」
というメッセージがきた。
その時点では、大丈夫大丈夫、ウォールナッツを使わなければいい。
そう思っていた。
当日の朝、友人夫婦を迎えるべくキッチンに立って気がついた。
パンの外側に様々なシードと一緒にオーツが入っている!
これはダメかもしれない。
どうしよう。
そうだ、もしダメだったら…うどんにしよう。
具がないから、シンプルな卵とじうどん。
ちょっと寒くなってきたしちょうどいい。
友人夫婦を迎えて、そのことを伝えると
「手間をかけてごめんね、でもうどんにしてもらったほうがありがたい」
と、言いながら、夫婦で顔を見合わせている。
妙な間のあと旦那さんが、
「実は、手作りのうどんが車にあるんだけど食べる?」と言ってきた。
うどん?手作り?
しかも、なんで今持ってるの???
いろんなハテナが浮かぶ。
うどんにしようと思ったら、向こうから手作りのうどんがやってくる。
そんなことありますか??
この友人夫婦は我が家を出た後、所用を済まして他の友人夫婦を訪れる予定だった。
出がけに彼らにうどんを申し出るも「もうこっちで夕飯の準備してるから大丈夫」断られたそうだ。
それでもなぜか旦那さんに連れられて車に乗り込んだうどん。
これは、私がうどんを引き寄せたのでもなく、ご夫婦がうどんを食べたかったのでもなく、うどんの念力が私たちを繋げてくれたのではないかと思う。
話は変わるが、ご夫婦の奥さんの実家は神社で、彼女自身も神職の仕事をされていた。
だからというわけではないけれど、少し不思議な雰囲気のするご夫婦。
出来上がったシンプルで美味しい手作りうどんを頂きながら、神社のおはなしをいろいろ聞かせてもらった。
その話の中で思い出した。
10年ほど前に伊勢神宮を訪れた時に、その足で月読宮に向かったことを。
そこで何かのはずみで、なんの話かは忘れてしまったけれど、オールドスタイルな丸メガネをかけた宮司さんと話し込んだのだ。
その宮司さんが
「年に1度冬至の頃に伊勢の鳥居の間から日が昇る日があるんだよ。その時に写ルンですで撮ったらね、こんな写真が撮れたんだ。ありがたいなあと思って、こうやってポストカードにして配ってるんだよ」
と言って、そのありがたいポストカードをくれた。
海外に住む私にとって、天照大神のお神札代わりのお守りだ。
そうだった、日本は八百万の神の国。
うどんでシンクロニシティが起きてもなんら不思議ではない。
このポストカードを眺めているとそんな気がしてくる秋のある日のことでした。
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