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メンタルケア、「うつ」について話そう~アスリートが抱える心の問題と、それを防ぐ生活習慣とは~

この記事では、アスリートの「うつ」やメンタルケアといった問題について書こうと思います。
 
一般的なイメージとして、

アスリートのトップ選手ほど、健康的で心身ともに頑丈、身体や心の不調とはいっさい無縁

と思っている人も多いのではないでしょうか。

しかし、現実はそうでもありません。

まずは体の問題。
アスリートの体というのは、実は普通の人よりもデリケートです。
 
なぜかというと、

彼らは普段から激しいトレーニングを行っているので、一般人よりも免疫力が落ちている場合が多く、感冒(カゼ)に罹りやすかったりします。

体重制などで食事制限が必要な競技、体脂肪率を低く保つことが有利になる競技などは、なおさらそうです。

「シックスパック」というといかにも健康的で頑健なイメージですが、しかし実は体脂肪率1ケタ台の体というのは、とても繊細です。

近年では、最適とされるのは男性で12~13%、女性で18~19%前後だと言われています。

体脂肪を溜め込みすぎるのは、いわゆる肥満状態です。
生活習慣病などのリスクがあるのはあなたもご存知でしょう。

しかしじつは、大幅に下回るのもリスクなのです。
競技成績の面では有利かも知れませんが、生活の面では色々問題が生じる可能性があります。

そもそも、脂質というのは必須の栄養素です。
ホルモンや、神経伝達物質の産生に深くかかわっています。

分かりやすい例だと、女性アスリートの場合、体脂肪率を落とし過ぎると月経が止まったりします。

現代ではとかく無駄と思われがちな脂肪ですが、エネルギーを効率よく蓄積するための「飢餓対策」であると当時に、「断熱材」「衝撃吸収材」の役割も持っています。

なので、体脂肪率が1ケタ台の人は普通の人よりも寒さなど気温の変化に弱いはずです。

現代ならともかく、太古の人類にとって「寒さ」は死活問題でしょう。

また、アスリートは

長年の競技生活によって筋肉、骨、関節などに障害を抱えていることもザラです。

大小さまざまな不調と付き合いながら競技を続け、故障が原因で引退を余儀なくされるアスリートも珍しくありません。
むしろ、キャリアにおいて一切故障のないアスリートの方がまれというか、まずいないのではないでしょうか。

これは、メンタルについても同様です。

彼らは常に激しいトレーニングや厳しい競争に身を投じ、過酷な環境の中で「結果を出す」ことを自分自身に課し、また周囲からも期待されています。

現役でいる限り、いや場合によっては引退してからも、様々な不安や心配、心細さや恐怖と隣合わせの状態が続くのです。

何の生活保障もないのですから。

近年、トップアスリートが「心の不調」や「休養」について語る機会が増えてきたように感じます。
女子テニスの大阪なおみ選手の事例などは、みなさんもご存じだと思います。

これは、最近のアスリートがメンタル的に弱くなった、ということではありません。
おそらく、そういう発言を公的にすることが許されるようになった、周囲の理解が得られるようになったということなのだと思います。
 
トップアスリートも、人間です。
もちろん、豊かな身体能力や才能に恵まれ、その上で日々の努力を欠かすことのない、卓越した人々です。
 
しかし、だからといって彼らは完璧な超人や鉄人ではありません。
無理をすればケガをするし、ストレスを抱えれば弱るのです。
 
彼ら特別な人たちは、いやむしろ特別な人たちだからこそ、のしかかる責任や期待、重圧はものすごいのでしょう。
 
特に、アスリートが抱える心の不調、「うつ」の問題は、看過できないと思います。
それでは、なぜ彼らは時に「うつ」という心の病気に陥ってしまうのか。

思いつくことを挙げてみます。

①練習のし過ぎ、オーバートレーニング


「オーバートレーニング症候群」、という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
過度な練習量を長期にわたって無理やりこなし続けると、やがて身体の限界を超えます。
 
回復が追いつかなくなり、慢性的な疲労状態に陥ります。
 
人体というものは、とても興味深い仕組みを持っています。

身体に慢性的な疲労状態が続くと、心理的なブレーキがかかるようになっている

のです。
過度な活動を抑えるための、人体に備わった防衛機制なのでしょうか。

やがて、意欲や欲求のいちじるしい低下が起こります。
かんたんに言うと、身体がとてもだるく重くなって、何もやる気が起こらなくなります
 
ひどい場合は、ベッドから起き上がることすらできなくなります。
 
こうなってしまうと、きわめて深刻な状態です。
競技の記録が落ちるどころか、普段の練習や生活すら行うことが困難になるでしょう。
 
回復には長期の休養が必要で、場合によっては選手生命を絶たれる恐れもあります。

②「成績」や「実績」に対するプレッシャー

これも難しい問題です。
 
基本的に、アスリートはそのスポーツが好きだから、得意だからその種目をやっているはずです。

しかし、

プロであろうとアマチュアであろうと、トップアスリートは常に「結果」を出すことを求められます。

大会で優勝するとか、入賞するとか、あるいはより規模の大きな大会への参加資格を手に入れるとか。

とはいえ、アスリートが成績を競い合うトップの世界というものは、熾烈な競争の世界です。
才能も豊かで、努力も決して欠かさない人たちが、その中で少ない「椅子」を巡って争っているのです。
誰よりもたくさん努力したからといって、それが必ず結果に反映されるとは限りません。
 
今日の勝者が明日も同じように勝てるとは限らない。
あるいは、思うように勝てないまま、契約を切られるかもしれない。スポンサーから撤退されてしまうかもしれない。

競技を続けられなくなるかも知れない。
 
勝ちたい、もっと勝ちたい、負けたくない、終わりたくない。
こうした不安や恐怖と常に隣合わせなのが、アスリートの日常です。

③栄養不足、睡眠不足

これも意外と見逃せません。
 
アスリートは、皆が皆すべて厳しい栄養管理をしているわけではありません。
 
中には、栄養や休養について無頓着な人も少なくないと思います。
 
さすがに現在では少数派だと思いますが……
かつてはプロ野球選手やJリーガーなどは、夜な夜な街に繰り出し、明け方まで飲み歩いているような時代もあったと言いますね。
 
アスリートは、基本的にはタフな人達の集まりです。
毎晩寝ずに豪遊して何の問題もない人もいるのかも知れませんが(こういう人が超トッププレーヤーだったりします)、いずれ破天荒な生活パターンは崩壊します。
自分のパフォーマンスを最大化する、という観点からも看過できません。
 
①で述べたようなオーバートレーニングの状態が続いていて、それに加えて栄養や睡眠が足りないと……どうなるかは自明ですね。
 
特に、アスリートの場合、ビタミンやミネラルといった微量栄養素が不足する傾向にあるとされます
 
「そんなのマルチビタミン摂れば解決じゃん!」と思った方もいるでしょう。
しかし、ビタミンは基本的に食物から摂取しないとメリットがないばかりか、時にはデメリットが生じるケースもあります
 
詳しくは述べませんが、特にビタミンB系のサプリは良くないデータが散見されます。
(プロテインなどでビタミン添加の商品が多いですが、出来れば避けた方が無難です)
 
管理栄養士などの手厚いサポートが期待出来る超トップアスリートであれば、こうした心配とも無縁なのかもしれませんが…
相当な収入のあるプロアスリートや、オリンピックでメダルが期待されるレベルの選手であれば、そうしたサポートを受けていることも多いでしょうが。
 
しかし、そんなレベルの方は、そもそもこの記事を読んでいないでしょう(笑)
 
基本的には、自分自身で勉強して、実践するほかありません。

ただ、「競技漬け」の彼らの生活のなかで、そうした知識を学ぶ機会が果たしてどれだけあるでしょうか?
 
そもそも、いったいどんな生活サイクルを送れば、メンタルヘルスを保つのに有効なのか?

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