【果たして成り立つ?】斜陽産業の復活をミッションにしたり、エシカルをテーマにした共感型D2Cブランドは成立するのか?

自己紹介

こんにちは、森です。FABRIC TOKYOというアパレルD2CブランドでCEOを務めており、日々Twitter(@yuichiroM)や音声メディアstand.fmではD2Cブランドの情報やスタートアップの起業や経営について発信しています。よろしければフォローをお願いします!
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本日も質問に答えていきます。

質問「レガシーな斜陽産業でのD2Cを始める際に斜陽産業を回復させたいというビジョンの共感型タイプのブランドは長続きしないかなと思ったのですが、どう思われますか?」

質問全文「いつも勉強させていただいております。
現在斜陽産業でのD2Cの挑戦を考えています。
レガシーな斜陽産業でのD2Cを始める際に斜陽産業を回復させたいというビジョンに応援していただくといった共感タイプは長続きしないかなと思ったのですが、応援してもらうというコミュニケーションについてはどう思われますでしょうか。」

といった質問です。ありがとうございます。

斜陽産業の回復だけではスケールと継続は難しい

斜陽産業を回復させたいというビジョンに応援していただくという共感タイプは長続きしないのかといったお話なのですが、おっしゃる通り、長続きというのは難しい分野かなと思います。なぜかというと、対象のターゲット層が小さいからです。共感というところですと、斜陽産業を回復させたいということに共感することはマス層にはなかなか広がらないでしょう。

なので、ターゲットの広がりが限定的なのだろうなというので、長続きできないことはないと思いますが、マーケットサイズが小さい分しづらいものだと思っています。

「エシカル」や「サステナビリティ」はブランド哲学にはなっても、顧客への訴求ポイントにしてしまうとブランドは伸びない

D2Cブランドは「エシカル」や「サステナビリティ」をミッションに置くブランドは多いですが、その訴求をブランドのメインのメッセージにしてしまうと顧客は増えづらいというのが残念ながら現実です。(世の中の99%の人は、本当に残念ながら地方や他国や地球のことにまで頭が回らず、自分が生きるのに必死なんですね。)

例えば、日本でも有名になってきたAllbirdsというスニーカーのD2Cブランドがありますが、B-Corp(環境負荷の低い事業活動を行う会社の認定制度)を取得するほどサステナビリティへの取り組みを行っていますが、Allbirdsを購入する人のほとんどは「世界一快適なスニーカー」であることや「レオナルド・ディカプリオやティム・クックなどの著名人も認めるデザイン性」などのデザイン的な魅力で購入しています。

加えて、ビジネスマンに人気のレザーバッグブランド「ビジネスレザーファクトリー」。アジア最貧国であるバングラデシュの雇用を増やすことをミッションにしていますが、ビジネスレザーファクトリーのミッションはまさにエシカルそのものですが、直営店や公式サイトではエシカルブランドといった打ち出しを一切していません。
先日、社長の原口 瑛子さんから直接お話を伺いましたが、「雇用を増やしたいから、あえてエシカルを言わない。」と仰っていて、本当にミッションに対して愚直で忠実だなと大変感心しました。

"原口氏は「理由は二つあります」と言う。「まず、エシカルのマーケットサイズがまだ日本ではそれほど大きくないということ。バングラデシュの雇用を増やしていくことが目的なので、そのマーケットサイズは冷静に見なければいけません。そしてもう一つは、半年ほど、バングラデシュ自社工場のメンバーと一緒に働いていたのですが、彼らがプロの革職人として作った商品を、日本で"貧しい人が作ったものだから買ってください"と打ち出したら彼らはどう思うか?ということを考えます。だから、あえてエシカルという打ち出し方をしないと決めています」"

加えて、斜陽産業を回復させたいというビジョンは斜陽産業を回復させることがゴールであるブランドのミッションに対して、斜陽産業が仮に復興した場合、そのビジョンに共感する人たちはいなくなってしまうじゃないですか。苦笑
どちらかというと、本質的には、長続きしない方がいいというビジョンですよね。笑

しかし共感型マーケティングはイケるぞ

しかし、ブランドを始めるキッカケとしては検討の余地はあります。

そもそも、ストーリーマーケティングの時代だという話を何度もさせていただいていますが、どちらかというと今はITが発展してきて、便利な世の中になって来ているというのがあると思うのですが、便利がコモディティ化しています。

IT産業がまだ始まったばかりの頃は、便利なものが出てきて、その中で競い合うというものがあったので、お金を持っていれば非常に顧客を獲得しやすいといった世の中ができました。これはリクルートがやっていたホットペッパーやぐるなびなどがそうですね。パソコンというスマホに比べて広い画面の中で、上位を狙う場合はお金をかければ上位表示されるというのがオークションマーケティングの時代でした。
スマホ時代以前は、お金を持っている人たちが強い環境がありました。

それをITのスタートアップはプラットフォームとして作り出し、大企業などにお金を払ってもらうという構造だったと思います。
そのため、ユーザーが増えてきてスマホにシフトして「便利」がコモディティ化した時に、そのプラットフォームは大企業の広告で溢れていると消費者は気づくわけです。そしてスマホの画面になった時に小さい画面の中には広告をたくさん表示することはできなくなりました。(広告をたくさん表示したら、UXが著しく損なわれてしまいます)

こうして、スマホ時代にシフトする中で、お金でユーザーを増やせるオークションマーケティングという時代は終わって、クオリティマーケティングの時代に移ってきました。

限られた情報や便利がコモディティ化した中で、その場所でしか得られない情報や非常に価値が高い情報に価値の転換が行われ、資本の論理からクオリティの論理に変わっていきました。
オークションマーケティングからクオリティマーケティングの時代に突入しているということです。

唯一無二の独自性というのが非常に重要な時代になった中で、ストーリーというのがクオリティマーケティングのヒントになります。

斜陽産業を回復させたいというビジョンは、大企業がやっているというよりも、そこの斜陽産業の現場をよく知っていて、強く思い入れがある人のみにしかできないような体験や発言、そして一次情報というものがありますよね。

クオリティマーケティングの時代なので、その情報がリーチしやすいターゲットの人たちには、適切にリーチできやすいアルゴリズムの時代だというのもチャンスです。(GoogleやSNSなどが勝手にターゲットを最適化してくれるという側面あり)

1番最初の立ち上げの手法としては非常にいいと思いますが、冒頭でお伝えした通り、共感タイプというのは共感される層が広がらない限りは、マス層には共感されることは難しいためマーケットが小さくなってしまうので、結果的にビジネスが継続するというところには行き着きづらいのかなと思います。

周囲の仲間や従業員は巻き込みやすいのでok。しかし顧客価値に転換できるか?

ここで大事なのは、最初のミッションが、斜陽産業を回復させたいというものでスタートしても良いのですが、顧客価値をブランドとして作れるかどうかで勝負が決まってくるということです。
はじめは周囲の仲間や従業員が応援してくれるでしょう。共感してくれて購入もしてくれるだろうし、ボランティアなど手伝ってくれる仲間もいるでしょう。創業者であるあなたの想いに共感して低賃金で働いてくれる社員なんかも出てくるかもしれません。

しかし、肝心の顧客はどうでしょう?昨日よりも今日、今日よりも明日、顧客が増える事業になっているでしょうか?

ビジネスとは、やはり事業継続が全てですし、ミッション共感型なら、事業成長が大切です。なぜなら事業が小さいと社会に還元できる価値は小さくなってしまうからです。(自己満足なら小さくてokですが)
事業成長のためには、初期のターゲット層から次のもう1つ、またもう1つと外の枠に顧客対象を転換していかないといけません。

そうするためにも、「斜陽産業を回復させたい」というビジョンに加えて、何か顧客にベネフィットがある商品やサービスを作れるかどうかということが重要になってくると思います。(上記のAllbirdsやビジネスレザーファクトリーの例のように)

ブランドを始める時にそういった共感型のものでも、全く問題ないと思います。それがブランドが始まったきっかけであるということが、未来永劫言えるのは非常に素敵なことだと思うのですが、顧客への提供価値の転換をしていく必要があります。
そうしないと次のターゲットの層に使っていただけないことがあると思いますので、レガシーな斜陽産業を回復させるといったビジョンでD2Cを始める際は、「顧客への提供価値が変わっていく」ということを理解しておく。
のがいいと思います。

参考になれば幸いです!

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