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赤鳥(seki_chou)

騒がしい街をつきぬけて
咽び嘆く目頭に溜まる膿を
吐き出せず
足早に帰途に着くにつけて

なにかと無関心な群衆もまた
ひとつの風景として
ぼやけた残像として
自らを生かす道に沿って続いている

夜になろうとも
電灯が眼下の影を濃くして
溶け込むことを理性のように阻む

普段は意識にない
ささくれだった毛穴から
飛び散る飛沫のような怖気

右手に走る鼓動のない車道に
間仕切りはなく
飛び込んでしまえと
ささやくのはだれか

空気と空気の間に
ゆらめくヒダのようなものがみえる
生きることの導線に囚われて
帰り道を見失った
十戒の隙間から抜けい出て
夜空へと飛び立とうとするあれは赤鳥

血飛沫を羽ばたきと揚力に代えて
かたむいた熱源を目指して
幻の塔が並ぶ卒塔婆へと

今しがた飛びさったあれも
いずれ消えていくことを知ったのか
どこへなりとも往こうと生きるのか

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